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神の国25

 で、どうなったかと言うと……、


「神の巫女である私に謁見できることを光栄に思いなさい! ひれ伏しなさい! それが嫌なら帰りなさい!」


「じゃあ帰ります」


「ああん! 嘘嘘! ごめんなさいごめんなさい調子に乗っていました! 謝るからいかないでマサムネ! 帰っちゃや!」


 僕たちは巫女による鶴の一声で神都の中央にある宗教的な建築物の内部……その謁見の間へと通された。


 ゴッド王からの紹介状を渡すと巫女曰く、


「そういえばゴッド陛下がそんなことを言っていたようなそうでないような……」


 あやふやな記憶だった。


 で、この状況……以上。


 帰ろうとした僕に追いすがって抱きついて、


「冗談だって。帰らないで、ね?」


 威厳もへったくれもなく説得に回る巫女様。


 あなた偉いんじゃないの?


「猊下……お言葉ですが……もう少し……こう……教皇らしく振舞っては……」


 そんな執行者の少女のツッコミは虚しく響くのみだ。


「そうだ。紅茶飲も? 茶菓子も出すよ? 一服していくといいよ」


 巫女は僕の気を引くことに一生懸命だった。


 何だかなぁ……。


 教皇猊下って感じじゃないなぁ……。


「あの……猊下……」


「というわけでマサムネたちにお茶を出しなさい! 私の分も! 真竜王陛下は何かお飲みになりますか?」


「ウーニャー! いらない!」


「ですか」


 コクコクと頷き、


「ではマサムネたちを私の部屋に案内します。こちらです」


 大理石で出来た建物の内部を歩いて謁見の間から巫女の私室へと場を移す。


 急げや急げ。


 カソックを着た執行者たちが大慌てで足りない椅子を準備し、紅茶を準備し、茶菓子を準備し、それを席に着いた僕たちに振る舞った。


 クイと紅茶を一口。


 さすがに教皇に出すものだけあって香り高い。


 純粋に言えば美味しかった。


 ちなみに部屋には僕とフォトンとツナデとイナフとウーニャーとフィリア……に加えて巫女と護衛の執行者が一名いるのみだ。


「不用心すぎないかな」


 とも思うけど、どれだけ警戒したところでこちらの戦力に勝ちうる戦力を用意できるとも思えない。


 そういう意味では一人も百人も一緒だろう。


「無限復元……セブンゾール……フォトン様に置かれましてはお会いできて光栄です」


「こちらこそ。巫女様」


「それでこちらには如何なる用で?」


「単純に観光旅行ですよ。一神教総本山……神の国に来たのだから神都に寄るのは道理でしょう」


「然りだね。観光旅行かぁ。じゃあ私に会った時点で目的達成ということ?」


「忌憚なく言えば……ですが」


 少しだけ狼狽えるフォトンだった。


 珍しや。


 今度は僕が口を開く。


「ちなみに巫女さん?」


 そんな僕の言葉に、


「……っ!」


 護衛の執行者が殺意を膨らませ、


「待った」


 巫女のちょっと待ったコールで動きを止める。


 そして問うてくる。


「なぁにマサムネ?」


「本当に神なんかいるって思ってる?」


 ある意味でこの世界そのものに喧嘩を売るような言葉ではあったが、


「え? マサムネは信じてないの?」


 巫女は意外そうな顔をした。


「マサムネはマサムネって云うくらいだから東方の国の出身よね?」


「違う」


「え? でも肌黄色いし髪黒いし……。まぁどっちにしろ私の世界において人間でありながら唯一神デミウルゴスを信じていないってのがありえないんだけど……」


「フォトン」


 僕はバーサスの魔術師に声をかけた。


 フォトンは意を汲んでくれた。


「巫女様……マサムネ様とツナデはこの世界の住人じゃないのです」


 説明してくれる。


「異世界から私の魔法陣を通して召喚された者たちです」


「異世界……?」


 ポカンとする巫女。


「異世界」


 コクリと頷くフォトン。


「そう珍しい話ではないでしょう? 異世界召喚は高度な魔術ですが行使する者がいないわけではありません」


 紅茶を一口。


「マサムネ様とツナデの元いた世界の元いた国は宗教色の薄い世界だったらしいのです。というわけで宗教や神に対して一定の疑惑を持つのは許してもらいたいところです」


「マサムネが……異世界から……」


「はい」


「あのぉ……」


 フォトンに向けていた目を首ごとギギギと動かして僕へとやる巫女。


「もしかしてマサムネって……」


「はぁ」


「日本が出身だったりする?」


「…………」


 沈黙以外の何を選択しろと。


 何故巫女が日本を知っている。


 何者だ。


 そんな疑念がグルグルと。


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