第六話
お待たせしました、第六話どうぞ!!
俺が勇者をあっさり倒してから約一時間位経過した頃だ
俺は敢えて森を出た先でアイテムボックスの整理をやっていた
勇者を倒す前に狩り続けていたゴブリンとコボルドの討伐証明や剥ぎ取った装備を全てアイテムボックスに乱雑に放り込み続けていたから結構グチャグチャになっているのでそれの整理と通りがかりや騎士やらに聞かれた場合勇者の付き人の死因やら誰か来てないかと言う質問に知らないと答える為だ…誰か通ればと言う前提だが……
ちょっと整理に手間取り(整理が下手)ながらもなんとか終えた時周囲の景色が灰色に染まっていたのだった
「なんだ……!?」
「やぁやぁ……久しぶりだねセイヤ君?」
この喋り方は……!?
そう思い真上を見上げると何故か猫耳カチューシャを頭に装着した俺をこの世界に送ってくれた管理者が浮かんでいた
なんで猫耳チョイス!?
「久しぶり……と言うか……なんで此処に?」
「勇者を倒すお仕事の労いと軽ーく説明にね」
「説明………?」
「うん、じゃあまずは勇者討伐おめでとう、ほいで次は……アレだけ勇者が弱かった理由を説明するよ」
簡単に言うならあの勇者はこちらに召喚されてまだ一年も経っておらずしかも手に入れた力を過信し鍛練も何も一切やっていなかったらしい
そりゃ弱いわな……実際現代に比べたら圧倒的な身体能力になんとなく判る剣の使い方だけで神殿騎士団と渡り合ったのが原因らしい、神殿騎士団とは神皇国にある光の神を崇める神殿で神皇国の主柱となるものでありそれ以外に存在する精霊や火、水、土、風の神は光の神よりも下であり闇の属性を持つ闇の神は異端なる邪教として広まっているそうだ
管理者曰く神なんて作ってない上存在してないから多分大精霊の事を勝手に神と崇めているんだろうねとの事だ、神って作れるのか………
「とまぁこんな感じかな……後、勇者は一人だって言ったけどアレは間違いだったよごめんね♪、それと他の勇者はあんなにあっさりはいかないから気を付けてね♪」
「いやごめんねと言われてもな……請け負ったのは俺だから構わないが……判った、精々鍛練を怠ることなくやらせてもらうよ」
物凄い良い笑顔で言われるともうどうしようもないし文句を言うのもな……感謝こそあれ不満は無いさ
と言うかこの管理者に性別があったらハーレム築けるレベルの美形スマイルだぞ
「うん、これくらいかな……あー、後二つ……君のステータスはこの世界では誰よりも伸びる、だけどある一定、そうだね……筋力を表す値で例えるなら万の値を超えると今の技術じゃ測定が出来なくなる、だから君の鑑定スキルだけが万の値を超えるステータスを確認できる…」
「判った……定期的に見るようにしよう」
「うん、良い子だね……それと迷宮には行ってね……最古の迷宮の最下層で僕からのプレゼントがあるから♪」
「……………非常に嫌な予感しかしないが近々行ってみよう……迷宮を踏破して迷宮のコアを持ち帰っても問題は?」
「無いようにしておくよ、じゃあ僕はそろそろ時間だから帰るよ、また逢おうセイヤ君♪」
そう言うと管理者は一瞬で姿を消し周囲の景色も灰色ではなく元の色を取り戻していた
多分時を止めたんだろうがあんな止め方はまず魔力が無限に近い状態でないと無理だ
時間への干渉には多大な魔力を消費しこの世界の魔法使い、特に宮廷魔導師とされる最低MP五万の魔法使いが時を一分止めるのに千人必要とされ、止めたとしても反動で魔法使い千人全てが再起不能になる禁術の一つとされているとギルドの禁書庫で読んだ記憶がある
禁書庫に入れた理由は簡単だ……俺の力を理解させる為だとテイラーに閉じ込められたんだよ
それから自分のステータスを確認しつつ王都へと向かうことにした
と言うかゴブリンの左耳が389にコボルドの右耳134とか半端だがありすぎだろ……気合い入れて狩り過ぎたか……
そう考えながら王都の城門を潜り抜け街の中に入ると何やら騒々しい
「何かあったのか………?」
取り敢えずギルドに向かってみよう
「重力負荷…全身付与五倍……!!」
自分の体に五倍の重力負荷を掛けつつロードワークがてら走っていくとしよう
そうして走る事、一時間(負荷を掛けつつゆっくり走るから)掛けて着くとギルドから人が溢れ返っておりなにやら揉めているようだ
…………非常に関わりたくないし今は鍛練を優先したいが…宿台と食費には変えられん………致し方あるまい…行くか
そう考えて俺は近くに居た熊みたいなおっさんに話し掛けてみた
「何があったんだ?」
「おう、セイヤか……実は……陛下が来てるのさ」
「……は…?」
「この国の陛下は元冒険者なんだよ、引退前のランクはSSSだ…来た理由はまだわかんねぇが……緊急事態らしいぜ?」
「緊急事態…ね………話しは中で聞けるのか?」
「いや出てくるぞ……アレが陛下だ」
出てきた男は身長二メートルを超えた筋骨粒々の体に鋭い目付きでプラチナブロンドの輝く髪を逆立たせ、ある種百獣の王とも思える雰囲気を纏ったまさに王がギルドから出てきたのだ
「アレが……この国の王か…」
テイラーと連れ立ってギルドから出てきた国王がその重い気迫によるプレッシャーで周りを騒がせないように威圧しながら重い口を開いたのだった
「集まって貰って感謝する冒険者諸君……私はグラビリアン王国国王レオ・ガ・グラビリアンだ…」
「グラビリアン王国、グラビリアン王都支部ギルド長テイラーだ………お前等に緊急の依頼だ、受けるも受けないも自由だが話しは聞いておけ」
「感謝するテイラー殿……王都より西に五キロの地点に災害迷宮が出現した、そこから魔物と魔獣共が我先にと迷宮から現れておる……バミューダ交易都市から冒険者が我が王国からは騎士団を早期に派遣し奴等の拡散を防ぐしか出来ていないのが現状である」
国王が悔しげに話し始めると周囲のざわめきが酷くなり低ランクの冒険者は顔面蒼白となりクランを組む高ランク冒険者達は装備の確認と仲間内での相談を開始している
流石と言う他無いな
「これより第二陣を王都より出撃させる、冒険者諸君の力を貸してくれ!!このまま放置すれば騎士団は壊滅し王都は奴等に蹂躙されるであろう事は明白!!我が名を賭して宣言する、迷宮の最奥まで到達しダンジョンコアの破壊に成功した者に白金貨五枚を!!到達出来なくとも駆逐に参加したものに金貨十枚の報酬を渡す事を約束しよう!!!!」
言い切った直後にざわめきが最高潮となる
それもそうだろう、白金貨五枚と言えば上手くすれば一生食うに困らない額だ
金貨十枚でも当分は依頼をこなさなくても充分過ぎるほどの報酬である、つまりそれほど事態が切迫していると言うことだ
「国王陛下からの正式な依頼だ、条件は冒険者ランクC以上、クランのランクはB以上、それ以外は危険度が高すぎるから受けることすら許さん、さぁ受注したらとっとと行け貴様等!!!!」
つまり現在冒険者ランクEの俺は受けれないと言うことになる
セイヤはそれならば仕方無いとあっさり諦め人混みに紛れながらギルドへと入り受付をやっているレイラの元に向かうのだった
「あ、セイヤさん…おかえりなさい」
「ただいま、ゴブリンとコボルドの常時依頼の精算を頼めるか?」
「はい、どれくらいありますか?」
レイラの返答を聞いたセイヤはレイラの目の前にゴブリンの耳とコボルドの耳をアイテムボックスから次々と出して山積みにしレイラが呆れたようにセイヤを見上げて居るのに気付きセイヤ自信もやはりやり過ぎたかと苦笑いを浮かべており
「狩りすぎですよセイヤさん、じゃあ茶々っと計算しますね」
常時依頼のゴブリンは依頼一回分がゴブリン五匹の左耳五個、コボルドも同じく左耳五個である
つまりゴブリン討伐依頼77回と余り四個
コボルド討伐依頼が26回と余り四個と言うことになる
話しは変わるが冒険者ランクを上げるためには自らのランクの依頼を百以上こなし腕と信頼を見込まれてランクが上がる様になる
何故百以上なのかは単純に調子に乗って己のランクより格上と戦い死ぬ冒険者が過去に多発したため格上と戦ってもランクを上げないと言う事になったそうだ
普通に考えればセイヤはランクがEからDへと上がってもおかしくないがテイラーがセイヤの実力を見るためにEランクを維持させ討伐もゴブリンやコボルド等の最弱の魔獣しか狩れなくしていたのだ
閑話休題
話しは戻るがこれによりセイヤのランク等の全権を任されているレイラからのお墨付きによりセイヤは冒険者ランクをDへと上げることになったのだ
「……やっとDか……中々掛かるがまぁのんびりやるとしよう、ありがとうレイラ」
「いえ……しかしテイラーギルド長遅いですね……もう依頼の受注終わってもおかしくないのですが……」
「さぁな……まぁ俺は取り敢えず三日は休ませて貰うよ……調薬の師匠の所に行く事にするさ」
「はい、それが良いと思います♪」
大量の銅貨を入れた袋を受け取ったセイヤは袋をアイテムボックスへと投げ込みつつ片手を上げてギルドの入り口へと向かう事にした
「どこに行こうってんだセイヤ」
「テイラーギルド長…?」
入り口を塞ぐように立ち塞がるテイラーが不機嫌そうにセイヤを睨み付けるもセイヤ自身は何か用があったかと思案顔をし
「アンタも災害迷宮に行くんだよ、何普通に精算して帰ろうとしてるんだい?」
「俺はまだランクDだ……適正ランクとは言えんぞ?」
「アンタにランクは関係ないだろ、兎に角ランクの方はアタシが、」
「まて、テイラー……第一いきなりランク上げたらそれこそ周りの上位ランクが黙っちゃ居ないだろうに……」
苦笑いを浮かべたセイヤが溜め息を吐き出しながらテイラーへと常識的な事を言うもののテイラーの視線が「お前が言うな」とばかりに更にキツくセイヤを睨み付ける視線へと変わる
「向こうに行ったところで騎士団や上位ランクの奴等に追い返されるのが見え見えだぞギルド長?」
「…確かにアンタの言う通りだ……だけどねぇ……アタシが何の手も打たずにこんな事を言うと思ったのかい?」
まるで背中にいきなり氷を入れられたかのようなゾッとする程に綺麗な笑顔を向けられ周囲の低ランク冒険者達はガクガクと膝を揺らし顔色は青く染まり尻餅を着いて壁際に逃げ受付のギルド職員等はいつ逃げ出したのか既に受付には居なくなっており
「あの…………ギルド長……?……俺、そろそろ帰りたいんですけど…………?」
「逃がしゃしないよ……その為に態々来てもらったんだからね、入ってきな」
口元を三日月のような笑みを浮かべてセイヤを見つつギルドの入り口から一歩中に入り体をずらしながらテイラー自身の背後へと声を掛けると胸はプレートメイル、下はスカートタイプの鎧を着て頭には兜と言うよりカチューシャに似た所謂戦乙女〈ヴァルキュリア〉の様な装束を身に纏った腰まで伸ばした金の髪にサファイアの様な綺麗な蒼い瞳の美少女がギルド内へと入ってきた
そしとその美少女が驚愕の言葉を発することとなる
「初めまして、サカジマ=セイヤ様……私〈ワタクシ〉グラビリアン王国第二王女兼天馬騎士団、騎士団長を勤めるソフィー・ガ・グラビリアンと申します、以後お見知りおきを…」
今回セイヤを迷宮に行かせるための苦肉の策としてテイラーとソフィー第二王女に手を組んで貰いました(笑)ついでに言うならメインヒロインはソフィー、第二ヒロイン?はレイラ君です(笑)