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神の国16

 なにはともあれ……、


「やるしかないか……」


 僕はそう呟くとリミッターを外した。


 零秒。


 世界の動きが緩慢になる。


 世界が僕についてこられない。


 世界を置いてけぼりにするのは久々の感覚だ。


 こっちの世界では初めてではなかろうか?


 オーラを展開した。


 半径五百メートル。


 空間を支配する。


 建物が、人々が、僕を殺そうとする大勢の兵士さんたちが、手に取る様に理解できた。


 無論フォトンを心配させるわけにもいかないから城までオーラが到達しないように手加減はしてるんだけどね。


 それにしても僕個人を殺すためだけに千人の兵士さんを動員するというのは大盤振る舞いもいいところだ。


 僕自身、僕の命にそこまでの価値を見出していない。


 僕に軍隊をぶつけるのは過大評価であり……そして同時に過小評価でもある。


 そもそもにして既にオーラの中に入っている兵士さんたちは遁術の対象だ。


 オーラを知らない故に感じようもないだろうけど、既にこっちの殺害領域に足を踏み込んだことになる。


 じゃあ遁術を使うかと問われれば使わないんだけど。


 その前に試したいことがある。


 遁術を使うのはそれからでも遅くはない。


 幸いというか飛獲物……つまり弓矢を持った兵士さんはいなかった。


 魔術を使える兵士さんがどれだけいるかはさすがにオーラじゃわからない。


 警戒するならそっちだろう。


 僕はだいたいの状況を察するとオーラを引っ込めた。


 一対千。


 五分もあれば決着がつけられる。


 殺ろうと殺られようと……ね。


 僕は屋外テラスの席……その椅子から立ち上がると剣を向けている目の前の兵士さんの首をコキッと折る。


「っ?」


 首を折られて兵士さんは気絶する。


 一応殺さないように加減はしたけど。


 ご愁傷様。


 一秒。


「金を以て命ず。超振動クナイ」


 僕の両手に八つのクナイが現れる。


 それも超高速で振動しているクナイだ。


 タイムロスは無しだ。


 世界宣言によって生み出されたクナイは僕を中心に八方に向かって投擲される。


 自慢になるけど……もともとのクナイの投擲でさえ城壁に食い込む威力のソレだ。


 それは僕とフォトンしか知らない事実だけど。


 今回はそれに加えて超速振動が付与されている。


 切れ味、刺突能力、ともに抜群だ。


 八方に投げられたクナイは僕の周囲の兵士さんは元より、その延長線上にいる兵士さんたちさえ負傷ならびに出血させる。


 同時に僕は跳躍した。


 上空十メートルの高さへ。


 高みから俯瞰する。


 兵士さん……いや軍隊がひしめき合って僕を殺そうと躍起になっている姿が見受けられた。


 僕は更に世界宣言。


「火と金とを以て命ず。超振動兼超高熱刀」


 僕の右手に生まれたのは日本刀。


 ただし世界宣言でもわかる通り、ただの刀ではない。


 超振動。


 超高熱。


 その二つの属性を付与された日本刀である。


 キーンと振動音が鳴り圧倒的熱波を放つ……凶悪無比な殺戮兵器である。


 刀身はだいたい二メートル。


 この辺りの融通が利くのは魔術の便利なところである。


 さらに僕は世界宣言をする。


「金を以て命ず。超振動クナイ」


 先ほどと同じ超速振動のクナイを左手に四つ。


 そして着地予定地点にいる四人の兵士さんの肩へ目掛け投擲する。


 二秒。


 上空からのクナイに貫かれて四人の兵士さんが負傷する。


 それはいい。


 よくはないけどいいことにしよう。


 問題は……跳んだら落ちるということだ。


 少なくとも飛行魔術でも使わなければ当然の帰結だ。


 そしていかにリミッターを外そうと自由落下まで速くはならない。


 ここで漸く兵士さんたちが狼狽する。


 既に兵役解任確実の兵士さんが十数名。


 大傷に陥った兵士さんが十数名。


 小傷に至った兵士さんが数十名。


 振動クナイの結果だ。


 特に最初に首を折った兵士さん……呼吸困難に陥っている兵士さんの後刻は象徴的だった。


 まぁ一つの宣戦布告。


 少なくとも僕はそう思っている。


 それからやっと、


「消えた!?」


 僕がその場から移動したことに対して感知する兵士さんたち。


 呑気だね。


 正確には消えたのではなく目にも映らない速度で跳躍しただけなのだけど、いちいち説明する気にはなれない。


 三秒。


 四秒。


 五秒。


 僕は光の国の兵士さんたちに囲まれた地点へと降り立った。


 足元には負傷者が四人。


 着地に当たって振動クナイで無力化させた兵士さんたちだ。


「な」


 にが起こっている、とは言わせない。


 それより早く狼狽しきっている兵士さんに襲い掛かって無力化したからだ。


 六秒。


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