どうやらお迎えが来たようなので
「以上だ。進路指導の三者面談の
日程希望明日までだからな。
忘れた奴はこっちで勝手に組むから
文句言うなよ」
ウヘ……そうだった。
別に行きたい高校もないし
というか将来何になりたいとか
全然ないしな。
冷めてるつもりはないけどさ、
夢をみるには特別秀でたモノ持ち合わせて
ない上に、顔もいたってフツーなんだよな。
最近じゃ、
フツーにリーマンになってフツーに
結婚できればそれで良い気がしてきた。
皆ゾロゾロ教室から出ていく
流れに乗り俺もカバンをひっかけて
廊下に出た。
目の端に担任と触迦が話している
光景を捉える。
(進路の事かな?)
触迦はどこに行くんだろう?
噂じゃ家は神社?だっけ?
寺だったか??って聞いたことがある。
尾ひれで、彼女は片道三時間も
かけてこの学校にきているのだとか。
……あり得ないだろ、
私立とはいってもそこまでして通うような
学校じゃない。
田舎過ぎて校区に適当な中学がないだけ
じゃないかと思ってるだけど。
まぁ所詮、そういうとこが噂っぽいよな。
ただ結構遠いって事だけは確かみたいで
誰も彼女の家を訪れたことはないらしい。
だから何やら曰く付きの家じゃないのか
とか言われてた時期もあったりしてたけど
ホント、下らない。
確かめようもない事ほど
他人は面白おかしく言うんだ。
俺は特に気にしてなかった。
だって色々あんだろ家庭の事情ってヤツ。
どうでもいいじゃん、触迦は触迦なんだしさ。
つか、人の事心配する前に
俺、取り敢えず出した志望校行けんのか?
そっちが重要だ。
もうすぐテストあるし、
あー気が重い。
毎日毎日同じことの繰り返し。
変わり映えのしない日常。
相変わらずのNO女運。
別に誰彼にもモテたい訳じゃない。
たった一人で良いんだ、
触迦さえいてくれたら……それで。
そして今日も一っ言も口をきかないまま
学校を後にする。
「はぁぁぁぁ~~~~~~~~」
本日最大の溜息を吐きつつ、
虚しくトボトボと帰路につく。
その足取りは気持ちと連動した重さで
駅の改札口を通り階段へ向かう。
(いつも思うんだが、この階段長げーよ)
あれ?
電車を待つプラットホーム。
今日はやけに人が少ない。
いつもなら学生とかで
この時間は混雑してるってのに。
しかも、俺の方のホームには
何か疲れたようなリーマンが一人、
ボーッと白線近くに立ってるだけ。
不思議なこともあるもんだと、
そう思っていた。
ていうか、落ちそうで怖いんだけど
その人……まぁ、いいか。
「お悩みですか?」
その声はいきなりだった。
「!?」
声がする方向に俺くらいか
それより下くらいの少年が立っていた。