表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の料理を泥と捨てた王国、飢え死に寸前で戻れと言われても遅いです ~帝国の料理番になった私は、冷徹な皇帝陛下に胃袋を掴めと命じられました~  作者: 花菱 結愛
第1章:泥を啜らされた令嬢、極寒の帝国で至高のスープを振る舞う

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/30

第13話:泥の令嬢、宝石の女帝へ

「……これが、私ですの?」


 離宮の最高階にある、鏡の間。

 三面鏡の向こう側に立っていたのは、見覚えのある、けれど全く知らない一人の女性でした。


 纏っているのは、帝国の最高級の絹を、夜の海のように深い紺青に染め上げたドレス。

 裾には、大陸で最も熟練した職人が、銀糸と砕いた魔石で『星の瞬き』を刺繍しています。

 私が一歩動くたびに、ドレスは生きているように煌めき、光の尾を引いて揺れました。


 首元を飾るのは、ゼフィロス様から贈られた、帝国の国宝級の宝石――『氷湖の涙』。

 それはかつて王国の私が身につけていた、安物の模造品の首飾りとは比べものにならない、魂を射抜くような冷徹で高貴な輝きを放っています。


「お嬢様……いえ、エリアナ様」


 私の背後で、セリーナさんが満足げに微笑んでいました。

 彼女の眼鏡は、今の私の美しさを写して、心なしかいつもより輝いて見えます。


「これこそが、あるべきお姿ですわ。……雪山で震えていた小鳥が、今、帝国の空を支配する鳳凰へと変わりましたのね。おーっほっほっほ!」


「セリーナさんまで……。でも、ありがとうございますわ。……私、今なら、あの方たちの前でも堂々と笑っていられる気がいたします」


 私は、鏡の中の自分にそっと微笑みました。

 王国で「無能」と罵られ、厨房の灰を被って俯いていた私は、もうどこにもいません。

 私の指には、あの煤けた木ベラの代わりに、皇帝の加護が宿る銀の指輪が光っています。


 その時。

 扉の向こうから、世界を支配するような、重厚で確かな足音が近づいてきました。


 扉が静かに開かれます。

 そこに立っていたのは、正装に身を包んだゼフィロス様でした。

 黒い軍礼装。金色の飾緒。

 そして、その力強い胸元には、私の瞳の色と同じ、深い碧のブローチが光っていました。


 彼は私を見た瞬間、足を止めました。

 いつもは冷酷で、感情を一切見せないその瞳が、今は信じられないものを見るように、激しく、熱く、揺れ動いています。


「……エリアナ」


 彼はゆっくりと歩み寄り、私の手を取りました。

 その指先が、わずかに震えているのがわかって、私の胸がキュンと甘い痛みを発します。


「……お前を、誰にも見せたくなくなった。……このままこの部屋に閉じ込め、私だけのものにしてしまいたい。……それほどまでに、お前は……」


「陛下……。それでは、晩餐会が始まりませんわ」


 私が少し悪戯っぽく微笑むと、ゼフィロス様は苦笑し、私の手の甲に、誓いを捧げる騎士のような深い口づけを落としました。


「……ああ。だが、今夜だけは我慢しよう。……世界にお前の価値を、私の愛の重さを、思い知らせる必要があるからな。……行こう、私の至宝たからよ」


 彼のエスコートを受け、私は広大な回廊を歩み始めました。

 会場となる大広間に近づくにつれ、音楽の調べと、大勢の人々の喧騒が聞こえてきます。

 そこには、今朝、帝国に到着したばかりの王国の本隊――ジュリアン様の「最後の代理人」である高位貴族たちも、虎視眈々と私を待ち構えているはずでした。


(彼らはまだ、私が魔女として引きずり出されるのを待っているのでしょうね)


 私は、ドレスの隠しポケットに忍ばせた、小さな薬瓶に触れました。

 中に入っているのは、昨夜、私が呪いを変換して作り上げた『星屑の塩』。

 これを、今夜の最後の一皿に加えるつもりです。


 扉の前に立つ、帝国の近衛兵たちが一斉に槍を打ち鳴らしました。

 その轟音は、古い世界の終わりを告げる鐘の音。


「――ヴェスタ公爵令嬢、エリアナ様。ならびに、帝国の太陽、ゼフィロス・アルクトゥルス皇帝陛下、御入来!!」


 黄金の扉が、ゆっくりと、けれど威厳を持って開かれます。

 光の洪水。

 何千ものシャンデリアが、一斉に私を照らし出しました。


 広間にいた帝国貴族、そして王国の使者たちが、一斉にこちらを振り向きます。

 その瞬間、まるで時間が止まったかのような静寂が訪れました。


 王国の使者たちの、間の抜けたような顔。

 彼らの瞳が、驚愕と、そして「あれが、本当にあのエリアナなのか?」という信じられないような恐怖に染まっていくのを。

 私は、最高に優雅な笑みを湛えながら、見下ろして差し上げました。


 さあ、地獄へようこそ。

 あなたたちが永遠に失ったものの輝きを、その目に焼き付けるがいいですわ!

最後まで読んでくださって、本当にありがとうございますわ!


「鳳凰へと変わった」エリアナの姿……!

わたくし、書きながらあまりの美しさに、宝石箱を開けた時のような溜息が出てしまいましたわ。

ドレスの刺繍、そして陛下の熱い視線。

これこそが、逆転劇の「最高のご馳走」ですわね!


さて、次回はついに王国の使者たちが、エリアナの「最後の一皿」で処刑される晩餐会本番!

「魔女」だの「泥棒」だの言っていた彼らの舌が、絶望にのたうち回る瞬間をお見逃しなく!


続きが気になる!と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】と【評価(★★★★★)】で、エリアナのダンスを応援してくださると嬉しいですわ!

あなたの応援が、彼女を世界一幸せな女帝にするのですから!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ