その鐘が鳴る事は……もう無い
今日は水曜日ですが……やっぱり黒いです(^^;)
三年ぶりにやって来たこの街は……更に寂れていた。
そう、オレがこの街を離れるのと時を同じくして
かつては地域一番だった商店街がその長い歴史を閉じた。
それから坂道を転げ落ちる様に寂れてしまったのだろう……
『古くなった駅前を一度壊して更地にし、まったく新たに包括的な開発を行う!』という謳い文句に散々抵抗した挙句……
商店街の一角で代々続いていたオレの家の商売は潰えてしまった。
「つまらないものにしがみついて何もかも失った愚か者!! ゴネずに従えば保証金で裕福にもなれたのに!!」
泰子の吐いたこの言葉に手を挙げてしまったオレは……
“愚か者”のそしりを免れず……慰謝料と養育費で“火の車”だ。
そんなオレなのだから……どこかの繁華街のネカフェで過ごし、出張の宿泊手当をポケットに入れてしまえば良いものを……
なぜ、わざわざ!
この思い出のホテルをリザーブしてしまったのか?……
きっと在りし日の幸福を思い返したい……
オレのセンチメンタリズムなのだろう……
このホテルの中庭に併設された独立型チャペルで
オレと泰子は結婚式を挙げたのだから。
ああ、思い出した!
泰子にプロポーズしたのもここ!
ホテルのラウンジだった。
中庭が見えるこの場所で……
「あのチャペルで式を挙げよう!」と言ったオレの言葉に
花が咲く様に笑った泰子は……女神の様に美しかった。
三年前に捨て台詞を吐いた……あの“般若”の様な顔とはまるで違っていた。
ああ、あの頃とはまるで違うんだな……
そりゃそうだ!
プロポーズの時、オレが手に汗握ってこぶしを置いていたこのテーブルも……どこかの行儀の悪い宿泊客達のせいで傷だらけなのだから!
もうすべては過去の事!
取り壊しの決まったこのホテル。
今ではチャペルの外壁も荒み……ウェディングベルが鳴ることもないのだから。
おしまい
こんな憂き目には遭いたくはないですね(-_-;)
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