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その鐘が鳴る事は……もう無い

作者: 黒楓
掲載日:2025/09/03

今日は水曜日ですが……やっぱり黒いです(^^;)





 三年ぶりにやって来たこの街は……更に寂れていた。

 そう、オレがこの街を離れるのと時を同じくして

 かつては地域一番だった商店街がその長い歴史を閉じた。

 それから坂道を転げ落ちる様に寂れてしまったのだろう……


『古くなった駅前を一度壊して更地にし、まったく新たに包括的な開発を行う!』という謳い文句に散々抵抗した挙句……

 商店街の一角で代々続いていたオレの家の商売は潰えてしまった。


「つまらないものにしがみついて何もかも失った愚か者!! ゴネずに従えば保証金で裕福にもなれたのに!!」

 泰子の吐いたこの言葉に手を挙げてしまったオレは……

 “愚か者”のそしりを免れず……慰謝料と養育費で“火の車”だ。


 そんなオレなのだから……どこかの繁華街のネカフェで過ごし、出張の宿泊手当をポケットに入れてしまえば良いものを……


 なぜ、わざわざ!

 この思い出のホテルをリザーブしてしまったのか?……

 きっと在りし日の幸福を思い返したい……

 オレのセンチメンタリズムなのだろう……


 このホテルの中庭に併設された独立型チャペルで

 オレと泰子は結婚式を挙げたのだから。


 ああ、思い出した!

 泰子にプロポーズしたのもここ!

 ホテルのラウンジだった。


 中庭が見えるこの場所で……

「あのチャペルで式を挙げよう!」と言ったオレの言葉に

 花が咲く様に笑った泰子は……女神の様に美しかった。

 三年前に捨て台詞を吐いた……あの“般若”の様な顔とはまるで違っていた。


 ああ、あの頃とはまるで違うんだな……


 そりゃそうだ!

 プロポーズの時、オレが手に汗握ってこぶしを置いていたこのテーブルも……どこかの()()()()()宿泊客達のせいで傷だらけなのだから!


 もうすべては過去の事!


 取り壊しの決まったこのホテル。

 今ではチャペルの外壁も荒み……ウェディングベルが鳴ることもないのだから。





                          おしまい


こんな憂き目には遭いたくはないですね(-_-;)



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― 新着の感想 ―
代々続いたお店を自分の代で潰してしまうのは耐えられないのは分かります。 さぞお心が苦しかったことでしょう。 でも家族のために我慢して欲しかったなって思いました。 取り壊されたホテルのウェディングベルは…
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