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桜の国17

「革命じゃい!」


「あ、ちょ、チェリー王! 王様が革命なんてしていいんですか!?」


「ゲームの中でくらい構わないでしょう」


「ああ、困ったよ。これじゃ貧民決定じゃん」


 かしまし娘とチェリー王はトランプを突きつけあい大貧民に興じていた。


 最初は謁見の間にて話す予定だったのだけど、フォトンとウーニャーの、


「「お茶を出して」」


 という言葉にはいくらチェリー王でも逆らえるものではなかった。


 まぁ元々が一国の軍隊と戦っても押し切れる双方だ。


 威力的に考えても政治的に考えても確実にこっちが圧勝なのである。


 そんなわけで王の私室で茶をしばきながら話し合うことになった。


 私室の中には僕とフォトンとツナデとイナフとウーニャーとチェリー王は当然として、それから王属騎士が二人だけ見張りとして居た。


 体つきを見るだけで相当に鍛えられていることがわかる。


 まぁ二人そろってならイナフに善戦くらいはできるだろう。


 イナフが「遁術を使わなければ」というのが前提条件だけど。


 僕はというとテーブルを囲ってはいるものの大貧民には参加せずに薬効煙を吸っていた。


 煙を大きく吸い込んで大きく吐く。


 煙はゆらゆらと天上へと昇ろうとして消えていく。


 偏に風の前の塵に同じ。


 そんなことを思った。


「それにしてもマサムネ様」


「様はいりませんよチェリー陛下」


「いえ、あなたはフォトン様のバーサスにしてウーニャー様のバーサス……竜騎士でもあります。正直マサムネ様が一番の権威と言って過言ではありません」


「過言ですよ」


 僕は肩をすくめて煙をプカプカ。


「ともあれマサムネ様。このトランプというカードゲームは面白いですな。ポーカー。ブラックジャック。ババ抜き。七並べ。セブンブリッジ。そして大貧民。まことよく出来たゲームであります」


「光栄です陛下」


「異世界ならではの文化……こちらに取り込んでいただいて感謝の言葉もありません」


「光栄です陛下」


 僕は薬効煙を嗜む。


「それで相談なのですがこのトランプ……私に譲り渡していただきたい。無論タダでよこせなどとは申しません。金貨二十枚でどうでしょう?」


「金なんかいりませんよ」


 僕は煙を楽しむと、想像創造をして、


「木を以て命ず……トランプ」


 と五十四枚のカードとそれを収納する木箱とを生み出した。


 そしてそのトランプをチェリー王に渡す。


「ルールは覚えましたね? なら従者でも捕まえていつでもトランプに興じてもらって結構ですよ?」


 そんな僕に、


「ほ、本当にいただけるのですか?」


 チェリー王はたじろいだ様だった。


「そうですね……。もしタダで受け取るのがはばかれるというのなら僕たちを歓迎してください。ここに泊めてもらえれば宿泊費がういていいのですけど……」


「そういうことならばマサムネ様御一同を歓迎させていただきます!」


 興奮したようにチェリー王。


「ではそういうことで」


 僕は煙を楽しんだ。


「それよりフォトン?」


「何でしょうマサムネ様?」


「チェリー陛下に聞くべきことがあるんじゃない?」


「そうでした」


 どうやら忘れていたらしい。


 まぁ別に悪い事じゃないんだけどね。


「チェリー王」


「何でしょうフォトン様?」


「ブラッディレイン……ラセンを御存知ですか?」


「それはもう」


「ラセンの存在をこの国で感知したりはしませんでしたか?」


「ここ数年は聞きませんね。マサムネ様御一同はブラッディレインを探しておいでで?」


「まぁ旅の途中の座興ですが」


 フォトンが軽くそう言う。


 けれど僕だけは知っている。


 フォトンが必死にラセンを探していることを。


 魔術の師匠にして無限復元の呪いをかけた元凶。


 それがラセンという人間だと。


「では王都の情報屋にもあたってブラッディレインの足取りを探ってみせましょう。情報の収集が終わるまでこの城に滞在してもらうということでどうでしょう?」


「わかりました」


 フォトンはコックリと頷く。


「代わりと言っては何ですが……」


「何でしょう?」


「滞在してもらっている間トランプの遊び相手になってもらえませぬか? これほど楽しいゲームは初めてなもので……」


「それくらいなら幾らでも」


 フォトンは安請け合いをするのだった。


「伝達機で光の国に連絡取らなくていいの?」


 僕はフーッと煙を吐きながらフォトンに問う。


 答えてフォトン。


「私たちが旅立った後に事後報告してもらえればいいでしょう。例えライト王が死んでいてもあそこには水属性の氷魔法を扱える魔術師がいます。死体の保存など朝飯前です。そして死体があればソレに触れて無限復元を適応できます。次期王座を狙っている王族によってライト王が排斥されるのであればライト王もそれまでということですし。気にすることでもないかと」


 あっさりしてるな~。


 まぁいいんだけどさ。


「では次の大富豪は私だな。うむ。ようやく大貧民から抜け出したわけだ。大貧民、カードをきりたまえ」


 不遜にイナフにチェリー王は命令する。


「ちぇー。まぁいいけど」


 そんなわけで大貧民となったイナフがカードをきる。


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