光の国07
「ところで……」
僕専用のスーツに着替えて僕は言う。
「さっきバーサスの騎士とか言ってたよね?」
「言いましたね」
相も変わらず場所はフォトンの私室。
メイドさんの淹れた香り高い紅茶を飲みながら……僕とフォトンは会話を繰り広げるのだった。
「それってどういう意味?」
「まぁつまりマサムネ様には私の騎士になってほしいんです」
「騎士とはかけ離れた存在なんだけどな……僕は」
困惑することしきりである。
「そちらの世界に騎士はいませんの」
「とっくの昔の話だね」
僕は肩をすくめてみせる。
「古代の遺物だよ」
皮肉をスパイスに、
「そもそも剣を持って闘争をするというのが既にあり得ない」
否定してのけた。
「ま……どうせ異世界って言うくらいだから中世ヨーロッパの価値観なんだろうけどね……ここは」
「ちゅせいよーろっぱ?」
クネリと首を傾げるフォトンに、
「ま、つまりあっちの世界における過去の歴史だと思ってくれれば」
そう告げる僕。
「つまりマサムネ様の世界はこちらより文明が進んでいると?」
「そういうことだね」
屈託なく僕は言う。
閑話休題。
「それで?」
「それでとは?」
「バーサスの騎士って何さ」
どうも僕に関する用語のようだけど……。
「こちらの世界には魔術師がいるんですの」
それは聞いた。
それで?
「そして騎士も存在しますの」
それも聞いた。
それで?
「そして魔術師と騎士は互いに互いを補完するように存在しますの」
「…………」
沈黙する僕。
「ええと……」
どういうことさ?
「つまりですね……」
ふむふむ。
「近距離戦闘は騎士の仕事。そして遠距離戦闘は魔術師の仕事なんです」
「それは……」
まぁわからないでもないけど。
「だから一人の騎士には一人の魔術師が……あるいは一人の魔術師には一人の騎士が……それぞれ存在するんです」
「互いを補完するように……」
「はい」
フォトンが頷く。
「ですから魔術師と騎士はコンビを組むんです」
なるほど。
「つまり僕は……」
「はい……」
フォトンはまた頷く。
「私という魔術師と相対する……あるいはコンビを組むという名目で異世界から召喚された騎士様です」
それを指して、
「バーサスと言うんだね?」
そんな僕の言葉に、
「そういうことです」
しっかとフォトンは首肯した。
「バーサス……共演って意味だっけ」
つまり、
「フォトンという魔術師に釣り合う騎士として僕が呼ばれたと」
「そういうことになります」
やれやれ。
「ですからマサムネ様はフォトンの騎士です。それだけである程度の融通は利くはずですから自由にしてもらっていいですよ」
「ふーん」
僕は紅茶を飲む。
「もしかしてそんなことのために僕を召喚したの?」
「いえ、あくまで副次的なモノです」
やっぱりね。
そもそも騎士を見繕うだけなら僕を召喚する必要はない。
「じゃあ何で僕を召喚したのさ?」
「それについてはまだ答えられません」
そりゃまぁいいんだけどさ。
「じゃあ僕はどうすればいいの?」
「とりあえずライト王への謁見ですね」
「この国のトップに面会するってこと?」
「その解釈で間違いないかと」
あっさりとフォトンは言う。
「僕がフォトンの騎士だと知らしめるわけだね?」
「はいな」
「騎士ね……」
僕は少しだけ躊躇した。
当然だ。
魔術師と相対する騎士としての存在。
そんなものになるのは気の重い作業だ。
「ま、いいんだけどさ」
そんな僕の愚痴に、
「?」
首を傾げるフォトン。
いや、いいんだけどさ。