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桜の国11

 そんなわけで馬車の護衛をすることになった。


 とは言っても要するに馬車に乗って桜の国の王都までの道のりで山賊や亜人を警戒するだけの任務だ。


 商人は少年一人に美少女四人……ウーニャーが人化しているため……のパーティに不安を覚えていたけど僕の実力をギルドの店主に強調されて納得してくれた。


 というわけで僕とツナデとイナフが交代でオーラを展開して不意打ちに対処するだけで、それも三時間も経たずに飽きることになった。


 当然だろう。


 馬車に揺られているだけなのだから。


 そんなわけで僕が警戒係を買って出て、フォトンとツナデとイナフとウーニャーはトランプに興じることになった。


 大貧民である。


 ババ抜きもしたことはあったけど僕とツナデが相手の顔の筋肉から心理を読み取れるため勝負にならず、結局大貧民が通例となっている。


 僕は参加してない。


 オーラを半径一キロメートル……直径二キロメートルまで広げて警戒する役目だ。


 僕は異常なので普通の人間よりオーラによるカロリーの消費が少ない。


 僕の本気である半径十キロメートルの展開を以てやっと一般人のオーラの展開と釣り合うほどだ。


 そんなわけでフォトンとツナデとイナフとウーニャーが大貧民をしている横で、ガタガタと馬車に揺られながら僕は想像創造をし、


「木を以て命ず。薬効煙」


 と世界宣言をする。


 宣言通りに世界が変質し、薬効煙が僕の手元に生まれる。


 さらに想像創造をすると、


「火を以て命ず。ファイヤー」


 と世界宣言をして薬効煙に火をつける。


 僕は煙をプカプカ。


「極楽極楽」


 僕は薬効煙を吸いながら苦笑する。


「前々から思っていましたけど……」


 とこれはトランプのカードをきりながらフォトン。


「マサムネ様にしろツナデにしろイナフにしろ……なんでさも簡単そうに魔術が使えるんですか?」


「使えちゃ変?」


「変です」


 キッパリとフォトンは頷いた。


「世界宣言はいいですよ別に。自らが起こしたい現象を宣言するだけですから。でも想像創造はそうはいきません。強烈な……それこそ自己暗示にも似た空想力を必要とするんです。正直国際魔術学院でさえ麻薬も無しに想像創造の壁を越えられるのは百人に一人くらいの割合ですよ。麻薬によって脳を壊しもしてないのにマサムネ様たちは簡単に想像創造が……魔術が使える。正直魔術師を目指す者にとっては冒涜にも近い行ないです」


 と言われてもね……。


「まぁ精神集中は向こうの世界で散々やらせられたからね。正直、自己暗示にも似た強烈なイメージなんて僕やツナデにとっては日常茶飯事の行ないだよ」


 煙をフーッと吐きながら僕。


 吐かれた煙が桜吹雪の中に消える。


「識を律するのがツナデたちの修業の目標ですしね」


 トランプのカードをきりながらツナデ。


「お兄様にしろツナデにしろ遁術を扱うために相手のクオリアに自身のイメージをオーバーライドしなければなりません。それには強力なイマジネーションが必要となる。なればこそお兄様やツナデは想像創造など児戯にも等しいのです」


「遁術……エルフ魔術のことですよね?」


「こっちの世界ではね」


 僕は薬効煙を嗜む。


「じゃあイナフが魔術を使えるのも……」


「うん。大凡はお兄ちゃんたちと同じ」


 軽快に肯定するイナフだった。


「しかして魔術は一神教を基軸にしているんですよ?」


「どうせエルフに混じって精霊信仰を信じたって『耳無し』って排斥されるだけだもん。だからイナフは思想に貴賤は無いって思うんだ」


 極論としては間違っていない。


「ウーニャー! ウーニャーあがり! 一番!」


 ジョーカーを出して、その後に八のカードを出してウーニャーはあがった。


「ウーニャー! ウーニャー一番! パパ!」


「はいはい。何でがしょ?」


「ウーニャーを褒めて!」


「いいよ」


 抱きついてきたウーニャー人化バージョンを抱き返して七色の髪を撫でると、


「いい子いい子」


 と僕はウーニャーを可愛がった。


「えへへぇ」


 とウーニャーはこの世の至福とでもいうかのように嬉しがるのだった。


 可愛い可愛い。


「「「むぅ……」」」


 とかしまし娘が嫉妬の視線を僕とウーニャーに向ける。


「ルールを決めましょう」


 これはツナデ。


「一番になった人がマサムネ様に可愛がられる権利を持つと」


 これはフォトン。


「そうじゃないと不公平だよね」


 これはイナフ。


 僕は煙をプカプカ。


「そんなに僕って魅力的?」


「「「当然です」」」


 かしまし娘は断じた。


 さいですか。


 反応に困る僕。


「ウーニャー! パパに可愛がってもらえるのはウーニャーだけだよぅ」


 ああ、ウーニャーは可愛いなぁ。


 零歳児であることが何よりの難点だ。


「マサムネさん……大人気ですね……」


 これは護衛している商人の言葉。


「意味わからないですけどね」


 僕は肩をすくめて謙遜するのだった。


 ガタゴトと馬車は進む。


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