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光の国09

「やれやれ」


 何をどうすればこんなことになるのかな?


 嘆息せざるをえない。


 時間は……どうやらこちらの世界の惑星も公転や自転は地球と一緒らしく一年三百六十五日も一日二十四時間も存在するらしい……三時ごろ。


 場所はいつもなら王城の兵士の訓練場として使われているらしいコロシアムのような闘技場。


 そして宮廷魔術師兼王属騎士であるダークが誰それ……僕のことである……と決闘をするという噂が電撃的に広まって、


「なんとまぁ……」


 王族御前試合にまでなってしまった。


 王族御前試合は名の通りライト王をはじめとする光の国の王族が見学する試合のことである。


 こう言っちゃ不敬罪だろうけど王族も暇なのかな?


 ちなみに、


「ダークは闇魔術によって縮地を使ってくるから十分注意してください」


 とはフォトンの激励。


 なんでもダークの二つ名は《縮地の魔術師》らしい。


 無論、この場合忍者八門において外門と呼ばれる超高速体術たる神速のことを指すわけではあるまい。


 魔術というものが不条理にできているのなら魔術師が使う縮地はこの場合仙人のソレ……テレポーテーションと構えて間違いはあるまい。


 しかしいちいち魔術とやらの不条理さには舌を巻く。


 空間を渡るて……。


 引◯天功か……。


 ともあれ、


「やるしかないか」


 僕はボサボサの髪を掻きながらコロシアムの中央でダークとあいまみえていた。


 ダークは言の葉を怒りに染めて呟いた。


「貴様……俺をなめてるのか……!」


「誠実な対応をしているつもりですが?」


「何故剣を持たない。何故鎧を着ない。ふざけてるのか……!」


 ああ、それね。


「大丈夫。そんなものなくても圧倒してみせるから必要ないよ」


 挑発なんかしてみる。


 僕はスーツ姿に手にクナイを持っているだけ。


 対してダークは両手剣を持ってメノウ色の鎧を着こんでいる。


 優劣がどちらにあるかは……まぁ始まってみればわかるはずである。


「では……」


 と僕とダークの間に挟まれた審判が呟く。


 同時に僕はオーラを放出した。


 だいたい闘技場全体を包むくらいだ。


 審判が開始の合図を送る。


「始め……っ!」


 次の瞬間両手剣をもったダークが僕目掛けて真っ直ぐ突っ込んできた。


 魔術は使わないらしい。


 唐竹割の一撃を僕は体を軸回転させることで避ける。


 今度は振り下ろした剣を跳ねあげるダーク。


 あれだけの打ち降ろしから逆行する斬撃を即座に返せるとはダークもまた非凡な騎士らしい。


 しかしてその場に僕はいなかった。


 一瞬前にダークの頭部を掴むとそこを基軸にムーンサルト。


 ダークの背後をとる。


 同時にクナイを閃かせようとしたが、それより速くダークは僕の射程から遠のいた。


 クナイを投げてもよかったけど異世界に持ち込めたのはこの一本だけだ。


 大事に使わないとね。


 またダークが突進してくる。


 両手剣を刺突の形で繰り出す。


 クナイで受け流す僕。


 間合いは僕寄り。


 さてどこを狙おうかと逡巡していると、


「っ!」


 ダークが蹴りを繰り出してきた。


 膝蹴りだ。


 それをバックステップで避けると、


「しっ!」


 とダークは呼気を吐いて両手剣を水平に振るってくる。


 僕はそんなダークの剣の腹を踏み潰して軌道を変えると同時にダークの頭部を蹴った。


 ダークは兜を装備しているためそんなには利かなかったけど、ともあれ一旦地面に足をつける。


 次の瞬間、


「おおおっ!」


 と激昂したダークが両手剣の乱撃を放ってくる。


 それをスイスイと避け続ける僕。


 埒が明かないと悟ったのだろうダークは、


「闇よ! 漆黒よ! 我が意に従え! その意を以て空間を凌辱せよ!」


 そんな珍妙な言葉を紡いだ。


「?」


 わからないという疑問はあったけど実際はそれどころじゃなかった。


 言葉を紡ぎ終えたダークが僕の視界から消えたのである。


「……っ!」


 一瞬にして思考を巡らせる。


 つまりダークが縮地を使って、それからさっきの珍妙な言葉は魔術の呪文だったのだろう……と。


 ダークが現れたのは僕の背後。


 しかし悲しいかな。


 僕はそれを視界ではなくオーラで捉えている。


 自分を中心にオーラを展開して死角をなくすのは忍術の基本だ。


 視界の外にいるダークが唐竹割に剣を振り下ろそうとしているところまで明確に僕のオーラはダークの情報を伝えてくれる。


 時間も彼我の間合いもタイミングさえ完璧に、だ。


 そして僕は軸回転して背後からの斬撃を避けると、手に持ったクナイをダークの喉元に突きつけた。


「…………」


 闘技場は静寂に包まれた。


 どう考えても僕の勝ちであることは明白だ。


 審判が慌てたように言った。


「そこまで」

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