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-初めての戦闘①-


<グゥルルゥゥゥ>


こちらの様子を伺っているのか。

はたまた周囲の仲間を倒したのは俺だと勘違いしているのかは分からない。


「なんだ……それ。」


蒼空の目の前にいたのは、異様な雰囲気をまとった犬だった。青黒い体毛の周囲に、水色の蒸気のようなものがゆらゆらと揺れている。

その光景に、胸の奥がざわついた。


ーーあれだ。あの現象と同じだ。


この世界に来る前、突如発生した“異常現象”。

あの時、自分の体を包んでいた光と似ている。

それ以外の違いは分からないが、特殊な現象を起こせるということなのだろうか。

そう考えていた時だった。


<ワオォォォーーーーーーーーーーーーン>


1匹の鳴き声とともに口からもんが発生した。

その直後であった。


<バシュッ>


乾いた音が響いた、直後ーー蒼空の頬をかすめるように、水の弾丸が唸りを上げて飛んでいった。


「っぶな!」


直感的に体をひねっていなければ、直撃していたかもしれない。

弾け飛んだ水弾は、背後の木に命中し、派手に水飛沫みずしぶきを上げて砕けた。

木の表皮が削られ、するどえぐられている。


「マジかよ・・・今の何なんだよ。」


そう呟いた矢先に別個体から同様の紋が発生した。

まともに戦うのはやばい。

そう感じた蒼空は咄嗟に行動を起こした。


「ふっふざけんなぁぁぁーーーーーー!!!!」


そう。逃げたのだ。


「っざけんなよ!角だの爪だの、飾りかよ!?その体格で魔法なんて反則だろ!」


必死に逃げた。本来は元来た道を通りたかったが、敵の配置的にそれは無理であった。

遭難するとしても、命あってのものだ。だから無我夢中で懸命に走った。


追いすがる気配に背筋が凍る。振り返ればいつでも喰い千切られそうな距離だ。

そりゃそうだろう。敵は腐っても犬なのだ。人間のスピードで勝てるわけがない。


「大体さっ!何なんだよアレ!魔法ってやつか?何でもありだな異世界は!」


懸命に走りながら、頭の隅でひとつの仮説が浮かぶ。

自分でも魔法が使えるのではないかと。この世界に来る前に起きた”異常現象”はまさしく魔法なのではないだろうか。

でも、どうやってやればいい。

どちらにしても逃げるのは無理だ。無駄に体力を消耗してジリ貧になるだけだ。


意を決してその場で振り返って鍬を向けた。


<ワオォォォーーーーーーーーーーーーン!!!>


振り返った瞬間ーー視界の中に飛び込んできたのは、猛スピードで突っ込んでくる一頭。


「うわっ!!!あぶねぇ!!」


地面を蹴って横に飛ぶ。直後、獣の角がすぐそばを掠めて木に突き刺さった。地響きとともに、幹が揺れた。

辛うじて避けることでき、突進してきた敵を見ると近くの木に角が突き刺さっていた。


「魔法なのか角で戦うのかハッキリしやがれってんだ!!!」


そのすきを見逃すことなく、手にした鍬を思い切りふりかざす。


<キャイイィーーン>


鍬の切れ味なんてものに期待はしていなかったが、全力で振り落とした鍬が頭に突き刺さり、ピクピクと痙攣けいれんしながら絶命した。


「……はぁはぁ。どうした?お前は来ないのか?」


当然余裕なんかない。心臓がバクバクと鼓動が高鳴り、足も震えている。

こいつらは俺を完全に舐めていた。

2匹同時にかかってきていたら成すすべはなかった。

1匹が突進。2匹目が即座に魔法で援護していたら、倒すことはできなかっただろう。


だが、こいつは仲間が目の前でやられたのを見たんだ。

既に俺を警戒すべき対象として認識したはずだ。

だからこそ、強気に出る。焦らせるのだ。


「そうか、来ないか。じゃあこっちから行くぞ。」


そう発しながら、突き刺さった頭から鍬を抜いた。


「次はてめぇだ。生きて返さねーからな!……おんや?」


妙な違和感に手元を見る。鍬の金属部分が……ない。

柄だけになった鍬は、ただの棒と化していた。


「……マジかよ。」


絶望と苦笑が混じる。


先程の一撃で留め具が壊れたのだろう。

元々ボロボロではあったのだ。力いっぱい振りかざしたら壊れるのも頷ける。

しかし、よりによって今じゃなくとも良いだろう。


冷や汗をかきながら精一杯の強がりを見せ、呟いた。


「だ……第二ラウンド開始だ。」

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