秋風たいよう
比喩を多用しました。
秋の暑い日、わたしは空を眺めていた。
青く無限に広がっているのではないかと思わせる晴天の下、わたしは陽炎が這うグラウンドの真ん中でボーッと上を、雲一つない秋晴れの空を眺めていた。周りでギャーギャー喚く生徒たちを全く無視して。
ただただ空を見つめ、そしてさんさんと照りつける太陽に心の中で毒を吐き、全く姿を現さない雲に対して憤慨していた。
(太陽め。ちょっとは時と場合を考えてよね。何で今日みたいな日に馬鹿みたいに照りつけるのよ)
わたしは、今日の太陽を擬人化してみよう、なんて言われたら、十中八苦どんな人も健康的に焼けた黒い肌をもったボディービルダーが大きなサングラスをして、やけにハイテンションに笑っている姿を想像すると思う。それはまるで海外のテレビショッピングでダイエット補助マシーンの実演シーンに出てくる、やけにテカった筋肉馬鹿のような姿に違いない。
(くそー、暑い。暑い! このままじゃ干からびる。それか溶ける! もー、何でこういう時に雲が出ないのかなぁ)
全くもって、昨日みたいに空一面に雲が覆い被さっているくらいがよかったのに。どうしてこう、うまい具合に晴れてくれるのだろうか。
(わたしの願いより、みんなの願いの方が圧倒的に多かったからかなぁ)
分かってはいた。全校生徒の大部分が晴天を望んでいることも。天気予報が、今日は真夏に戻ったような暑さになるでしょう、と言っていたからこうなるであろうとことも。全部が全部今日は晴れることを予感させていた。
しかし、だ。それでもわたしは納得できない。したくない。
どうして雲が出てくれないのか。何も特大の雲を欲しがっている訳じゃないのだ。少しでいい。太陽を覆い隠すくらいで良いのだ。ただ少し、そんな小さなことを願っているだけなのに、どうして聞き入ってくれないのだろう。
(神様は不公平だ)
思わずそう言いたくなる。
だが、さっきから頭の中を巡りに巡っているこの思いは、考えてみれば至極仕方のないことだ。いや、考えるまでもない。晴れている時は晴れているのだし、雲一つない時は、当然雲一つないのだから。自然の摂理と言うか、普遍の結果と言うか。そんなものに愚痴を言っても余計にこの暑さを強調するだけだし、何も変わりはしないのだから。
……けれど、どうして雲が一つ。たった一つで良いから太陽を隠してくれないのか。思考は同じ道順を踏むばかりで全く進展がない。
突然、周りで騒いでいた生徒たちがここぞとばかりに、声を一段と大きくした。わたしは声に反応してその理由に目を向ける。トラックの直線で黄団のランナーが今までトップだった赤団のランナーを追い越していた。また、そのすぐ後ろを青団が猛追してきている。今日最高のデッドヒートが繰り広げられていた。
(……そりゃ、興奮もするよね)
少し驚き、多少呆れて、わたしは得点版を見た。
赤団、108点。黄団、99点。青団、100点……。
そう、今日は我が校の体育祭が盛大に行われているのである。普段勉強に切迫され続けている生徒たちの勢いは並大抵のものではなく、その熱波はまるで数km先から一心不乱にこちらを目指して駆けてくる羊の大群が、小さな点から徐々に視界を覆い隠すほど左右に広がっていくように、数ヶ月前から静かに、しかし着実にヒートアップしていた。
(でも、正直どうでもいいけどなぁ)
しかしながら、中にはわたしのように乗りの悪い輩もいるわけで……。
楽をしたいと思ったわたしは、体育祭実行委員会なる裏方に回ることにした。裏方なら選手のように走り回ることも、応援に大声を出すこともないと思っていたのだ。
ところが、これが大ハズレ。とても大変な仕事だった。当日までの機材の準備はもちろんのこと、競技を考えたり、競技説明会を開いたり。また、当日は当日で審判やら機材の設置やらでもう大忙し。選手と違って華やかな活躍がない分、精神的疲労も否めない。
(こんなことなら我慢して普通に体育祭に出るんだった……)
後悔しうつむくわたし。夏休みから引きずってきたような暑い日差しを受け、更にナーバスになる。
そんな時ピストルの音が響いた。わたしは顔を上げる。どうやら一着は最後の最後に巻き返しに成功した青団らしい。黄団は善戦したが力尽きて三着。赤団は二着となった。
わたしはのそのそとした駆け足で、走り終わった選手たちが待つトラック中央に向かう。今日十二回目のジャッジのために。
「只今の競技の結果を発表します。一位、青団」
分かりきっていることを平坦な口調で伝えるアナウンスに合わせて、読み上げられた団と同じ色の旗を上げるわたし。喜びの声が、善戦への拍手が旗を上げる度に繰り返される。
(つまんないなぁ)
今更ながらのことを、本当に今更感じるわたしだった。
途中結果。
赤団、132点。黄団、106点。青団、131点。
わたしが実行委員会に入った理由。実は楽そうだったからだけではなかったりする。
審判の仕事も一段落し、太陽光線の突攻から逃げ出すように戻ってきた本部テントの中。日向に比べたら山奥の湧き水が湧き出ている場所と同じくらいに過ごしやすく感じる。
そんなテントの中、わたしは小さな小さなかがり火に新しく薪をくべてしまったらしい。
「おい、ハル。お前競技中になに空なんか見てたんだ」
怒った口調でわたしに問い詰めてきたのは、体育祭実行委員長、戸田恵吾センパイ。甘いマスクと爽やかな風貌。長身に締まった躰。普段は優しく落ち着いているが、時折見せる熱血漢なところもあって女子から大人気の人だ。どうして団長とかをやらなかったのだろう。この仕事よりも女子に囲われることが出来たであろうに。
戸田センパイを見ていると、どうしてもそう思ってしまう。あまりにももったいない。わたしだってセンパイが選手として走るところを見たかった。
……しかし、わたしはセンパイが実行委員長という役柄に居座ってくれて正直感謝している。ただでさえ多いライバル。センパイに近寄るだけで叩かれる陰口。そういったものも実行委員だからという理由ならば少しは収まる。それに、この仕事ならセンパイに印象付けることも可能! 何とかしてライバルたちの群れから一歩先に抜きん出なくては。
つまり、その、わたしは彼が好きなのだ。入学当初、生物実験室がどこにあるか分からず右往左往していたわたしに優しく声をかけて、案内してくれた人。それが戸田センパイだった。それはそれはもう運命の出会いと言って良かった。高校生になってから初めて話した男子、しかもかっこよかったから仕方ないと思う。
それからわたしは、少しでもセンパイに近づこうと色々なことをやった。センパイは何て名前か。所属する部活は何か。得意な教科は何なのか。好きな食べ物は。
全部自分で調べたし、センパイに尋ねた。
そんなに得意でもなかったバレー部にも、センパイがいるから入った。センパイに会いたかったから一度も休まず頑張ってたら、結構上手くなってレギュラーになれた。メールのアドレスも思いきって聞いたし、携帯へも、バレーを上手くなるには、って名目で電話したこともある。
どれもこれも緊張で胸が張り裂けそうになったり、自分がした選択に後悔したこともあったけど、得た満足感、幸福感はそれ相応以上のものばかりだった。
だから、そんなわたしだからこそ、今回も少しでもセンパイの近くにいたいと思ってこの実行委員会に立候補したのだ。
「ハル、聞いてるのか?」
「……あ、はいっ! 聞いて……ませんでした……」
「はぁ……。お前、時々違う世界に飛んでってるだろ?」
「す、すみません……」
痛い。苦しい。胸の奥。どこか深いところを掴み上げられて、握り締められているようだ。
確に少し反省してる。判定まで何もすることがないからといって競技中によそ見をしていたことというのは実行委員会として、審判と言う名目の仕事に就いている以上やってはならないことだった。
でも、そんなことはこの際どうでもいい。それ以上にわたしを苦しくさせることが目の前にあった。
(恵吾センパイが呆れ果てている……!)
これは忌々しき事態だ。このままでは恵吾センパイの中でわたしに対するチェック項目、使えない女、にレ点が記されてしまう。何とか弁明の言葉を探さないと。
言い訳を探そうとするわたしと頭を押さえて目を瞑るセンパイ。
傍目から見たら、叱る先輩と押し黙る後輩という気まずい沈黙が漂う空間に見えることだろう。でも、わたしは違った。
言い訳に四苦八苦しながらも、センパイを見てたら、不思議と審判の失態なんて消えていってしまいそうになる。挫いて熱く腫れ上がった患部に湿布を張ると痛みが和らぐように、揺らいだ気持ちが一点に落ち着く。
(本当に不思議な人)
わたしが先輩に惹かれた理由。ただカッコイイってだけじゃないんだ。わたし、センパイがいるところに一緒にいるだけでなんだか落ち着くことが出来る。センパイが頑張る姿を見ると、わたしも何かを乗り越えることが出来るような気がしてくる。
センパイの笑顔や声。わたしの一番の栄養剤なんだよ。知ってる? センパイ。
きっとこの人は知らない。この人はそういったことには疎いから。今まで付き合ったことないんだって。不思議な人。もうわたしにとってなくてはならない人になっちゃったよ……。
わおっ! わたしったら、いったい何を考えていたのだろう。妄想少女か!
なんか虚しいな、それ。
「「はぁ……」」
ついうっかり溜め息が出てしまった。でもちょっと大きく聞こえたのはどうしてだろう。まあいいか。そんなことより、今は何とか言葉を見つけないと。わたしはこのままでも良いけど、センパイは分からない。このままこの空気が流れたら、センパイとの交流がしづらくなってしまうかもしれない。
そこでわたしは必死になって考えた。
なぜ空を見ていたか。綺麗だったから。いや、違う違う。そんなことを聞きたいんじゃない。未確認飛行物体がいたから。……あほか。違うって。そんなことじゃなくて、もっとこう、理論的って言うか、その何て言うか……。
思考の迷路に入ってしまったわたしは、ただただ焦るばかりで何の整理も出来ないまま、でもこの沈黙を破りたくて、ついにはこんな芸術的に的外れなスットンキョウな返事を返してしまった。
「センパイって好きな人、いるんですか?」
しばしの沈黙。先ほどとは違って、思考のない真っ白な沈黙。
その中でわたしは言ってからすぐにセンパイから顔を背けた。恥ずかしすぎて顔から火が出そうだ。そして同時に自分のアホさ加減を呪った。なぜに今そんなことを聞いてしまったのか。今は先の失態を謝るべきであろうに。
羞恥の気持ちは時間と共に薄れていくものだけれど、逆に後悔の念は増していくばかり。
ああ、失敗した。もうこれでわたしはアホ女決定だ……。わたしの中で負の連鎖はどんどん加速する。
がっくりとうなだれるわたし。もし出来るなら、あの時に戻ってわたしの口を押さえてやりたい。頭を殴って昏睡状態にしてもいい。
でも、そんなことは夢物語以外のなにものでもない。今は今でただ時間が流れていくだけなのだから。
そんな時間が流れている今。わたしは顔を恐る恐るあげてセンパイの顔を見る。
センパイはまっすぐにわたしを見つめていた。きっとわたしがうつむいていた間もずっと見つめていたのであろう。呆れなど微塵もなく、静かな怒りだけが瞳に宿っている。 わたしは自分の踏んだ地雷の大きさに呆れるのを超えて感動すら覚えた。どんな規模の爆風がセンパイの中に渦巻いているのだろうか。とにかく分かったこと。それは一つ。センパイはマジで怒っている。
「ハル、お前はふざけてこの体育祭に臨んでいるのか」
今まで聞いたことのない、重く響く声。わたしの芯にズシリと響く。わたしの軽率な言葉は彼に埋めてあった地雷、それも特別大きいものを不用意に踏んでしまったらしい。
「答えろハル。お前は人が真剣に競い合っているこの体育祭にどんな気持ちで臨んでいるんだ」
センパイが本気で怒っている。他の誰かにじゃない。紛れもなく自分に。その事実がとても衝撃的で、怖くて、悲しくて。出来ることなら今すぐにここから逃げ出したかった。逃げ出してセンパイのいない場所まで逃げ込んで思いっきり耳を塞ぎたかった。
でもそんなことは出来ない。したくない。どれだけセンパイに呆れられても、怒られてもいい。でも、今センパイから逃げ出すことはわたしがわたしから逃げ出すことだから。だから、そんなことだけは絶対にしたくなかった。
わたしは今のわたしが好きなんだ。英語が得意で数学が出来ないわたしも。上手くないのにバレーを続けてレギュラーになれたわたしも。生のニンジンなら食べられるけど、煮たニンジンは食べられないわたしも。
センパイのことが好きなわたしも。
そんなわたし、全部ひっくるめてわたしだから。今逃げ出すことはわたしを否定することだから。絶対に逃げない。わたしがいるからセンパイを好きになることが出来るのだから。だからわたしには答える義務がある。
わたしが黙っている間、嫌な空気がテントの中を包んでいた。あっ、そういえばテントの中には他にも人がいるわけで……。その、何て言うか、居た堪れない空気にしてごめんなさい……。でも、もう少しだけ待ってください。わたしの考えていること。それをセンパイに伝えるあとちょっとだけ。
「……正直、わたしは体育祭が好きじゃありません」
話し始めた第一声に、センパイは眉をひそめた。
「暑いし、疲れるし、日焼けもするし、絶対誰かが悲しむことになる。そんな行事好きになれるわけないんです。でも、わたしは今この実行委員会の委員としてこの体育祭に関わっています。それに、わたし以外の人たち、戸田センパイやそれぞれの団の人たち、他の実行委員から先生まで、真剣に体育祭に取り組んでいる人たちがいる。熱意を持って動いている人たちがいる。それなのにわたしは真剣に向かわなかった。それは熱意のある人たちを馬鹿にする行動だったと思います。すみませんでした」
そこまで言ってわたしは頭を下げた。深く心からの反省を込めて。そしてもとに戻ってからまた話し始める。
「でも、これだけは言わしてください。わたしは彼らを馬鹿にしようと思ってそんなことをしたんじゃありません。そんなこと思うはずがありません。確かにわたしはわたしが嫌いな行事に本気で取り組んでいる人たちを理解することは出来ません。応援練習に精を出さねばならない理由もよく分かりません。でも、彼らは本気で取り組んでいます。熱意を持ってやりとげようとしています。そんな彼らを馬鹿にするなんて出来ません。だって馬鹿にすることは……」
わたしを馬鹿にすることだから。
「……とにかく、わたしは彼らのことを尊敬してるんです」
それがわたしとセンパイを繋ぐ最後で最初の架け橋だから。
センパイは小難しい顔をしてわたしの話を聞いていた。いったいその表情の下で何を考えているんだろうか。わたしには未来永劫わかんないんだろうな。
「そう思うのか……」
ポツリと呟いたセンパイ。難しそうな顔はそのまま、わたしに背を向けた。
「もういいよ、ハル。少し休んでな。疲れてるだろ」
「!?」
諭すように告げられたその言葉。その裏に隠されているであろうことは、わたしには厳しすぎて。センパイが思っているであろう、わたしへの感情に心は潰されてしまいそうで。
「センパイ! わたし、しっかりやりますから!」
「いいから、休んでなって」
「でも……」
食い下がるわたしにセンパイはこう言った。
「ハルには午後からも頑張ってもらわないといけないから。今のうちに休んでもらわないと、しっかり働いてもらえそうにないし」
……へっ?
なに? なになに? 戦力外通告じゃなかったわけ?
わたしは今きっと写真に納めておきたいくらいに、いい具合に呆けた表情をしている。そんなこと分かってるけど、分かるけどよく分からない。センパイは何を考えているんだろう。
わたしが不思議に思っていることを肌で感じ取ったのであろう。センパイは恥ずかしそうに鼻を掻くとわたしに向き直った。
「ハルって、案外いろいろ考えてんだな。それにいろいろ見えてる。俺はそういうの出来ないからな。一つのことに突っ走っちゃうんだよ。でも、だからハルの態度が気に入らなかった。俺は一生懸命やってて、他の奴らも一生懸命やってて。でもお前は呆けてて……。ムカッてきちゃったんだ。でもハルは考えてた。表面上はそんな風には見えないけど、しっかり考えてた。変な誤解してたみたいだ」
そう言って
「何か、悪かったな」
って歯を剥き出しにして笑うセンパイは、いつもと違って深く見えた。
いつものセンパイが静かに流れる小川だとしたら、今のセンパイはもっと大きな湖が当てはまるだろう。
こっちのセンパイの方が本当のセンパイなのかもしれない。ふとそう思った。優しくて爽やかで人気者のセンパイは、誰でも気軽に足を浸せる綺麗な小川みたいだけど、ほんとのセンパイはもっと広くて大きくて。泳ぎの上手い人じゃないと入ることが出来ない、そんな湖なんだ。直感だけど、たぶん当たってる。
そしてどうしてセンパイに居心地の良さを感じるのかも分かった。
センパイは猪突猛進タイプなんだ。どんなこともまずやってみる。成功しても失敗しても、やって得たことを自分自身の糧にする。そうしていろいろなことに手を出して大きな自分を作り上げていく。それがセンパイ。
対してわたしは何事にもまず考える。考えて得たこと、成功しても得たものだけで自分自身を育むから小さくて深い湖になる。
今、気が付いた。センパイとわたしは正反対だ。正反対だから、わたしはセンパイが好きなのかも。
惹かれ合うS極とN極……。なんちゃって。
センパイはわたしをどう思ってるのだろう。知ることがはとても難しいけれど、どうしても知りたいや。わたしはセンパイのなんなんだろう。
立ったまま考えていたわたし。そういえば、なんだかんだで一件落着じゃない。センパイももう怒ってない。
……でも、ちょっとだけ納得のいかないわたし。そりゃ、仕事を休めるのは嬉しいし、センパイのことを少し知ることが出来たのはハッピーだけどさ、なんだかいやだ。センパイに気をつかってもらうことがどうしても気に食わない。
わたしはあなたのために働きたいのに。
そんな大仰なことを言うつもりはないけど、それに近い気持ちはあるんだからね。
「ああ、それから、さっきの質問ね」
再びわたしに背を向けてセンパイは話す。さっきの質問? 確かわたしとんでもないことを聞いたような。
「今はまだいないよ。俺はお目が高いから。本当に気に入った娘としか付き合わないんだ。と言うか付き合ったこともないし」
世界が変わった気がした。急に視界が明るくなった。さっきまでセンパイにいわれた言葉にうじうじ悩んで、何か難しく自分を表現したのが嘘のよう。
えっ? なになに? それじゃ、わたしにもチャンスはあるってこと? マジで!?
「じゃあじゃあ、わたし立候補していいですか? 恵吾センパイの彼女第一号に」
にわかに興奮し出したわたし。でもセンパイは拒否することなく、
「まあ考えとくわ」
って言ってくれた。
オッシャー!! 何かわたしって超ラッキーだ!
センパイの言葉で一喜一憂してしまうわたしはとてつもなくお馬鹿なんだろうけど、こういう馬鹿なら進んでなりたいなって、そう思えるようになった。
秋の空に輝く太陽。通り抜ける秋風は優しく肌を撫でている。そんなある日が特別になった。




