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神の国11

 王都に着いたのは夜遅くだった。


 というのも隣街を出たのが午後だったのだからしょうがない。


 ともあれ王都である。


 その国で最も隆盛を誇る都市。


 複雑な建築技術を必要とする二階建て三階建ての建築物すら珍しくない。


 大通りには市場が開かれ、夜だと言うのに売り買いが激しい。


 流動性も抜群らしい。


 これで王都に無事着いたのだからクエストは完了だ。


 商人は感謝の意を示して僕たちに別れを告げた。


 僕たちはといえば王都で最も豪勢なホテルに泊まることになった。


 というか僕が指名した。


 ホテルの質が良ければ男女別々の浴場が準備されているからだ。


 全裸の美少女たちと一緒にお風呂……という事態を避けられる。


 嬉しくないわけじゃないけど責任の取れない行為は控えたいというのが僕の本音だ。


 決して女体に興味が無いとかモーホーだとか、その手の類ではないことをここに銘記してもらいたい。


 浴場の無い村や浴場を期待できない道の途中での野宿ではフィリアのトライデントによって風呂に入るのが通例になっていた。


 女の子たちは皆、僕と一緒に入浴したいと言ってくるのだった。


 乙女の純情に対する価値観……男としての甲斐性……性的欲求……それらの結果がもたらす結論……風呂には入るけど夜空を見上げながら薬効煙を吸うに留めた。


 さすがのおっぱいも夜空より上には無い。


 一回だけ、


「僕は後から入る」


 といったことがあって、女の子たちが僕が断念して入浴するまで風呂に入り続けたこともあり、フォトン以外の女の子が湯あたりを起こしたことまである。


 そんな経緯もあって、仕方なく僕は女の子たちと裸の付き合いをせざるをえなかった。


 言っとくけど僕とて聖人じゃない。


 もう一人の僕は素直で純情だ。


 水着に隠れて見えないようにはしてるけど。


 いい加減その辺りを分かっては……くれないんだろうなぁ。


 そんなわけでホテルでは男女別の浴場を用意しているところに泊まるのが僕の安全牌なのだった。


 ホテルで食事を摂り、男女別の風呂に入る。


「ウーニャー! ウーニャーがパパ独占!」


「だね」


 ウーニャーは零歳児なのでさすがに興味の対象外。


 言葉にはしないけどね


 ともあれ人化したウーニャーを背中から抱きしめて僕は入浴する。


「パパ! 何かお話ししてよ!」


 考えようによっては無茶ブリとさえ思える発言をするウーニャーだった。


「そうだねぇ……」


 僕は思案する。


「電子については既に語ったよね?」


「ウーニャー! マイナスの電気……電荷……だっけ……を持つ粒子! 陽子と中性子の周りを月みたいにグルグルと回る奴だよね!」


「うーん。七十点」


「粒子であると同時に波動でもあってソレは後の議論ってことになった!」


「うん。百点」


 クシャクシャと七色の髪を撫ぜて褒めてあげる。


「ウーニャー!」


 ウーニャーは嬉しそうだ。


「じゃあ今日は二重スリット実験について話そっか」


「ウーニャー? にじゅうすりっと……?」


「わかってるよ」


 と僕は言う。


「ここにある実験装置があるとする」


「実験装置?」


 ウーニャーは首を傾げる。


 そんなウーニャーの顔の前まで手の平を伸ばし、


「そ。一つは電子銃」


 握り拳から人差し指を立てる。


「ウーニャー……」


「電子銃っていうのは電子を銃弾として放つ銃のこと」


「銃ってツナデのコルトガバメントみたいな?」


 なるほど。


 そういう解釈か。


「そうだね。ツナデのM1911がわかりやすいかな? それで銃弾の代わりに電子を撃ちだすモノだと考えてもらえればいいよ」


「ウーニャー!」


 納得したようだった。


 僕は人差し指に続き中指を伸ばす。


「一つは二重スリット」


「ウーニャー……」


「二重スリットっていうのは一枚の板だと思ってもらえればいいよ」


「板?」


「うん。縦長の長方形の穴が平行に二つ開いている……電子を通さない板のこと」


「ウーニャー!」


 またしても納得したようだった。


 僕は今度は薬指を伸ばす。


「一つは写真乾板」


「ウーニャー……」


「これは要するに電子がぶつかるとその痕跡を残す板だよ」


「ウーニャー!」


 これで材料は揃った。


「で、右から順に電子銃……二重スリット……写真乾板を並べる」


「ウーニャー!」


「電子銃が電子を一発ずつ撃ちだすよね? それは二重スリットにぶつかるか長方形の穴をすり抜けて写真乾板にぶつかる。ここまではいい?」


「ウーニャー」


 コクリと頷かれる。


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