神の国02
さて、
「じゃあ一神教の総本山に向かっているわけ?」
そんな僕の問いに、
「はぁ。まぁ」
と曖昧にフォトンは返す。
そして説明する。
神の国について。
「神の国は王都と神都があるんです」
王都……。
神都……。
僕は煙をプカプカ。
揺らめいて虚空へと消えていく煙。
「桜の国から……ですから先に着くのは王都の方ですね」
「神都は王都より南にあるってこと?」
「はい」
頷くフォトン。
森道を歩く僕ら。
「ウーニャー! ウーニャーたちは神都じゃなく王都に向かっているの!?」
「そういうことになります」
フォトンは肯定した。
「ウーニャー!」
ペシペシ。
僕の後頭部を尻尾で叩くウーニャー。
「まぁ王都は都合上寄らなきゃいけないけど神都は観光旅行の醍醐味だね!」
そんなイナフ。
神都……ねぇ?
バチカンのようなモノだろうか?
極東にエデンの園があってローマが勢力を持つ。
向こうの世界でもそうだった。
ということは、
「こちらでいう神の国がローマなのかな?」
そう思わざるをえないのだった。
「ですね」
と既に了解している妹……ツナデが頷いた。
あ。
やっぱり?
煙を吐く。
「少なくとも一神教が存在し文明に食い込んでいる」
「…………」
「ならば神の国はローマでしょう」
「…………」
「違いますかお兄様?」
「違わないけどさ」
他に言い様もない。
「多神教……アミニズムが自然発生的なものと違い一神教は高度に政治的な思考形態の一種です」
わからないでもない。
「で、あればこそ一神教は間接的に世界を支配しているのでしょう」
それも納得。
「もっとも……」
ツナデは断じる。
「神なんて居ないに越したことはないんですけど」
「それは……」
ある意味で真理だ。
人類が神から解放される。
それはいったい何時のことだろう?
そんなことさえ思ってしまう。
しかしてフォトンとフィリアは違った。
「ツナデは神を否定するのですか?」
「ツナデちゃん……神を信じないの?」
対してツナデは簡潔だった。
「ええ。ツナデにとって信ずるべきはお兄様だけですから」
「…………」
いやぁ。
照れるなぁ。
ガシガシと後頭部を掻く。
「ウーニャー! ツナデもパパのこと大好き!」
ウーニャーがペシペシと尻尾で僕の後頭部を叩く。
それが救いではあった。
「この際ツナデも一神教に入信したら?」
「ツナデにとって神とはお兄様のことです」
断固としてツナデは言う。
「お兄様こそツナデの全て。誰よりも……何よりも……何時よりも……何処よりも……ツナデはお兄様を愛しております」
「…………」
僕は困っちゃって頬を掻く。
ツナデの言いたいことはわかる。
しかしてソレは重荷だ。
僕を縛るものだ。
それをツナデは理解しているのだろうか?
「マサムネちゃん難しい顔してる」
フィリアが覗きこむように僕の瞳を見つめる。
「お兄ちゃん! やっぱりツナデお姉ちゃんが……!」
イナフが窺う。
「やんやん」
とツナデ。
桜色に染めた頬を両手で押さえて首を振る。
「やはりお兄様はツナデを……」
「そうと言った覚えはないけどね」
皮肉るより他なかった。
「ウーニャー! 結局パパは誰が本命なの!?」
そんなウーニャーの言葉に、
「誰も本命じゃないよ。旅の連れが僕を慕ってくれているのは否定しないけどね」
「むう……」
と旅の連れが呻く。
「まぁ……」
知ったこっちゃないんだけどさ。
僕は煙をプカプカ。