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匿名くえすと  作者: sei
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命名


え?



ええええ????



……何だ?今の?





「だから言った筈だ、真名を言うなと」








余りに驚きに声も出ず

背後のその声に振り向くとソイツは、


「そういうの良くあるから

気をつけた方が良いよ」



事も無げにそう答えやがった。



「……………………??」




えーっと、

事態が全く飲み込めない。



“そういうこと”って

どれに係っている言葉だ?



“良くあるって”



何を指してるんだよ!



にしてもコイツ驚いてないというか

こんなありえない状況で

不自然な程落ち着いてないか?



それ程よくある事とか言わないよな。

人が消えたんだぞ?



「どうかした?」



お前の頭がどうかしてるって話だよ。



「…………」



それと心なしか雰囲気と口調が元に

戻っている気がする。




「じゃ、僕行くとこあるから」



待たんか!ゴルラァッ!!



こんな状況下で一人置いてくな!!

どう見たってここフツーじゃない。

一人にしないでくれ。



「ちょちょちょ!!待って下さい、

お兄さん、お兄さんってば!!

ホラ、えーっと旅は道づれ世は情けって

いうだろ?俺も一緒に行こうかな……アハハ」



「……聞いたことが無い」



日本じゃ日常会話で

頻繁に使いますぅぅぅ!!!



もうなんだっていうんだよ。



一体此処は何処なんだ?


“リザク”?


日本じゃないって本当か?



……いや、冷静に考えてあるわけない。

じゃ、やっぱり日本の何処かだとは思うが

周りの景色がそれを否定してくる。


分らないことだらけ過ぎて

俺の脳じゃ処理能力が全くもって

追いつかない。


取り敢えず情報収集して、

それから考えるしかないか。




「お兄さん、もう一度聞いて良い?」



「裏冴宮第一形勢都市」




「…………はい?」



やっぱり聞いたこともない。



しかも公国という言葉が幸か不幸か

もう何県かとすら考える段階を

大幅に省いてくれた。



思わずソレお前の妄想での話か?と

喉元まででかかったけど今それを

口にしてコイツと揉めた所で

何の利もない。



「今や……俗名として

“亡闇公国”とも言われてるけど」



仰々しい服装の後ろ姿を

凝視すること暫し。


不審人物である事は変わりないし

得体も知れない。



が――



それでも取り敢えず他に人がいない以上

状況がハッキリするまでは

緊急避難措置として不本意だとしても

コイツを頼らざる得ない。



「へぇ、そうなんだ」



それもこれも触迦の事を見つけるまではだ。



スタスタ前を歩くコイツの

興味を引くべく必死に

俺はこれまでの経緯を話した。


ふんふんと聞いているような

いないようなそんな生返事と態度に

我慢しながら……



チッ、聞いてんのか?コイツ。




それにしてもやっぱりさっきの事が

気に掛かる。



「さっきのおじさんさ、どうなった訳?」



「知ってどうする?」



「どうするって……

いやいや、だって気になるだろ?

目の前でひと一人消えたんだぜ?」



「だから?」



「!?」


それが何か?と言わんばかりの

言い方と表情に続く言葉を失った。



銀色の長髪が風になびいて

騎士なのか何なのか良く分からない

白い軍服のような格好に白いマントを

たなびかせる男とアホの子みたいに

口を開けて見つめ合ってる

この様相をどう例えたものか。




「この世界には同じ名を持つ者はいない。

いればすぐに弾かれてしまう」



死にたくなければ、本当の名前を

名乗らないことだよ、そうすれば

あの男の二の舞にはならずに済む

とそれだけそう付け加えた。







「…………」





出た……




出た出た出ましたよ!

聞きましか?今の言葉。


名前名乗ったくらいで死ぬとか

もうマジ勘弁してくれ。

良いよ、その設定いらないから。



「名前を言ったから消えた?」


どうしても認めたくなくて

さっきから口にしなかった言葉を

意を決して言ったのに奴ときたら

呆れ顔で溜息なんかを付きやがる。



「キミ、そこそこ頭悪いんだね。

さっきもそう言ったと思うけど?


名前を聞かれても答える必要は無いよ。

尤もこの世界で聞く輩もいないだろうけど」



頭悪くてスミマセンね、

そうそう出来ない体験なもので。


ホント相変わらず意味不明なことを言う。

もうその話まだ続くの?

どこで聞いたような聞かないような

ゲームとかにありがちの心折フラグ設計

マジいらないから。



「了解、要は言わなきゃ良い、

そんでOKなんだろ?」



「そうだね」



こうなった以上成り行きに任せるしか

ないだろうと腹をくくった。


暫くその妄想に付き合うよ。



「……なぁ、名前とかなんか無いと

スゲーやりにくいんだけど。

その真名をやらを口にしなきゃいいんだろ?」


「そうだね」


「じゃあさ、俺適当にアンタを呼んでいい?」



「構わないよ」



「マジ!?」



なんてつけよーかな、初めて

ワクワクしてきたんだけど。


……た、太郎?田吾作?

いやもっとインパクトが

ある名前が欲しい。


別に人間の名前でなくても良いじゃん。

どうせ、異人さんだし。

何てつけても分かんないだろうからな。


「じゃ、じゃあさ。ポチってのは?」


「……僕の名前?」


奴は俺の顔をマジマジと見返し

不思議そうに言い返してきた。


やっぱ、流石にやり過ぎか?


「嫌なら……てかヤだよな、ごめ……」



「分かった」



へ?マジか!?


こんなイケメンを“ポチ”とか

面白しれぇぇ。


「じゃ、ぽ、ポチ行こうぜ」



思わず、“お手”って言いそうに

なるのを必死に耐えながら俺は

新生ポチと散歩、もとい連れ立って

触迦探しに行くことにした。



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