-新たな力⑫-
死神は、「……時間だ」と呟き、意識は既に掻き消えていた。
恐らくではあるが、死神の言葉から身体を乗っ取ることなく意識を留めるのは難しいのではないかと思われた。
奴はナヴィアと同じく、多くを語ってはくれなかった。
しかし、《解放》に至るための鍵を一つだけ教えてくれた。
それは……魔力の形成。
蒼空はその言葉に違和感を覚えていた。
魔力というのは形のないオーラのようなものだと思い込んでいたからだ。
しかし、思えばその結論に違和感を覚える。
実際、死神は魔法を使わず、風の魔力を使って浮遊していた。
さらにセリスは《解放》を発動した時に武器を形成していた。
これらの事実から、魔力というものは具現化できるということになる。
しかし、事はそう簡単な話ではない。
どれほどの濃密な魔力を捻出すれば、物質として触れられるほどのものになるのか想像もできない。
それに、だ。
セリスの発言を思い返すと、教えられてできるものではない。という言葉。
あの言葉が示しているのは、恐らく、魔力でどのような武器を形成できるのかは、個人によって変わるということだろう。
自分が何を武器として具現化できるのか、それは自分の本質を理解する必要がある。
「一つは魔力制御を限界まで極める。あとは……自分を知るって感じか……これが一番の課題かもな」
途方もない現実に思わずため息をついてしまう。
しかし、これを成さなければならない。
そして、これが理解できれば仲間たちの強化にも繋がると確信していた。
理由は分からないが、エルフや獣人。
彼らの魔力の流れが詰まっているように見えたのは勘違いではない。
自分と同じく何らかの理由で、魔力を思うように循環できなくなっていると思われる。
蒼空の場合は、捕食によって元の魔力量が増大しているため、戦えているが、彼らは違う。
恐らく、本来の力が出せれば、エレクトリオスであっても討伐できるようになるだろう。
そうすれば、自ずと戦力が増し、少人数でも人族と渡り合えるはずだ。
まあ元より戦争などするつもりは毛頭ない。
しかし、武力がなければ意見など通るはずもない。
それは、元居た世界でも証明されていた。
力ない者は搾取される。
それはこの世界では色濃く出ているというだけ。
だからこそ、その力を世界に証明しなければならないのだ。
「あの時の感覚は……たしかこんな感じだったか?」
体内の魔力を循環させ、魔力を増幅させる。
それがいつも決まったものだ。
しかし、あの時は少し違った。
ただ増幅させるのではなく、膨大な魔力を身体全体に押し込め、圧縮させていく。
ナヴィアからの教えの通り、身体の内臓に至るまで隅々に行き渡らせる。
「くっ……身体中が……痛い」
暴発しそうな程の魔力の流れに身体が悲鳴を上げる。
この感覚は捕食した時のアレに近いものがある。
だから……耐えられる!!
身体中から発せられる魔力を押さえつけ、掌に集中させる。
その瞬間だった――
掌に漆黒に染まった棒状の何かが少しずつ形成されていく。
「こ……これは」
しかし、喜びもつかの間。
その棒は即座に消失し、身体から魔力が解放されてしまった。
その衝撃は凄まじく、周囲の木々を薙ぎ倒してしまうほどの物だった。
「はぁ…はぁ、かなりきついなこれ……」
死神が《解放》を使った後の疲労感。
しかし、蒼空はニヤリと笑みを浮かべていた。
同じ現象が起きるということは、確実に近づいている何よりの証拠なのだから。
蒼空はその場に座り込み、魔物の肉を食らう。
失った魔力が戻ってくる感覚とともに自分の掌をジッと見つめた。
「あの武器は……なんだったんだろう」
刀とも槍とも違う何か。
武器を形成しきれなかったことで、魔力が放出されてしまった。
逆を言えば、形成できる武器が分かれば、その域に至れるということだ。
ふと、そう考えると疑問がある。
「あれ?……そういや死神はなんで武器が形成されなかったんだ?」
《解放》は魔力で武器を形成するためのものであるなら、何故あの時武器が具現化しなかったのか。
単純な魔力を増幅させるための行為だったのか、それとも何か別の目的があったのか。
「いや……それはいい。余計なことは考えず、これに全集中だ」
その後も魔物の肉を食らい、魔力を回復させながら幾度となく繰り返した。
ただ、呆然と繰り返すだけではなく、自分の思い描く武器をイメージしながら。
それは刀、大剣、双剣、槍、銃、杖。
色々な武器をイメージしながら、習得を目指していた。




