表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/512

神の国21

 王属騎士は剣を構えて僕に襲い掛かってきた。


 僕?


 僕はフォトンと手を繋いだ。


 それだけで事足りた。


 無限復元の適応。


 即ち完全なる害性排除。


 僕目掛けて振るわれる王属騎士八人の八通りの剣は僕を害することは出来なかった。


「……っ!」


 絶句する王属騎士たち。


 僕は握ったフォトンの手を引っ張って前に進む。


 そして、


「ふっ!」


 袖に隠していた暗器……クナイを王属騎士目掛けて振るう。


 それは鮮血を呼んだ。


 肌から血を拭きだして王属騎士たちが倒れ伏す。


 僕の握るクナイにはべっとりと王属騎士の血が付着した。


「……っ!」


 ライト王が言葉を失う。


 当然と言えば当然だ。


「さて……」


 僕は言う。


「こっちは人質をとっていることは理解していますか?」


「な……に……を……」


 つっかえつっかえにライト王は言葉を紡ぐ。


「今までフォトンが魔術を使えなかったのは僕を巻き込む可能性があったからです。そして今は僕とフォトンは手を繋いでいる。つまり僕がフォトンの魔術に害されることはなくなりました。たとえばフォトンがディバインストライクを放てば……それを止められる人間はこの国にはいないでしょう。そして王都は死都と成り果てるんじゃありません?」


 立派な強迫だ。


 それはわかっている。


 だが向こうから仕掛けてきたのだ。


 大義名分はこちらにあるだろう。


「いっぺん死んでみます?」


 ニコリと僕は言う。


「別にフォトンに頼らなくたって僕の能力でもライト王を殺せますよ? ああ……その方がいいかもしれませんね。それなら王都の住人を巻き込まなくて済みますし」


「余を……殺すというのか……!」


「ええ」


 気負いなどない。


 どこまでも澄みきった声で僕。


「止めて……くれ……」


 僕の言葉が真実だと悟ったのだろう。


 ライト王は恐怖に身を縛った。


「そっちはこっちを殺しても良くて逆は無しだとでも? それは筋が通らないんじゃないかなぁ?」


 皮肉たっぷりに僕は言う。


 そして新たな暗器を取り出す。


「ひ……っ!」


 腰を抜かす……ということを文字通り体現するライト王。


「僕には千人の殺意溢れる兵士さんたちをけしかけておいて自分の番になったら恐怖するというのは納得いかないね」


 握ったフォトンの手を引っ張ってライト王へと歩みを進める。


「少なくとも千人の負傷に見合うだけの贖罪を王様はするべきじゃないかな?」


「お主が……!」


 ライト王は反論した。


「お主がフォトンを連れ去ったのが悪いんだろう! そうとも! そもそもにしてこの状況を招いたのはお主自身だ!」


「フォトンを籠の鳥にしたのはそっちでしょう?」


「フォトンは王族を保護する義務がある! フォトンを連れ去った貴様にいくら罪を問おうとそんなことは当然の帰結だ!」


 当然……ね。


 とびきり皮肉げな笑みを僕は見せる。


「その当然とやらのせいでどれだけの血が流れたか……。わからないなんて……まさか言わないよね?」


「それは貴様が……!」


「もういいや」


 問答に埒も無し。


「死ねば?」


 暗器を構えて僕は言う。


「待て! いや待ってください! 殺すな! お願いだ!」


「それはあなたの命令によって犠牲になった千人強の兵士さんたちに言うんだね。無論のこと高いお空の上から」


 そして僕は暗器を振るう。


「うわああああああああああっ!」


 絶叫した後、泡を吹いてライト王は気絶した。


 僕の暗器はまさにライト王の首をかき切ろうとしたところで止まった。


 まぁ殺す価値もないだろう。


「フォトン」


「何でしょうマサムネ様?」


「王属騎士を修復してあげて」


「いいんですか?」


「いいんです」


「はぁ。では……」


 フォトンはペタペタと王属騎士の体に触って無限復元を適応させる。


 それだけで傷が完治し生き返る八人の王属騎士。


「うぅん……っ」


 と呻いて困惑した表情で目を覚ますのだった。


 状況を把握できないらしい。


 しょうがなくはある。


 責任なんてこれっぽっちも感じていないけど僕が原因の一端ではあるのだ。


 ともあれ王属騎士全員の復元を確認した後フォトンを呼ぶ。


「何でしょうマサムネ様?」


 先の言葉を繰り返すフォトン。


「跳ぶよ」


「どうぞ」


 そして僕とフォトンは空間破壊性結果論転移にて神の国の王都……その王城へと身を移すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ