いきなり行って言葉とか通じると思います?
誰かが俺を見下ろしている。
また……知らない顔だ。
こんな奴、学校にいたっけ?
視界がはっきりしてくるにつれ
その少年が日本人の容貌でないことが
分かった。
「¶§∮∥?∴‡≠∩」
何だ?何か言ってるのか?
音として聞こえるモノは
言葉を意味してるように思えるのだが、
日本語ではないそれを理解しようもない。
見た目、外人サンみたいだけど、
といっても英語でもないようだし、
高校生の言語能力なんてたかが知れてる。
どこかの何語かもしれなけど少なくとも
俺には聞き覚えがなかった。
「@%#%%」
……やっぱり音としか聞こえない。
そもそも何で俺はここに倒れてんだ?
…………あ!?そうだった!!
アレ?電車は?
アイツは?
……てか此処どこだよ!
周りを見渡すと明らかに駅じゃない。
ていうか、それ以前に全く見知らぬ光景が
広がっているワケだが。
辺りは薄暗く
京都?古都?を思わせるような
雰囲気を醸し出していた。
明らかに自分のいた町じゃない事だけは
断言できる。
「……」
目を何度も擦るが、依然ビジョンに
変化は訪れない。
「……………………」
ま、まぁこれは今はいい。
取り敢えず、百歩譲って
そう見えるのはきっと頭を打った
後遺症でハッキリしない為だろうと
無理やりそれ以上考えるのを放棄した。
しかし、
改めて見るとこの外人の服装もオカシイ。
冒険RPGとかそれ系ゲームとかで
出てきそうな服といった方が
しっくりくるだろうか?
まさにそっち系。
どこかのコスプレ会場からの帰りか?
着替えて帰れよな、見ててこっちが
恥ずかしいわ。
……まぁそこそこ似合ってるから
自分でも気に入ってうっかり
会場出てきちゃったんかな。
あーいるいる、そんな人。
でも、もしかしてコイツが俺を
助けてくれたとか?
でもその場合フツー病院じゃね?
身体を探るが何ともない。
しいて言えば頭が少し痛いくらいだけど。
「あ、ケータイ!」
そうだ、これ見りゃ一発じゃん。
何で気が付かねーかな、俺。
で、見るとやっぱりというか
お約束のように圏外で、
GPSも全く作動せず。
「はぁぁ~使えねー」
思いっきり溜息が出る。
「▲→¬〆」
「ん?」
何かを渡された。
そのジェスチャーから、
耳の横に付けろっていうことらしい。
俺は補聴器みたいなリングを
耳に引っ掛けた。
でもやっぱり言葉を理解できない。
そしたらソイツが耳の横のリングを触り
カチカチとダイヤルらしきものを
動かし始めた。
「……ど……分かる?」
「うぉ!聞こえた聞こえた」
俺の声が五月蝿すぎたのか
ソイツは驚いて眉を潜め、仰け反った。
「うーん。
だいたいは合ってるようだけど」
その男は今度は自分の耳のリングを
カチと合わせる動作をした。
「何?まだ言葉通じてない感じ?」
「これだから旧型は……
これでいいか。
ね、僕の言葉分かる?」
俺は不用意に大声を出さないように
今度はうんうんと頭を上下し答えた。
「キミさ、何してるの?
こんなとこで寝そべって」
好きで寝てんじゃねーよ!
他人を変人みたいな目で見るのは
ヤメロ。
コスプレ男にそんな顔される
謂れは無いわ!