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神の国20

 王都では負傷者の対応が今日も行われている。


 大人の体重を持つ怪我人を運ぶのだ。


 それだけで重労働である。


 負傷者は王城に向けて長蛇の列をなした。


 医師たちも大忙しだ。


 千人分の医療に東奔西走。


 害された兵士はフォトンによって無限復元を適応されるものと思っていたけど……どうやらその通りらしい。


 安堵。


 人が負傷し、その何倍もの関係者が涙を流す。


 当然の帰結だ。


 自身の親族が王都の兵士に抜擢されていることぐらいは承知しているのだろう。


 後は医師に確認をとって無限復元を適応する。


 そんな行為がルーチンワークとなっていた。


 王都にある最高級のホテル……その最上階の部屋の窓から僕はその行為を眺めていた。


 切り裂かれた負傷者が運ばれて、ここからだと見えないけど王城に配送される。


 五日もすればそれらもあらかた片づけられた。


 生憎と血痕は残ったけど、それもその内風化するだろう。


 祇園精舎の鐘の声……諸行無常の響きあり……沙羅双樹の花の色……盛者必衰の理をあらわす……おごれる人も久しからず……ただ春の世の夢のごとし……たけき者も遂には滅びぬ……偏に風の前の塵に同じ……なんてね。


 まぁこっちには平家物語なんて無いだろうけど。


 それでも地面に描かれた血痕は王都民が踏み荒らしていずれ砂の下へと隠すだろうし、壁に飛び散った血痕も長い年月をかけて消え去る。


 そして、


「その血の主が誰だったか」


 そんな想いさえ風化する。


 それはもう真理だ。


 人間が文明を発達させてから今日までそうでなかったことなど一度もない。


 何事にも例外はあるけどね。


 ともあれそろそろツナデたちの元に戻らないとしびれをきらすことだろう。


 ツナデとイナフとウーニャーとフィリア。


 誰一人とっても一国と戦争が出来る戦力だ。


 特にウーニャー。


 僕も千人という少ない数の人たちを害したけど、彼女たちの憤怒が殺意に取って代わったらソレ以上の被害が出ること必至だ。


 一国が……おおげさじゃなく光の国が亡ぶ。


 いや……マジでマジで。


 そんなわけで一人の時間を五日も楽しんだのだから、もうしがらみに縛られるのも悪くはないだろう。


 僕は想像創造をすると、


「闇を以て命ず。空間破却」


 と世界宣言をする。


 そして僕は空間を破却してフォトンの元へと跳ぶ。


 ホテル代は先払いにしておいたので何時脱しても問題ない。


 そして僕はフォトンの私室にその身を置いた。


「ふえ?」


 フォトンがキョトンとする。


 いきなりな僕の登場に驚いたのだろう。


 ちなみに乳バンドにスキャンティ姿だった。


「あー……」


 うむ。


 空間破却する前にオーラでフォトンの状況を確認すべきだった。


「いやあああぁぁぁっ!」


 とフォトンの絶叫が響いた。


「…………」


 僕は呆れるばかりだ。


 そもそも風呂では裸の付き合いをしようと言ってくるのに着替えを覗かれたくらいで何を狼狽える必要がある?


「フォトン様!」


 フォトン専属のメイドさんが部屋に突入してきた。


 そして僕とフォトンを見て、


「そういうことですか」


 と納得した。


 いや……物わかりが良すぎるのも問題なんですけど……。


「さて……」


 閑話休題。


 フォトンは喪服のスーツ姿に着替え終っている。


「そろそろ神の国の王都に戻るよ?」


 僕がそう言うと、


「ですね」


 さっぱりとフォトンは言った。


「ライト王はいいの?」


「金銭や待遇をちらつかせて私を懐柔しようというだけの人間に何故に心を動かされましょうか」


「君がそれでいいんならいいんだけどね」


 言うべき言葉は他にない。


 落ち着くところに落ち着いた……とも言う。


「フォトン!」


 とライト王がフォトンの部屋に飛び込んできた。


「行くな!」


 無茶言うな。


「少なくともマサムネ様を殺して私を籠の鳥にしようとした人間の言葉に説得力は感じいりませんね」


 残酷な言葉をフォトンは吐いた。


「望むだけの財産を与える! 待遇も余と同等だ! 何を躊躇う必要がある!」


「私には私の目的があります。それを阻むというのなら武を以て示すだけですが?」


「……っ!」


 ま、こんなところだろう。


「そもそも僕を殺そうと思索しただけで責められるべきですよ」


 僕が追加の言葉を放つ。


「王属騎士がそを阻むぞ?」


「脅しは通じませんよ」


「ならば武を以て示そう」


 言ったライト王の言葉に呼応して八人の騎士がフォトンの部屋に現れた。


 王属騎士だ。


 少なくとも十把一絡げの兵士さんたちよりは強い印象を受けた。


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