帰省
帰ると雪子がまだ起きていた。
「早かったわね、てっきり泊まってくるんじゃないかと思った。」
雪子は嬉しそうに言葉を続けた。
「旭川にはいつ発つの?」
「30日の朝帰るよ」
「そう、気をつけてね。」
「うん有り難う」
シャワーを浴びて床についた。
帰省当日の朝を迎えた。時計をにると6時である。
下に降りていくと、
「あら竜ちゃん早いわね。美佐子さんに宜しくお伝えくださいな。」
朝食を取り終えると、雪子が降りてきて、
「おはよう。いきいきしているお兄ちゃんみるのひさしぶりだわ。」
竜太郎は手荷物一つで羽田に向かった。空港は帰省客でごったがえしていた。搭乗手続きを終えると札幌行きの飛行機に乗り込んだ。9ヶ月ぶりの故郷である、嬉しくないはずはなかった。機内ではずっと本を読んでいた。あっという間に飛行機は千歳空港に到着した。北の大地に降り立った竜太郎は何ともいえぬ安心感に包まれた。旭川行きの特急列車に乗る前に、しばらくぶりにタバコに火をつけた。2,3回ふかすとすぐにタバコを消して、ホームに滑り込んできた列車にのりこんだ。竜太郎はずっと雪景色を眺めていた。いくら見ても飽きなかった。旭川に到着すると乗り換えて一路故郷を目指した。玲子と学校の行き帰りに乗った列車である。ふと横を見ると玲子、竜太郎の相合傘の落書きが目に留まった。自然と笑みがこぼれた。時間が止まっているようだった。
列車から降りると冷たい空気を胸いっぱい吸い込み、はりつめた空気が竜太郎を包み込んだ。するときつねがこっちを見ていた。「ただいま」と言うと狐は走り去った。『お出迎えありがとう」
やっぱり北海道はいいと心から思った。」
実家に着くと、インターフォンを鳴らした。美佐子がすぐに出てきた。
「貴方の家なんだからそんなことしなくてもいいのに。お帰り、元気そうでなによりだわ。お風呂入んなさい。ゆっくり温まるといいいわ」
久が帰ってきたらしい、美佐子とやりあっている。(ちっとも変わってないや)笑みがこぼれた。
風呂から上がると久は待ちわびていた。
「竜、一回り大きくなったな。」
グラスにビールを注いだ。
「私もいただこうかしら。」
美佐子がお酒を飲むのを見たのは初めてだった。
夜も更け、竜太郎はベランダに出て玲子を思った。部屋には二人で写した写真があった。(玲子、幸せになれよ)と心の中で呟いた。