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神の国09

 んで、次の日。


 王都に向かう二頭立ての馬車の護衛を受ける僕たちだった。


 商人は気前が良く……王都に行く商人は裕福な連中らしいとフォトンから聞いた……前払いで報酬をくれた。


 報酬そのものに僕たちはまったく興味がなかったけど、


「くれる」


 というなら拒絶する必要もない。


 そもそもにして……王都まで連れていってくれるというのがこの上ない報酬なのではあるけれど。


 何より僕を除いた女所帯でありながらギルドでの一悶着……要するにツナデによる凶行……も耳に入っていたらしく、


「頼もしい」


 と言ってくれた。


 難しいことを考えない人で良かった。


 普通バウンティハンター四人をサラリとあしらう賞金首など畏怖の対象だろうに。


 途中山賊を感知する。


 南無。


「害したお前に言われても」


 と抗議されるかもしれないけど。


 要するにどういうことかというと、馬車を狙っている山賊を事前に察知し、話し合いも面倒くさいということで、遁術で黙っていただいたのだ。


 平和主義者から見れば蛮行だろうけど山賊と討論するほどの余裕はない。


 道に倒れ伏す山賊という名の税金取りの苦悶を見てクエストの商人は首を傾げた。


 それはそうだろう。


 僕が害したのは十キロ先に捉えた瞬間だ。


 障害から負傷の発見まで時間差になるのはしょうがないことだった。


 山賊の山小屋も感じえたけど、あまり裕福な山賊ではなかったらしい。


 食料と多少の財産があるだけだった。


 奪う権利は有るのだろうけど労力を費やすほど見事なものでもない。


 というわけで商人と馬車の護衛を続ける。


 農村に着いたのは日が暮れる少し前だ。


 大都市と王都とを繋ぐ村ということもあって中々の広さを持っていた。


 さらに言えば王都に収めるためだろう。


 麦畑が広くとられている。


 まぁ麦なんて撒いてほっとけば育つんだから農業としては楽な方だろうけど。


 僕たちは村人に歓迎された。


 フォトンとイナフとフィリアと商人は麦酒をふるまわれる。


 僕とツナデとウーニャーは未成年なので却下。


 僕たちの他にも別の商人と護衛の姿が散見された。


 中々繁盛しているようだ。


 そして商人のおごりで食事を摂り宿に泊まる。


 僕だけは馬車の警護だ。


 慣れたものである。


 一人で日課となっている訓練をこなす。


 逆立ち状態での指立て伏せ。


 スクワット。


 一人演武……などなど。


 体を作り型を埋め込む。


 それが向こうの世界で教えられたことだ。


 その通りに実行する僕。


 月夜の下、僕は自身に訓練を課す。


 と、悲鳴が聞こえた。


 村人のモノだ。


 甲高い声だなぁ……なんて思ってみる。


 山賊か?


 モンスターか?


 少なくとも村周りに現存する山賊はいなかったはずだけど……。


 そう疑問を持ちながらオーラを広げて状況を把握する。


「これはこれは」


 苦笑してしまう。


 こっちの世界に来て初めて、ではないかな?


 巨大なクマが村里へとおりてきたのだ。


 ファンタジーな世界故にこの可能性には気付けなかった。


 ちゃんと農村は農村してるんだなぁ。


 おそらく腹が減って村を襲ってきたのだろうけど悲しいかな……クマの暴力が通用する戦力ではなかった。


 大都市から王都に向かう……あるいは王都から大都市に向かう……そんな商人たちの雇っている護衛が複数人いるのだ。


 モンスターはともかくクマ程度なら問題ないはず。


 事実問題なかった。


 剣士風の護衛の一人が牽制している間に魔術師風の護衛の一人がクマを焼いた。


 僕の出る幕はなかった。


 それから何があったかというと宴会だ。


 クマ肉を使った宴会である。


 ポツポツと村に明かりがつき、クマ鍋が作られた。


 村人としてもクマが人里におりてくることにほとほと困っていたらしい。


 それを倒した護衛は称賛され、麦酒を勧められた。


 そしてクマ鍋の他、クマ肉を使った料理が村全体に振る舞われる。


 その宴会にはフォトンたちも参加した。


 僕は一人馬車の護衛を続ける。


 とは言っても馬車に寝転んでオーラを展開するだけなのだけど。


 そのオーラが近づいてくる二人の美少女を捉えた。


 それが何なのか瞬時に悟る。


 ツナデと人化したウーニャーだ。


「お兄様。クマ鍋ですよ。いかがですか?」


「ウーニャー! 美味しいと思うよ! ウーニャーは知らないけど!」


 そんな二人の美少女はクマ鍋を注いだお椀を僕に差し出す。


「ありがと」


 感謝してクマ鍋に口をつける。


 クマ肉は野性味溢れ、汁は味噌が香り高い。


 総じて美味だった。


「懐かしい味だね」


 ほんわかと僕は言う。


「ですです」


 ツナデがコクコクと頷き、


「ウーニャー! 美味しいなら良かった!」


 ウーニャーが嬉しそうに顔をほころばせた。


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