表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/512

桜の国20

 王都を出て、南へと続く街道を歩くこと一週間後。


 既に二つの村を経由して、ダンダンと道は舗装もされなくなって桜の樹が切り倒されただけの馬車には辛い道となっていた。


 永久桜の浸食が大したモノだと褒めるべきだろうか?


 なにせどっちを向いても桜一色。


 桜の国とは言うけど本当にその通りだと誰が予想しえようか。


 さて、閑話休題。


 一週間も歩けばそこそこ南には下れるわけで……。


 それまで順調だった旅にも波乱の一つくらい起きるわけで……。


 当然王都の軍隊もこんな南端にまでは影響力が無いわけで……。


 つまり……何が言いたいかというと……王都から離れれば離れるほど行く道の治安が悪くなるのは当然の理屈だ。


「…………」


 僕は薬効煙の煙を楽しむ。


 辺りを見渡せば山賊に取り囲まれている状況だったりするんだな、これが。


「えーっと……」


 僕は煙をプカプカ。


 それから確認する。


「つまり殺されろ……と?」


「兄ちゃんはな」


 死刑宣告を受ける僕。


「大丈夫だって。兄ちゃんの心配は杞憂だ」


 ニヤニヤと腐臭のする笑顔で山賊の頭目は続ける。


「姉ちゃんたちは殺さねえよ」


 さいですか。


「こんなに美少女ぞろいだ。高く売れるからな」


 ま~……。


 美少女ぞろいなのは否定しませんけど~。


 僕は煙を吸って吐く。


「その前にちょっとつまみ食いはするかもしれんが……なに、兄ちゃんと違って殺されることはないから心配すんな」


「はあ」


 僕は煙を吐きながら後頭部をガシガシと掻いた。


 正直誰を相手にしているか微塵も……それこそ塵一つ分もわかってらっしゃらない山賊の頭目には哀悼の意をささげたくなる。


「要するに僕を殺してかしまし娘を犯そうってことでしょ?」


「ドラゴンも売り物にできるぜ? 虹色のドラゴンなんて初めて見るが……まぁ鱗も肉も骨もよく売れるからな」


「ウーニャー……」


 ウーニャーも呆れたようだった。


 当然だろう。


 ペシンと一発……僕の頭の上で僕の後頭部を尻尾で叩く。


「フォトン」


 と僕は煙を吐くとフォトンに声をかける。


「何でしょうマサムネ様?」


「動かないでね」


 命令する僕に、


「そうしろと仰るならそうしますが……」


 素直に頷くフォトンだった。


「ツナデ……イナフ……」


 今度はツナデとイナフに声をかける


「何でしょうお兄様?」


「何お兄ちゃん?」


 黒と碧の眼が僕を見る。


「フォトンを守るように配置。ディフェンスは任せたよ」


「フォトンは別に守る必要はないのでは?」


「イナフもそう思うな」


「でもまぁこういう状況じゃ戦えないのも事実だからね」


「…………」


「…………」


「だからオフェンスは僕」


「わかりました」


「わかった」


 ツナデとイナフも理解してくれたらしい。


 フォトンに近付き背を向け……ツナデはコルトガバメントを……イナフは短刀を構えて姿勢を低くする。


 そして僕はクナイを構えるのだった。


 ぷっと山賊の頭目が噴き出す。


「まさか兄ちゃんたち、戦うわけじゃあるまいな?」


「そのまさか」


「まぁ抵抗したいって気持ちはわからんでもないが……それにしても無謀じゃないか? こっちは二十人はいるんだぜ?」


「だね」


 否定するまでも無く人数差で言えば五倍以上の差を持つ。


「ウーニャー。ウーニャーはどうすればいいの?」


「フォトンの頭の上に乗ってて。さすがに戦闘では邪魔だから」


「ブレスで一薙ぎに出来るよ?」


「君のブレスは強力すぎる。地平線の彼方まで消し飛ばす威力でしょ?」


「ウーニャー……」


 それきりウーニャーは黙りこくった。


「じゃ、行くよ!」


 僕はクナイを構えて山賊の一人に襲い掛かった。


 速度は神速。


 僕の持ったクナイが山賊の一人の首をかき切ろうとした瞬間、殺意が膨れ上がった。


「っ!」


 その悪寒の正体が掴めずにいた僕を無視して、急激に存在を果たした複数の水で出来た槍が山賊一党を傷つけた。


 一瞬にして全滅する山賊たち。


 絶句する僕たちに声がかかった。


「危ない所だったわね。私がいなければ酷い目にあったところだよ?」


 そんなソプラノが響いた。


 一瞬で全滅した山賊から声のした方に視線をやると、水色の流水のような髪に水色の瞳を持ち、そして水色のカクテルドレスを着た胸もたわわな美女が三又の槍を持って永久桜の木々の合間から現れるのだった。


「誰?」


 僕がそう誰何するのも当然だったろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ