神の国13
次の日の朝。
朝食をとりホテルをチェックアウト。
いつものようにウーニャーを頭に乗せてホテルを出ると兵士然とした人間が五人……僕らを迎えて敬礼してきた。
「ウーニャー……何?」
ウーニャーの言うことは至極もっともだ。
こっちとしても意味がわからない。
兵士然……兵士さんの一人が僕と、それからフォトンを見た。
「無限復元……セブンゾール……フォトン様と……それからそのバーサスの騎士マサムネ様でありますね?」
恐縮するように確認をとられる。
「たしかに私はフォトンでマサムネ様はマサムネ様ですが……」
フォトンは深緑の髪で作ったおさげをヒョコヒョコと揺らしながら頷いた。
再度敬礼する兵士さん。
「神の国の王……ゴッド陛下の命によりお二方を城までお連れするよう申し付かっております」
「ゴッド陛下が?」
フォトンの疑問に、
「是です」
兵士さんは頷く。
「ていうかどうやって僕たちの居場所を知ったの?」
これは僕の言。
「高額賞金首が豪華なホテルに泊まれば調べるのは簡単でした。不快に思われたなら申し訳ありません」
なるほどね。
盲点だった。
そもそもバウンティハンターも山賊も亜人も一緒くたに敵性を感じている手前、自身が賞金首……つまりお尋ね者だという意識が僕らは薄い。
大陸にとっての有名人としての意識が薄いのだ。
閑話休題。
「まぁゴッド陛下には謁見してもらえるよう嘆願するつもりでしたから話が早いと言えば早いのですが……」
歯切れの悪いフォトンの言葉。
気持ちはわかる。
今更賞金首として狙っているわけでもあるまい。
要はゴッド王の真意が那辺にあるかが問題だ。
「まぁいいんじゃない?」
僕は気楽に言った。
「向こうから招待されるなら願ったりだよ。何か不穏があるのなら纏めて叩き潰せばいいだけのことだしね」
「……っ!」
兵士さんが青ざめる。
もちろん兵士さんに対する牽制として言ったのだから当然の理ではあるのだけど。
「ただしこっちからも注文があるよ」
フォトンからイニシアチブを奪って僕は提案する。
「何でしょう? ある程度の融通は利かせよと命じていただいてますので可能な限り善処したいと思いますが……」
御立派。
「謁見する場所はお茶ができてくつろげる場所であること。それから紅茶を出すこと」
「確認をとってまいります」
兵士さんの一人がそう言って城に駆け出した。
「ではフォトン様、マサムネ様、ツナデ様……それから……」
イナフとウーニャーとフィリアの名前を知らないのだろう。
「名も無い一般人たちでいいよ」
僕はそう言った。
ウーニャーは違うけど。
「ともあれ城にご案内します」
そう言って先導する兵士さんたちだった。
中略。
「ようこそ余の城へ」
ゴッド王が僕たちを歓迎した。
テーブルには全員分の席が用意され紅茶の注がれたティーカップが置かれている。
「無限復元……セブンゾール……フォトン様に会えるなど光栄の極み」
「恐縮です」
言葉こそ丁寧だがフォトンの言意には真摯さが欠けていた。
「ささ、どうぞ席にお座りなされ。おや? マサムネ様の頭に乗っているドラゴンはまた珍しい色を……」
「突然変異です」
てきとうに誤魔化す僕だった。
七色竜王だと語ったところで威圧するだけだろう。
ウーニャーもソレを察したらしく抗議の声はなかった。
フォトンが紅茶を飲んで、
「それで?」
と問う。
「如何様な理由で私たちを召喚したのですか?」
「いやなに……余とライト王は旧知の間柄。ライト王はフォトン様に会いたいと切に願っておられる。故にライト王の元へと一時的でいい……帰ってもらえぬか?」
「蜘蛛巣の伝達機があるでしょう?」
「言葉は時に真実足りえんよ。ライト王の気持ちはライト王を眼前にて受け止めるべきだと余は思う」
「ふぅん?」
挑発的に疑問を呈すフォトン。
「…………」
僕は無言で紅茶を飲む。
その横でフォトンは言葉を続ける。
「ですが私たちは観光旅行の途中です。これから神の国最大の観光スポットたる神都に向かっているのです。これを蔑にして光の国に向かえと言うのはちょっと傲慢だと言わざるをえませんね」
「いやはや耳が痛い」
ゴッド王は不敬なフォトンの言葉にも何がしかの悪意を見せなかった。
懐の深い人物ではあるらしい。
「しかして移動手段があろう?」
既にゴッド王は知っていた。
何を?
僕のことを。
「フォトン様のバーサス……マサムネ様は空間破却が使える。違いますか?」
「どこでソレを?」
「ライト王から聞き申しました。何でもマサムネ様は国際魔術学院で破却のクランゼの魔術を上位互換で再現したとか」
光の国にまで轟いていたのか。