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神の国05

 そして一晩村の宿屋にて泊まった後、日が昇ると同時に僕たちは神の国を南下し出すのだった。


 で、


「やれやれ」


 僕は嘆息した。


「神の国」


 と言うからには国民は唯一神デミウルゴスを信仰しているかと思えばそうでもなかった。


「神の御加護なんぞ知ったこっちゃない」


 と言わんばかりの野盗の群れに囲まれたのだ。


 結局どうあろうと人間の本質という奴は変わらないらしい。


「謀るべからず。奪うべからず。殺すべからず」


 僕は説得する。


「それが一神教の原理じゃないの?」


「神を信じて腹が膨れるなら信じてもいいさ」


 ある意味での真理を野盗の一人が口にした。


 ま、そうなんだけどさ。


 そして僕は状況を確認する。


 オーラを使って。


 ここは森の開拓された道。


 少なくとも十キロ圏内に村は無い。


 代わりに少し離れた場所に野盗の本拠地があった。


 金銀財宝ざっくざくである。


 これを放置して何の旅人か?


 汚れた考えで僕は言った。


「ツナデ。フィリア」


「何でしょうお兄様?」


「なぁにマサムネちゃん?」


「やっちゃって」


「了解しました」


「はぁい」


 そしてツナデとフィリアが動く。


 ツナデはオーラを広げて僕たちを囲んでいる野盗を捉える。


 そして複雑な印を両手で結んで術名を放つ。


「火遁の術」


 悲鳴が上がった。


 野盗たちから。


 幻覚とはいえ脳に直接身を焼く炎の情報が注射されたのだ。


 その苦しみは想像を超える。


 ちなみにオーラは目に見えないが、遁術による副次的な映像は目に見える。


 オーラを知り得ないウーニャーやフィリアにも野盗を襲っている炎の幻覚映像はちゃんと捉えられているのだ。


「だから何?」


 という話ではあるが。


 そして、


「水が欲しいのですか? ならくれてやりますよ」


 そう言ってフィリアが水を操る神器……トライデントを振るう。


 トライデントにより操作された水は槍となり野盗たちの大腿を捕えた。


 ちゃんちゃん。




    *




 そして囲んだ野盗を成敗した後、僕たちは野盗の本拠地を叩いた。


 こんな物騒な連中がいるというだけで経済は滞る。


 そういう意味では僕たちは正義だったろう。


 何はともあれ不死身のフォトンにオーラと魔術を自在に操るツナデとイナフ……存在自体が最強のウーニャーにトライデントのフィリア。


 野盗の対抗出来うる許容範囲を超えていると言わざるを得ない。


 哀悼の意は捧げないが同情くらいはしてもいいだろう。


 そういうこともあって野盗の集団がため込んでいた金銀財宝はフォトンの四次元ポケットの中に納まった。


「さて、旅を続けよう」


 とは言えなかった。


 野盗の本拠地を叩いている内に気付けば日は沈んでいた。


 今日は野宿をせざるを得ない。


 自明の理だ。


 であるから屈服させた野盗のアジトで僕たちは一晩を過ごすことに決めたのだった。


 絶壁の洞窟にあった野盗の本拠地は血に塗れていたが広さでいえば十分。


「あとは風呂でもあれば文句なし」


 と僕が言うと、


「あら、それなら問題ないわよマサムネちゃん?」


 フィリアがそう言った。


 それがどういう意味を持つのかを僕が推測するより先に、フィリアはトライデントを振るった。


 同時にフィリアのトライデントに呼応するように地面からお湯が沸き出た。


 そしてソレに水を混ぜ合わせ、風呂としての適した温度に調整するフィリア。


 簡素な温泉が出来上がるのだった。


「これでいいでしょ?」


 悪戯っぽくフィリアがウィンクする。


 否定する材料もない。


 僕は水着を用いて即席の温泉に肩までつかる。


 フォトンとツナデとイナフとウーニャーとフィリアも服を脱いでそれに続く。


 僕以外の誰しもが全裸だったけど心頭滅却して煩悩を追い払う。


 フィリアが豊満な胸を強調しながら僕に甘い言葉を囁く。


「お姉さんが筆下ろし……してあげよっか?」


「魅力的だけど却下で」


 僕は悪戯にそう言う。


 責任をとれる立場じゃないとどうにも……ね。


「ウーニャー! ウーニャーも抱いていいよ?」


「零歳児に手を出す馬鹿がいるものか」


 真理である。


「ウーニャー……」


 ウーニャーは残念そうだった。


 生まれたばかりでそんな知識ばっかり身につけているのは僕のハーレムのせいだろう。


 フォトンもツナデもイナフもフィリアも僕に性的衝動をどうにかしてほしいと願っているのだ。


 ならばウーニャーが影響を受けるのも当然と言えた。


「やれやれ」


 僕は即席の温泉に肩まで浸かって愚痴を吐いた。


「むう……」


 と旅のお供たちが不満げに呻く。


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