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私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第2章:復讐は黄金の焼き加減で――腐敗した王国を焼き尽くす断罪のフルコース

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第24話:「彼女を渡せ」……隣国の英雄、不遜なる求愛

「……信仰を捨てた、と言いましたの?」


 静まり返った議事堂の広間。

 私は、ゼフィロス様の腕に抱かれたまま、目の前に跪くアルフレッド様をじっと見つめました。

 白銀の鎧を脱ぎ捨て、黒い礼装に身を包んだ彼は、かつての「正義の味方」としての光を失った代わりに、ぞっとするほど艶やかな、狂気を孕んだ美しさを湛えていました。


「そうです、エリアナ様。……神は飢える民を救わず、貴女をこの怪物に委ねた。ならば、私はもう神など信じない。……私の剣は、ただ貴女をこの暗い檻から救い出すために振るわれる」


 アルフレッド様が、私のドレスの裾を掴もうと手を伸ばしました。

 その瞬間、私の腰を抱くゼフィロス様の腕に、ミシリと骨が鳴るほどの力がこもりました。


「……私の前で、よくも吠えたものだ。聖騎士。……その舌を、今すぐ氷漬けにしてやろうか」


 ゼフィロス様から溢れ出す、漆黒の魔力。

 広間の温度は瞬時に氷点下まで下がり、周囲の王族たちはその圧倒的なプレッシャーに息を詰まらせています。

 けれど、アルフレッド様は怯みませんでした。彼は紅い瞳を燃やし、私だけを見つめ続けています。


「エリアナ様。……私の国『聖教国』へいらしてください。あそこは清らかな水と、一年中枯れない花に満ちている。……貴女に火の粉を浴びせる呪いも、貴女を縛り付ける血の臭いもない。……貴女を『神の化身』として、世界で最も尊い席に座らせて差し上げましょう」


 まあ。……なんて清らかで、なんて……「不味そうな」お誘いかしら。


「アルフレッド様。……おーっほっほっほ! 貴方は、本当に何も分かっていらっしゃいませんのね」


 私が扇を広げて笑うと、アルフレッド様の表情が凍りつきました。

 私はゼフィロス様の右手に、自分の手をそっと重ねました。

 彼の指先は、今も私への独占欲で熱く脈動し、私をこの場所から一歩も逃がさないという激しい執着を伝えてきます。


「清らかな水? 枯れない花? ……そんなもの、私の木ベラで一振りすれば、どこにでも創り出せますわ。……私を、そんな退屈な場所へ閉じ込めるおつもり?」


「た、退屈……ですって?」


「ええ。……私が求めているのは、神の座などではありません。……私の料理で、この呪われた陛下の喉を潤し、彼の孤独な世界に、私にしか創れない『彩り』を添えること。……その『苦み』も『熱さ』も、貴方の用意する甘いだけの楽園には、欠片も存在しないのでしょう?」


 私はゼフィロス様の胸に、わざとらしく身を預けました。

 陛下の右手が、満足げに私の腰をなで、そのまま首筋へと這い上がってきます。

 逃がさない。壊したい。愛おしい。

 そんな重すぎる愛の重力が、私の魂を心地よく縛り付けているのです。


「……聞こえたか、アルフレッド。……エリアナはお前の『光』など求めていない。……私という『闇』の中でこそ、彼女は誰よりも輝くのだ」


 ゼフィロス様が、私の唇を塞ぐように深く、独占的な口づけを落としました。

 王族たちの前で、見せつけるような、絶対的な所有の宣言。

 アルフレッド様の顔が、屈辱と激しい嫉妬で歪みました。


「……くっ、……認めない。……まだ、認めんぞ……! 陛下、貴方は彼女を力で縛っているだけだ! 彼女がいつか、その呪いに焼き尽くされるのを見て、後悔するがいい!」


 アルフレッド様が立ち上がり、拳を握りしめたその時――。


「報告!! 緊急事態にございます!!」


 広間の扉が乱暴に開かれ、伝令の兵が転がり込んできました。

 その顔は死人のように青白く、手足はガタガタと震えています。


「……何事だ。今は取り込んでいると言ったはずだ」

 ゼフィロス様の冷徹な声が響きますが、伝令の叫びはそれを上回る恐怖を帯びていました。


「連合国の一角、フォレスト公国が……っ、たった今、全土を『黒い森』に飲み込まれ、沈黙いたしました!! 王国の撒いた『黒い種』が、地下水脈を通じて大陸の心臓部に到達した模様です!!」


「なんですって……!?」


 私は思わず、腰の木ベラに手をやりました。

 ガタガタと、木ベラが警告を鳴らしています。

 それは今まで私たちが相手にしてきた「不作」や「瘴気」とは次元の違う、世界そのものを喰らい尽くそうとする巨大な『悪意』の鼓動。


「……ジュリアン殿下。ついに、最後の晩餐のテーブルをひっくり返しにかかりましたわね」


 私の呟きに、広間の王たちがパニックに陥り始めました。

 愛の強奪戦に興じている時間は、もう一秒も残されていなかったのです。

 大陸中が泥沼に沈むか、それとも、私の『祝福』が世界の理を書き換えるか。

 運命の審判が、ついに下されようとしていたのでした。

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございますわ!


アルフレッド様の「清らかな楽園」を、「退屈ですわ」と一蹴するエリアナ様……!

おーっほっほっほ! かっこよすぎて、わたくしまで痺れてしまいましたわ!

陛下の独占欲たっぷりな口づけも……ああ、もう、広間の全員が当てられっぱなしですわね!


でも、ついに王国が世界を道連れにし始めました。

一国が沈黙するほどの『黒い種』の暴走。

これ、もう料理のレベルを超えて、世界救済のフルコースが必要な状況ですわ!


次回、第25話。

「ゼフィロスの宣戦布告『彼女の一滴すら、他国には渡さぬ』」。

世界が滅びに向かう中、陛下が下す「最強のわがまま」とは!?

エリアナ様の木ベラが、ついに伝説の『神のレシピ』を解禁する予感……。


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、二人の絆を応援してくださいませね!

あなたの応援が、世界の飢えを救う一番のスパイスになるのですから!

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