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-新たな力⑦-

上位悪魔グレーターデーモンの圧倒的な力の前に、蒼空たちは無力感を抱えながらも、必死に戦闘を続けていた。

空気は重く、周囲の大地は悪魔の魔力によってひび割れ、無惨にも破壊されていく。

その圧倒的な力に、彼らのすべての攻撃が通じることはなかった。


蒼空は息を切らしながら、上位悪魔グレーターデーモンの動きを追おうとする。

眼前で、次々と火、水、土系統の強力な魔法が上位悪魔グレーターデーモンに向けて放たれる。


しかし、それらは上位悪魔の体に触れることなく、霧散して消えていくのだった。

その掻き消えていく魔法を目の当たりにするたびに、蒼空は自分の力不足を痛感し、心の中で焦燥感が募る。


「くそっ…あんなのありかよ………」


蒼空の心の中で悔しさと無力感が渦巻く。

だが、それでも足は止まらない。

逃げ道などないのだ。

この圧倒的な力に屈してしまえば、それは死を意味する。


アレンはその無駄だと知りながら、瞬時に反応して水魔法を放つ。


「《水刃ウォーターブレード》!」


水流が鋭い刃となり、上位悪魔グレーターデーモンに向かって切り込んでいく。

だが、上位悪魔グレーターデーモンは一瞥もくれず、簡単にその水の刃を掻き消してしまう。


その様子を見て、アレンは何度目かの呆然とした表情を浮かべながら、再び魔法を組み立てようとするが、すでにその余裕はなかった。


「くらえぇぇーっ!!」


ケインは叫び、至近距離から魔法を放とうとする。

しかし、その手のひらを向けた先で、上位悪魔の雷魔法がその場を轟音と共に走り抜ける。


雷が空を引き裂くように降り注ぎ、ケインに直撃した。

ミラは直前に光魔法で防御結界を張ったが、いとも簡単に防御結界を貫き、ケインはその場に倒れてしまう。


「ケイン!」


ミラが叫び、彼を守ろうと駆け寄る。

しかし、上位悪魔グレーターデーモンはその動きに反応することなく、次の攻撃を放っていた。


ミラが足を踏み外したその瞬間、悪魔の放った火の玉がミラの前に落下し、激しい爆発を引き起こす。

ミラはその爆風に吹き飛ばされ、地面に倒れ込む。


「ケインさん!!」


蒼空は叫び、ケインの元へと駆け寄ろうとしたが、砂塵のなか、ケインを庇う様に立つ姿を目にした。

それはセリスだった。


「……これだから足手纏いは困るのよ」


その場にうずくまるケインを横目にセリスが呟くように言葉を発した。

直前でセリスが魔法を放ち、上位悪魔グレーターデーモンの魔法を相殺したようだった。

透識とうしき》を使っていてもセリスの動きを捉えきれず、実力の差を痛感する。


ケインは、ゆっくりと起き上がり、再び戦闘に参加しようとしている。

だが、負傷したケインは疲労と苦しさが色濃く浮かんでいた。


絶望的な状況だ。

こちらの攻撃は一切通用しない。

一方で、上位悪魔グレーターデーモンの魔法はどれも致命傷になりえる。

こんなのは戦いですらない。一方的な蹂躙じゅうりんだ。


「くそっ……これほどまでに実力差があるのか」


蒼空は憎々し気に上位悪魔グレーターデーモンを見る。


〈ケハハハハハハッ!どうした小僧。いっそ俺が代わってやろうか?〉


――またお前か。

――失せろ。二度とお前の力は借りない。


〈そうかよ……まあそれでも良いがな〉


――ここぞという時に現れやがって


蒼空がピンチの時にだけ現れる内なる死神。

正直に言えばこの絶望的な状況を打開する策は死神を頼るほかにないかもしれない。

だが、あの一件で死神を頼る気など毛頭なかった。


一時的に皆を救えたとしても、事が終わればどんなことをしでかすか分からないのだ。

それこそ、みんなを殺してしまう可能性も十分にあり得る。もちろんそれ以上のことをするかもしれない。


〈……チッ!どうやら今回は必要なさそうだな〉


死神は唐突にそう言い放つと意識から掻き消えていった。


――おいっ!どういうことだよ!?


蒼空は自分の意識に言葉を向けるが、そこにはもう死神の気配はない。

しかし、死神の意図したことはすぐに分かることになる。


「ふぅ……こうなっちゃ仕方ない。みんな私から離れなさい。これは命令よ」


セリスが意を決したように言い放つ。

それを受け、アレンはケインを連れてその場を即座に離れた。


「一人で戦うつもりですか!?」


蒼空は必至で食い下がる。

それをセリスは面倒そうに舌打ちをする。


「……っ!だから邪魔だっつってんの!良いから離れなさい!」


蒼空はその気迫に押され、しぶしぶその場を離れることにした。


その直後だった――


「《解放リリース》」


その言葉を発した直後、セリスから膨大な魔力が放出される。

そしてその膨大な魔力が次第に形を成していき、それは二つの武器になっていた。


「雪花よ、双を成し、舞い散る結晶を咲かせ。"《雪華せっか》"」

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