光の国05
水色の髪のメイドによってスコーン……こっちの世界にもスコーンはあるらしい……を準備させて、それを齧りながら僕は問うた。
「フォトン……」
「何でしょうマサムネ様?」
「君は……」
とここで紅茶を飲んで続ける。
「君は魔術によって僕をここに……この世界に召喚したんだよね?」
「然りです」
頷くフォトン。
「それは誰の意志?」
「んー……」
と悩んだ後、
「最終的には私の意志なんですけど……」
「けど?」
「ちょっと今は話せない理由なんですよね」
なるほど。
「つまり」
と僕は整理する。
「何かしらの意図があって僕を呼んだ……と?」
「そういうことです」
「この世界に」
「そういうことです」
紅茶を飲みながら頷くフォトン。
それはつまり、
「魔術……」
だっけか?
「その通りです」
頷くフォトン。
魔術……。
魔術ねぇ。
「そも……魔術って何さ?」
「自身の命令を世界に行き届かせる技術のことです」
「?」
さっぱりわからん。
「そういえば」
とフォトンは言う。
「マサムネ様の世界には魔術は無いのでしたね」
「まぁ僕が知らないだけであるかもしれないけどね」
まぁ忍術があるんだ。
魔術が無いとは言えない。
「ともあれ」
と閑話休題するフォトン。
「こちらの世界における魔術とは……」
「とは?」
「世界を宣言によって改ざんする技術のことです」
フォトンは言った。
世界?
宣言?
改ざん?
「どういう意味さ?」
そんな僕の疑問は当然だったろう。
「イメージを持って世界を改ざんする。それが私たち魔術師の持つ能力です」
「?」
僕はコクリと首を傾げる。
「要するに自分のイメージ通りに世界を変革するんです」
あっさりと、
「…………」
まことあっさりと、
「……………………」
フォトンは言った。
自身のイメージ通りに世界を変革する
それは神代の力ではないか?
「……マジで?」
そう僕が問うたのも誰も責められはしないだろう。
対してフォトンは、
「然りです」
しっかと頷いた。
「そも……」
と言葉を紡ぐフォトン。
「そうでなければマサムネ様を異世界から召喚できるはずがないじゃないですか」
それはそうだろうけど。
困惑する僕。
「つまり魔術で世界を変革して僕を呼び寄せたってこと?」
「そういうことですね」
そう言ってフォトンは……僕たちのいる部屋の……その天蓋付きの豪奢なベッドへと歩み寄って、
「これがその証拠です」
そう言い毛布をはぎ取った。
ベッドにある布団があらわになる。
そこには在り得ないものがあった。
魔法陣。
それはそう呼ばれるものだ。
ベッドにおける掛布団と布団の間に魔法陣の描かれた布がしいてあったのだ。
「これが此度のマサムネ様を召喚したウィッチステッキです」
胸を張ってそう言うフォトン。
「ウィッチステッキって?」
問う僕。
直訳するなら「魔女の杖」だ。
「魔術はイメージによって成り立ちます。そのイメージを補助するマジックアイテムを指してウィッチステッキと呼ぶんです」
多少はわからないでもない。
つまり、
「この布に描かれた魔法陣によって僕は召喚されたってこと?」
「然りです」
フォトンはどこまでも真面目くさって言うのだった。
「ウィッチステッキ……ね……」
僕は苦々しく紅茶を飲む。