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廃屋に潜む、闇の中  作者: 秋原かざや
第1部 本編
2/11

誰か嘘だと言って!

「なあなあ、せっかくだし心霊スポットってやつ、行ってみないか?」

 最初に言い出したのは、トールだった。

 ここは私の部屋。

 ちょっと広いからって、みんなの集合場所になってたりする。

 けれど、無下にはできなくて……。


 というのも、みんな、短大で出来た友達なんだ。

 なかなか出来なくて、孤立しそうになってたのを、ハルカが声をかけてくれた。今でもそのときのことは忘れない。

 けどね。

 ハルカはもちろん、ユキまで彼氏持ちってどうよ?

 ハルカの彼氏はトール。茶髪の見るからに軽めな男だ。ただ、これでも親が金持ちらしく、ボンボンってやつらしい。意外とちゃっかりしてるよね。

 で、ユキ。

 ショートカットの勝気なユキは、スポーツマンタイプのカズとくっついている。実はカズの一目ぼれっていうから、驚きだよね。

 おっと、脱線したかな?


「いいんじゃない? ちょっと面白そう」

 セミロングの髪を揺らしながら、ハルカが同意する。

 そういえば、ハルカの家もどちらかというと裕福だったような気がする。

「で、でも……そういうのって、危ないんじゃ……」

 反論するのは、もちろん私。

「じゃあさ、出かける前に神社で願掛けして、懐中電灯とかちゃんと買って行けばいいんじゃない? そういうのってさ、実はデマだったりするんだよね?」

 ユキがそういって、面白がってる。

 ううう、私はそういうのは苦手。

「俺もそう思う! だってさ、幽霊なんて見たことないし」

 いや、カズ君。見てないからって、これから見ないって保障はどこにもないんだよ? ねえ?

「じゃあ、多数決で決めようか!」

「………しなくてもいいよ。その代わり、ちゃんと願掛けさせてね?」


 家からお守りをこっそり持ってきた上で、神社で願掛け。

 ついでに深夜までやってるホームセンターに入って、懐中電灯をバッチリ買って来ました。電池も新しいの入れたから、これで電池がなくなるってこともない。それに私のは手回しで充電もできるから、とっても安心だ。


 トールの運転する車は、山道をずんずんと進んでいく。

 意外と道は舗装されてて、そこまですんなり行けた。

「おお、雰囲気バッチリ……」

 楽しそうにユキが言う。

「うん、それに涼しいっ♪」

 ハルカも嬉しそうだ。

 そ、そういえば……ここに来たとたん、暑苦しいのが急にヒンヤリしてきていることに気づいた。

「おっと、入る前に面白い話を教えてやるよ」

 トールが得意げに口を開いた。

「面白い話? もしかして、ここの噂とか?」

「お、カズ。いいとこ付いてるな。そう、噂というか実話?」

 そういって、カズの背中をぽんぽんと叩きながら、トールは話してくれた。


「昔さ、ここ病院だったんだよ。町一番のな。けど……何故か破産して潰れちまったんだ。……理由、教えてやろうか?」

 そのトールの言葉に、私を含めた四人がごくりと息を飲む。

「『呪い』だよ」

「の、呪い?」

 思わずハルカが言い返す。

「ここでさ、酷い医療ミスがあったらしいんだ。それで死んだやつが、夜な夜な現れて入院患者を次々と殺していくんだって」

「ひっ……」

「それにさ、病院になる前……戦時中はこの地下に防空壕があったんだってさ。この病院で働く看護婦が良く兵隊の幽霊を見てたって……」

「ふぐっ……」

 な、なんですか、その怪奇現象のオンパレードはっ!!

「まあ、そういうわけで、ここは曰くつきなんだよ。確か……この奥に社があるから、そこに花でも置いてくればいいんじゃねー? それで、今日は終わり。いいだろ?」

「さんせーっ!!」

 それでも十分、怖いです、先生っ!!

 どうせ、多数決で決めるから、私の意見なんて聞いてくれないんだろうけどさ。

 というわけで、近くにあった花を抜いて、持って行くことになった。

 奥にある社にこの花を手向ける。

 そしたら、肝試しは終わりだ。


 なのに……どうして、ここはこんなに寒いんだろう?

 ううう、パーカー着てきてよかった。


 私達はまず、玄関らしきところから入っていった。

 扉には南京錠が掛けられていたけれど、誰かが壊したらしく、すぐに開いた。

「いいね、こういうのも悪くない」

 カズが面白がってる。うう、そんなの気づかないで。

 それにしても……何だか、妙な気配を感じるのは気のせい?

「や、やっぱり帰ろうよ?」

「もう怖気づいたの、サナ? まだ入ったばかりだよ? 怖がりなのはわかってるけど、もう少し気張ってはどう?」

 そんな風にユキに言われてしまった。

「そうそう、怖いの全然出て来てないし」

 ずんずんと奥へと歩いていく。

 中は鉄筋コンクリートで出来た通路……ううん、これは廊下だ。

 窓際あたりが壊れかかってる。雨風に晒されて、壊れたって感じ。

 うう、それだけなのに、怖いと感じるのは、気のせいだろうか?

 ぞくぞくしてくるよぅ……。


「お、部屋はっけーんっ! 開けてみてもいい?」

 トールが勢い良く、その扉をあけた。

 がしゃーんっ!!

 あけたんじゃなくて、勢い良く、倒れた。

 とたんに煙が舞う。ううん、これは……砂煙?

「けほけほ、気をつけてよ。埃が凄い」

 なるほど、埃か。けほけほ。

「おいおい、落書きされてるぜ」

 カズがそういって壁にライトを当てた。


『かえれ』

『お前に用はない』

『かえれかえれかえれ』

『熱海参上!』

『11:35 帰宅』

『ねえ』

『あそぼ』

『うしろ』


 ひっ!!

 思わず、私は後ろを見る。

 誰もいない。暗いばかりの入ったばかりの道。遠くに開いた入り口が見えた。

「どうかしたの、サナ?」

「う、ううん、なんでもない……」

 こ、怖すぎる……。ううう、一番後ろがいいかと思っていたけど、もしかして、真ん中がいいかな?

 けど……カップルの邪魔をしたら、怒られそうだし……。

 私は仕方なく、彼らの後を付いていこうとして。


 ぐいっと、足に何かが絡んだ。

「へっ!? きゃああっ!!」

「ちょっと、驚かさないでよ!」

「変なところで転ばないで」

 そう声をかけられた。

 私はばっつり転んで……ああ、お気に入りのスカートが汚れてしまった。

「待って、今行く……」

 立ち上がって、みんなの後を追いかける。

 ちらりと見えた光が通路の先を曲がった。

 私も急いでそっちに向かうが……。


「あ、あれ?」

 いない。誰も……いないっ!?

 ももも、もしかして、これって……一人ぼっちになっちゃったっ!?


 柊サナ、ここに来て……心霊スポットで一人ぼっちになりました。

 ふええええ、嫌だ嫌だ!! 誰か、嘘だと言ってよっ!!

 これって、絶対、なんかフラグ立ったよ、コレっ!!


 

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