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神の国23

 煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


 今日は雨だった。


 強くもなく。


 かといって弱くもなく。


 少なくとも外を歩きたいとは思わせない程度の雨だった。


 僕たちはその雨音を天井に聞きながら神都目指して進んでいた。


 送迎用の馬車に乗って。


 元々王都と神都は人の行き来が激しいらしい。


 ので移動手段よろしく金を払えば馬車が王都から神都まで送ってくれる。


 まして僕たちはゴッド王の客だ。


 リヤカーではなく屋根つきの大きく豪奢な車体を持った二頭立ての馬車を用意されて、ソレで以て神都に向かっている。


 故に雨も問題なかった。


 僕はもう一度煙をスーッと吸ってフーッと吐く。


 ああ……落ち着く……。


「ちなみにマサムネ様」


 トランプを切りながらフォトン。


「何でっしゃろ?」


「神都では薬効煙禁止ですから」


 なして?


 目で訴えかける僕。


「タバコや薬物は神都では禁止されているんです」


「戒律を破れば?」


「面倒なことになります」


「はいよ~」


 薬効煙をプカプカ。


「ウーニャー! パパはそれで平気なの!?」


 僕の頭の上に安置されている七色竜王が聞いてきた。


「まぁ光の国と魔の国の時は吸ってなかったし我慢できないわけじゃないよ」


 僕がこっちの世界で薬効煙を吸いだしたのは魔術を覚えた後だ。


「ウーニャー? パパがそれでいいならいいけど……」


 いいんです。


 ゆらゆらと揺れる副流煙。


 上へ上へと立ち昇る。


 そして僕の頭上にはウーニャー。


 思いっきりウーニャーも薬効煙を吸ってる状況だけど……これは果たして大丈夫なのだろうか?


 本人は何とも思ってないみたいだけど。


「あがり!」


 イナフが最後のカードをきって一番をとった。


「ウーニャー! イナフ、一番!」


「うん! だよ! ウーニャーちゃん!」


 そしてイナフは僕に抱きついてきた。


「お兄ちゃん褒めて褒めて」


「よく頑張ったね」


 クシャクシャとイナフの金髪を撫ぜる。


「むぅ……」


 とフォトンとツナデとフィリア。


 それは気にしない方向で。


「ところで」


 と僕がトランプを混ぜながら言う。


「ブラッディレインについてはどうなったのかな?」


「あ……」


 フォトンが今更に思い出す。


 たしかにブラッディレインは付属だけど。


 観光旅行が主流だけど。


「で? どうだった?」


 問う僕にツナデが答えた。


「結果から言えば捕捉は出来ませんでした」


「歯にモノが挟まったような言い方だね」


「一か月前に神の国の南の村で観測されたかもしれない……という情報があったとは聞いています」


「一か月前……」


 それじゃわからないも同然だ。


「こっちに話が通ってないということは……」


「うん! 多分南に向かったんじゃないかな!?」


 元気よくイナフ。


 抱きついて甘えているイナフに薬効煙の火を当てないようにしながらトランプを混ぜるのはちょっとした作業だった。


 プカプカ。


「用があるのはフォトンちゃんなのよね?」


 フィリアの言に、


「ですね」


 フォトンが頷く。


「ま、元々それから僕たちの旅は始まったからね」


 僕がフォローした。


 それから、


「イナフ離れて。カードを配るよ」


「うん! お兄ちゃん!」


「お兄様はツナデのお兄様なのに……!」


「嫉妬しないツナデ」


「せざるをえません……!」


 さいでっか。


 そして僕はフォトンとツナデとイナフとフィリアにカードを配る。


 そうやってまた大貧民が始まるのだった。


 僕は薬効煙を嗜む。


 煙で肺を満たす。


 それが血流を通って鎮静効果をもたらす。


「はふ……」


 フーッと煙を吐き出す僕。


 雨が止む様子はなかった。


 ガタゴトと馬車は進む。


 かしまし娘とフィリアの大貧民を見ながら、


「神都に神の巫女……ねぇ」


 僕は御大層な喧伝文句に懐疑的な言葉を吐いた。


 一神教の総本山はもうすぐそこだ。


 何が待つかは知らないけど。

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