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神の国04

 朗報。


 フォトンがオーラを知覚しました。


 喫茶店での一悶着があった後、今日はその村に泊まることになった。


 宿屋は意外に広く取られ、僕たち全員が同じ部屋に押し込められる。


 これで部屋がわかれると女の子たちで喫茶店とは違う意味での一悶着があるので全員同じ部屋と云うのは僕の精神衛生上非常によろしい。


 で、毎度の如くフォトンにオーラの訓練をしていたのだが、ついにフォトンは自身のオーラを感知するに至ったのだった。


 はい拍手。


 わー。


 パラパラ。


「これが……オーラ……!」


 自身の体からあふれ出すオーラを感じながら絶句……とまではいかないまでも驚愕につっかえつっかえ言葉を紡ぎだすフォトン。


 ちなみにオーラは目に見えない。


 おそらくではあるが五感の内でオーラを感じることに最も近い感覚は触覚だろう。


 それすらも正確とは言い難いけどね。


 そもそも感覚と云う奴はいくら端末が認識しようと脳が感じなければ意味が無い。


 逆に言えば端末が機能不全でも脳が「そう」と捉えれば感覚は生まれるのである。


 まぁこっちの世界の人間に言っても無駄かもしれないけどさ。


 そんなわけでオーラと云う奴は乱暴に言えば脳が直接認識する情報だ。


 自身のオーラを認識し強弱広狭遁術を感覚として悟る。


 あるいは他者のオーラを警戒とともに悟る。


 再度言うが脳で直接……である。


 故にオーラによる取得する情報量も膨大なモノになる。


 オーラを……感覚を広げ領域内のものを正確にクオリアで認識する。


 視覚でも聴覚でも嗅覚でも味覚でも触覚でもない第六の感覚。


 故にオーラはもう一つの名を持つ。


「第六感」


 と。


 そしてフォトンはそれを得たのだ。


 遁術を覚えるのは尚早だろうけど、これで遁術に影響を受けることはない。


 遁術は相手の脳にオーラを用いて直接情報を注射することだ。


 故に五感に何も感じなくとも脳が偽物の情報を理解し……結果不利な状況へと持っていかれる。


 対抗手段はそれがオーラに因るものかどうかを認識することから始まる。


 つまりオーラを認識できる者に遁術は通用しないのだ。


 樹の国でエルフの霧遁の術が僕とツナデに適応されなかったように。


 さて、


「オーラの広げ方はわかる?」


 僕はフォトンに問う。


「多分……ですけど……」


 フォトンの言葉はたどたどしい。


 まぁ困惑するのはわからないでもない。


 ともあれフォトンはオーラを広げる。


 それまで自身の皮膚表面にまでしか展開されていなかったオーラが広がり、それを僕とツナデとイナフが認識する。


「これは……!」


 度々ではあるがフォトンが驚愕する。


 それはそうだろう。


 オーラを通して脳が直接離れたオブジェクトを理解するのだ。


 フォトンがどれだけオーラを広げているのかは本人にしかわからないが、少なくとも百メートルを下回ることはないと思う。


 そんなことを思っていると、


「すご……」


 とフォトンは驚きながら呟く。


 そして、


「十キロメートル先まで手で触れて目で見えるように認識できます……! これがオーラ……!」


 ありえないことをフォトンは言った。


「十キロ先?」


 僕が首を傾げると、


「はい。正確ではありませんがディバインストライクの適応範囲と同程度の広さまで展開できるみたいです」


 至極あっさりとフォトンは言う。


「そんな……!」


 これはツナデ。


「フォトンお姉ちゃん……!」


 これはイナフ。


 この二人のオーラの展開半径は五百メートルだ。


 ちなみに僕が十キロメートル……一万メートル。


 つまり五里だ。


 霧遁の術を使えば五里霧中の四字熟語を体現できる。


 そしてフォトンは、


「マサムネと同等の展開を」


 と言っているのだ。


 驚くべきことである。


 しかして五里の直径で魔術を発現させるフォトンがその境界の見切りを違えるはずもないだろう。


 ただし、


「……っ」


 全てが僕と同じというわけでも無いらしかった。


 ギュルギュルとフォトンのお腹が鳴る。


 オーラの展開および遁術の使用にはカロリーを消費する。


 半径十キロものオーラの展開に見合うだけのカロリーをフォトンは消費したのだろう。


 不老不病不死のフォトンが餓死することは有り得ないけど、空いたお腹が厳然たる事実なのもまた真理だ。


 そういう意味では半径十キロのオーラを展開していながらカロリーの消費がツナデやイナフと同程度の僕が何者かという話にはなるけどコレは後述。


「うう……」


 空腹故か、お腹を押さえて呻くフォトン。


「宿屋にいるんだから食事でも提供してもらえば? 追加料金を気にするほどの経済状況じゃないでしょ?」


 至極真っ当な僕の意見に、


「そうですね」


 とフォトンは頷いた。


 無論四次元ポケットには食料も常備されているけど、せっかく食堂があるのだ。


 ならば簡素な食事より手の込んだ食事の方が美味しいに決まっている。


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