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桜の国27

「そもそも遁術が効かないというのがわかりません!」


 村人の大腿をコルトガバメントで撃ち抜きながらツナデ。


 ちなみに銃弾の装填は魔術で行われている。


 つまりコスモガンだ。


 ともあれ、


「それは僕も気になった」


 クナイで村人の肉を切り裂きながら答える。


 しかして切り裂かれた肉を自己修復して再度村人は僕に襲いかった。


「ウーニャー。殺しても死なないならウーニャーの出番かな?」


「却下」


 僕が否定すると、


「ウーニャー……」


 ウーニャーは不満そうだった。


 同時にフィリアが村人を無力化するが、


「これは……!」


「はい……!」


「そうだね……!」


「ウーニャー……!」


「決定的だわね……!」


 女の子たちは確信する。


 それは僕も同じだった。


「つまり……!」


「この村人たちは人間ではありませんね」


 フォトンが言う。


「遁術が効かないのだからクオリアも持っていないでしょう」


 ツナデが言う。


「つまり哲学的ゾンビってこと?」


 僕が問う。


「何かしらのバックアップを持った存在なのかな?」


 イナフが言う。


「ウーニャー」


 ウーニャーが肯定する。


「では何がこの現象を支えているの!?」


 フィリアが言う。


 僕は頭に乗せているウーニャーにブレスを吐かせて牽制しながら考える。


 害しても即時再生する村人。


 遁術が効かない哲学的ゾンビな村人。


 そしてそんな村人が僕たちを襲う。


 その理由は、


「朱桜の贄とする」


 こと。


 そこで要約……僕は事態を悟った。


「まさか……! でも……!」


 それは合理的だが突拍子もない仮説だった。


 しかして他に回答は無い。


 だから僕は言った。


「ウーニャー!」


「ウーニャー。何かなパパ?」


「朱桜の一部にブレスを浴びせて」


「パパがそう言うなら」


 そう言ってウーニャーは朱桜に向けてレインボーブレスを浴びせる。


 同時に、


「グアアアアアアッ!」


 と村人たちが苦痛の悲鳴を上げる。


 やっぱりそうなのか……!


「どういうことですお兄様!」


「多分だけど妖精なんだよ!」


 僕はそう言う。


「妖精……?」


「桜の妖精だよ。時を経て永久桜の一つが力を持ったんだね。だから幻想的な情景も生み出すし人にも似た妖精をも生み出す。要するにこの村人たちは朱桜の生み出した妖精なんだ。だから朱桜ある限り無限に再生するし、妖精であるが故にクオリアなんて持ってないから遁術も効かない……!」


「じゃあ要するに……!」


 フォトンの問いに、


「そ! 朱桜を消滅させればいい!」


 僕は首肯する。


「それなら私の出番ね!」


 そう言ってフィリアがトライデントを朱桜に向ける。


 そして地にある水が朱桜を貫いた。


 根から発生した水の槍が朱桜をズタズタにして天へと貫いたのだ。


「ガアアアアアッ!」


 村人が苦悶にのたうちまわる。


 そしてギギギと音をたてて朱桜が倒れる。


「ウーニャー! レインボーブレスで朱桜を消滅させて!」


「ウーニャー!」


 肯定したウーニャーはブレスを吐いて、トライデントによってズタズタに切り裂かれた朱桜を七属性の攻撃でもって消失させるのだった。


「グアアアアアアッ!」


 と悲鳴を上げて妖精である村人たちは消失する。


 それはまるで朝の太陽に散る霧のように。


 全ての村人が消え去った後、


「やれやれ」


 と呟いて僕はへこたれた。


 朱桜がそこまで変異したのは意外だったけれど何を言っても始まるまい。


 僕は月夜の空を眺めて、それから魔術で薬効煙を生み出し……そして火をつける。


 煙をスーッと吸ってフーッと吐くと、


「これでよかったのかな……?」


 と呟く。


 オーラで確かめるに朱桜の村は人の気配が全く無くなって、残っているのは僕たちだけになったのだ。


 それはつまり朱桜の妖精だった村人の全滅を意味する。


「しょうがない事ですよ。お兄様が無事なだけでもツナデにとっても意味あることだと思います」


 ツナデがそう慰めてくれる。


 ま……そうなんだけどさ。


 言葉にはせず肯定する僕だった。


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