クリスマスプレゼント
翌朝文子が
『竜太郎さん、お正月はどうなさるの?」
『休み明けにすぐ試験があるのでここに居ていいでしょうか?」
『自分の家だと思ってっていつもいってるでしょう。」
両親のことが頭に浮かんだ。」
もうすぐクリスマスである。渋谷で佳恵と雪子と文子にプレゼントを買った。佳恵には銀のネックレス雪子にはペンダント文子にはブローチを買った。佳恵がこんな安物を気に入ってくれるか心配だった。冬の北風が身にしみた。東京の冬なんてと軽くみていたが、意外と寒かった。
帰ると美佐子から荷物が届いていた。冬物の衣類だった。
「竜太郎、帰りたくなったらかえってきていいのよ。お父さんも口にはださないけど寂しそうだわ、風邪ひかないようにね。」
竜太郎は涙が出そうになるのを必死でこらえて服や下着」を丁寧にしまった。畳には涙が落ちていた。
クリスマスの日プレゼントを雪子と文子に渡した。
「かわいいペンダントだわ。ありがとうお兄ちゃん」
「有り難う、実は私もプレゼントがあるの。」
と手渡された。見ると東京と札幌の往復航空券だった。
「おばさん」
といったきり言葉がでてこなかった。震える手でチケットを握りしめ、しばらく押し黙っていた。寒さと行きがもう感じ取ることが出来た。沈黙を破るように電話が鳴った。佳恵からだった。
「なんだお前か」
「なによその言い方傷ついたわ。ところで今夜のデートまさか忘れたとは言わせないわよ。」
「うん判ってるよ。」
「ほっとしたわ。後でね」
「お兄ちゃん今夜はデート?」
とうらめしそうに言った。
「うん」
雪子は悲しそうに下を向いた。」
逃げるように家を飛び出した。竜太郎は10分前に待ちあわせ場所に着いた。佳恵は30分ほど遅れてきた。
「ごめんなさい。パパに送ってもらったんだけど、渋滞が酷くて」
二人は映画をみた。佳恵は大声を出してしがみついてきた。泣いたりわめいたりして、映画にのめりこんでいた。
その後レストランに行った。佳恵の父の紹介である。
「支払いはパパがしてくれるから、なんでも好きなものを食べていいって。」
竜太郎は少し腹がたったが、今夜はご好意に甘えようと思った。ギャルソンが来てワインリストを持ってきた。メニューはイタリア語だった。竜太郎指を刺して
「これって白ですよね。」
「最高級のワインです。」
ワインのことはよく分からなかったが、佳恵の父のお金でこんな高価なワインを頼んだのを後悔した。
『佳恵はここのお店、法外な請求することはないのよ。だから安心して」
竜太郎は鞄からプレゼントを取り出して、佳恵に渡した。
「開けていい?」
竜太郎は無言でうなずいた。
「まあ素敵、私こうゆうのほしかったのよ」
佳恵が素直に喜んでくれてほっとした。佳恵もプレゼントを渡した。なかを見ると万年筆だった。
「凄い、有り難う。」
ワインが来て二人は乾杯した。
「お父さんが貴方に会いたいと言ってるわ。パパも忙しい人だけれどもどうしても会いたいって。貴方パパの商社にきょうみある?」
「就職くらい自分で見つけるよ」
竜太郎はワインを飲み干すと
「またつぶれないでね。でもそのときは介抱してあげる。」
佳恵はくすっと笑った。