不思議な男の子達
ちょっとホラーぽいので、苦手な方はご注意を
必死で走ってなんとか人影が居た木々の無い少し開けた所まで来たのはいい、そして人が居たのはもっといい。
だけど、その人がおかしい
何がおかしいって、まずは瞳が見えない。まだ相手まで距離があるからかもしれないが目が本来あるべき所が真っ暗闇に見える。
それに、見た目で性別の判断は付かないけど彼もしくは彼女の着てる服が夕焼けの赤い光よりも真っ赤の裾の長い着物なんだ。
その長い裾をずる…ずっ…と引きずって歩いて行ってるのだけど、その人が歩いた跡の草や花が黒くなっていく…。
いや、おかしいよね?あれと目をこすってみたけど状況に変わりは無い。
なら、彼か彼女は実在するのだ。そして実在するなら話も通じる筈。普段なら絶対に話しかけたりなんてしないけど、もうすぐ夜が来る。山の中で夜を明かすとか冗談じゃない。
怖い、凄い怖いけどあれお化けとかじゃないよね?足あるみたいだし大丈夫。
「あの、すみません。私修学旅行でここに来たのですけど、迷ってしまって…。降りるには、どうやって行ったらいいですかね?」
思い切って声をかけてみたら、声に気づいてくれたのかこちらに振り返った。
「…ちから…ほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしい」
ちからがほしいって何?とかちょっと考えたけどそんな場合じゃない。凄い勢いで近づいてくる、嫌だ怖い。逃げなきゃって思うのに逃げるどころか膝が震えてへたり込んでしまった。
いや、来ないで誰か助けて…。せめて助けを呼びたいのに恐怖で声が出ない…。
せめて抵抗にもならないけど、目をつぶった。木々や草をかき分ける音と走る足音が聞こえる。駄目だ、見えない方が怖いかも…。
目を開けた瞬間に見えたのは、私に襲いかかろうとした赤い人の頭が落ちる瞬間と刀を持った男の子だった…。
「き、きゃーーー!」
見た瞬間思わず目を伏せたけど、いきなり誰かに肩を揺すぶられた。
「落ち着け、さっきのは人じゃない。よく見てみろもう居ない。」
人じゃないって?だったら何だというのだろうか。でも、久しぶりに聞くまともな声だ。私はその声に従った。
あれ?さっき見た頭と体がどこにも落ちてない。そういえば落ちる音も聞こえなかったし、血も出てなかった。
私の目の前に居るのは、刀を持った男の子。彼がいうには人ではないそうだけど、私に襲いかかった人を切った彼だけだ…。
私が混乱して辺りを見回していると男の子…、といっても私と同い年くらいだと思う。
ちょっと癖のある髪を生かしてハネさせてる。今時珍しい袴姿の少年がへたり込んだままの私に合わせて、屈みながら耳打ちしてきた。
「逃げろ、まだ間に合うかもしれない。急げ」
逃げろってどこへ?
そう聞こうとした時に別の声が聞こえた。
「導明、見つかったのか?」
声と共に現れたのは、導明と呼ばれた男の子よりちょっと背の低い男の子。多分彼も私と同い年ぐらいだと思う。導明君と違って顎くらいまで伸ばした髪はまっすぐで、瞳や雰囲気も冷たい印象を受ける。やっぱり時代錯誤の袴を着て刀を差している。
呼ばれた導明君は遅かったかと呟いたが、多分私にしか聞こえなかったと思う。彼は、立ち上がって私を指差して言った。
「多分な、こいつだろ?瑞巫女様」