2だってホラ色々準備あるじゃないですか
クソッ!俺だって相手さえいれば
してみてーよ!
何だって言うんだ!ぼっちを煽って
そんなに楽しいか!?……ううっ。
そういう関係になる前に
告んきゃいけないわけだが。
いやいや、無理無理。
妄想と現実はかなり解離していて
クロスオーバーする部位が
どうにもこうにも見当たらない。
頭に浮かぶのは触迦だけど
本当にそうなったら
と、思うのは健全な男子なら
誰しもが思うことだろ?
誰かに取られる前にとは思うけど
現実は難しい。
自慢じゃないが今まで告白とかしたことも
されたことも
なければ、恋人がいた試しすら無い
俺にとっては滅茶苦茶ハードルが高過ぎる。
フラれた後を考えると、怖くて
その勇気が持てないでいるとか、
どんだけヘタレだ、俺。
皆、どうやって彼女作ってんの?
まさか面と向かって「好きだ」とか
いうんじゃねーよな?
まさかだよな?あり得ないよな?
クリスマスとかバレンタインデーとか
あくまで噂だろ?都市伝説だよな?
TVとかでやってんの全部架空話だろ?
な?な?そうだろ??
ヤベ、なんかすっげー寂しくなってきた。
いや、待て。
オ、俺だって全く女と接触が
無いわけじゃねーし。
一応、触迦と話したことはあるには
あるんだ……
いつだったっけ?
……なんて、忘れるわけないじゃん。
まともに触迦と喋ったのあの時が
初めてなんだから。
『変わった曲』
『え?』
動画サイトに投稿して公開する前にと
音源確認の意味で空き教室の前で
こっそり聴いていた時
いきなり後ろから声がして、
振り返った先に彼女、
触迦がそこに立っていた。
辺りを見回したけど俺しかいない。
“俺”に話しかけているんだと
分かって心臓バクバクになったけど
そこはそれ童貞のプライドっていうか
意地っていうか
ここは平然を装わなければならない
という脳内指令に速やかに遂行する。
『不思議な歌。
初めて聞く気がするけど、
誰が歌ってるの?』
不思議な曲と称されたそれは
趣味で俺が数ヶ月かかって作った
某ボーカロイドといわれる類の歌だった。
『これは人工歌手が歌ってるだ。
曲は……俺が作ったから』
『え?楽師希君が?』
驚いた顔に俺は照れもあって
ムッとした。
『わ、悪かったな』
『ううん、凄くいい曲だと思って』
数ヶ月もかかって作った曲を
いい曲だと褒められた。
それも触迦にだ、嬉しくないはずがない。
内心俺は踊ってたね。
なんの踊りかしらねーけど、
結構ノリッノリで。
『あ、それはどうも』
なんでそれを素直に言えないかな、俺。
『もし良かったらその歌、私も
もらってもいい?』
『はぁ?別にいいけど。
その代わり誰にも聞かせたり渡したり
すんなよ、著作権俺にあるんだからな』
うん、と笑った触迦の顔が未だに
忘れられない。
本当は何処かの動画サイトにでも
投下しようと思っていたモノ。
だけど、俺の指は登録ではなく
削除を押していた。
不特定多数のヤツらと共有するより
誰も知らない二人だけの歌の方が断然良い。
現時点で、この曲は
世界で俺と触迦の唯一の共有物になった。
それは俺のささやかな幸せだ。
ハイハイ、そうそう。
男って単純で健気なんだよ、悪いか。
こうやって時々その時の
やり取りを思い出すけど、
今となったらこれすら俺の願望が生み出した
妄想だったかもしれないと思い始めている。
で、今日も結局何も言えずに、後ろ姿を
見ていただけ。