こういう設定いらないから
もう―――意味不明だ。
しかもさ、
なんかキャラも変わってません?
相変わらず喉に刀を当てたまま
見下ろされた状態で、
無意識に唾を何度も飲み込む。
ひょっとして、
さっき渡された翻訳機っぽい何かの
調子が悪く、うまく変換されてない
だけなのか?
一応、念の為に確認してみようか。
「あのー名前を言ったら死ぬって?」
「そうだ」
ダメだ。
マジでコイツ“ピ―――”だ。
所詮、“ピ―――”に何か言った
所で無駄だ。
だって相手“ピ―――”だもん!!
「……わ、分かったからソレ外せよ」
「理解したならそれでいい」
埒があかない。
兎に角コイツから離れよう。
「了解!じゃぁ、そういうことで。
俺、先を急ぐから」
奴から間を取るように離れようとした時、
「何だろう、コレ」
つられて見えた奴のその手にあるものに
俺は目をみはった。
触迦のだ!
そう言い切れるのは理由がある。
それは三日月の形をした
玉虫色の不思議な雰囲気の髪飾りで
光に当たると何とも言えない色で
乱反射するんだ、確か。
彼女の長い髪を束ねるのに使っていて
俺は毎日その後ろ姿を見ていたから
見間違えるとは思えない。
俺の聞きした限りでは
確か祖母の形見とかで手作りだと
話していたのを思い出す。
いや、言っておくが、
たまたま聞いただけだから!
まさか……
触迦も此処に来てる?
だとしたら探さなくては。
触迦もこんな得体の知れない男に捕まりでも
していたらと考えるだけでゾッとする。
「……どうした?」
顔を上げると奴は俺の事を
ジッと見ていた。
「知り合いが来てるかもしれない」
「知り合い?」
「そう、俺のクラスメートなんだ」
「そうか、じゃその子も探さないと」
見渡したその先、
少し離れた所で横になっている男を発見した。
おお!??
やっとコイツ以外の人間がいた!
立っていないのが不気味だが
もうこの際、選り好みなんかしてられない。
あの人に聞いてみよう。
「ねねね、おじさん。
起きて、話し終わったらまた寝て良いから
今だけちょっと起きて」
「うーん……」
お、反応あった。
アレ?よく見たらこの人さっきの
プラットホームのおっさんだ。
今日初めて会った人だけど
何だか猛烈な懐かしさが一気に込み上げてくる。
それはさっきまで確かにいた日常と
リンクする唯一の存在だからだった。
「おじさーん!ね!起きて!
此処何処だよ!
いい加減起きて、寝てる場合じゃないから
ね、大変な事になってんだって」
首からネームプレートが
掛かっているのを見つけた。
岩附?
汚れていた部分を拭うと下の名前が
判明した。
『岩附蹈鞴』
……読めねーよ。
あ、ローマ字打ってある。
「なになにイワツキ タタラ?」
いわくつき たたりみたいな
あーヤダヤダ。
スゲー名前をお持ちで……親なにを
思ってこんな名前付けるかな。
シュウゥゥゥゥゥ。
名前を読んだとたん倒れていた男が
一瞬にして消えてしまった。