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-初任務⑩-

討伐を終えた特務隊の面々は、それぞれ静かに息を整えていた。

緊張の糸がほぐれていく中で、森を吹き抜ける風が、どこか乾いた音を伴って木々を揺らしている。


足に傷を負ったアリシアがミラの治療を受けいてる。

蒼空は物珍しさにその様子を観察していた。


「これが回復魔法……ですか」


ミラは頷き答える。


「ええ。私の系統は光魔法。支援や結界……それに回復魔法ね。……でも」


治療を終えたミラは蒼空に一瞥いちべつする。

蒼空はミラの見せる表情に困惑していた。


「貴方……あの魔法は光魔法……よね?」


「はい、そのつもりです」


「詠唱不要なのは置いておいて……あれは本来の光魔法と大分違うのだけれど……どういう魔法なのか教えてもらえる?」


「えーっと……」


蒼空はミラに光線レイ光砲弾レイキャノンの発動を教えた。

しかし、ミラは蒼空の説明により一層困惑している。


「そもそも魔術紋は発動する魔法を制御するために必ず生じるものなの。でも、蒼空君にはそれがない……つまりはオリジナルの魔法を創造できるってことなのかしらね」


ミラの発言に同意する。

自分でも良く分からないが、確かに蒼空が持つ何れの魔法も考案したのは自分自身だ。


「そう……かもしれません。今まで独学で魔法を会得してましたから……」


「まあまあ、今はそんなこと良いじゃない。それよりも……だ」


重く沈黙する空気の中、アレンが倒れた魔物へと近づき、しゃがみ込んでその様子を観察し始めた。

目は真剣で、指先は慎重に黒い血の飛沫を拭いながら、魔物の身体を探る。


「やっぱり……普通の魔物じゃないね、これは」


ぽつりと落とされた言葉に、ミラが眉をひそめた。


「何か、分かったんですか?」


「いや、確証はないけど……この黒い魔力。僕の知る悪魔と似ているね」


「悪魔……?」


蒼空が繰り返した。

アレンは立ち上がると、淡い光を帯びた視線で蒼空たちを見渡す。


「うん。聞いた話では、悪魔は上位種となると、いかなる系統の魔法も扱えるらしい。そして悪魔はこの世界に顕現するために憑依する必要ある。それは人間だったり、魔物もそう……でも、黒い魔力を纏うなんて聞いたことないんだけどな」


その言葉に、蒼空はアリシアから借りた本の内容を思い出す。

確かにアレンの言う通りの記述はあった。


「あの村の誰かが悪魔召喚したものが憑依した。ということでしょうか?」


アリシアがアレンに問いかける。


「んー、それも違うと思うな。そもそも一般人にそんなことできないでしょ。知識も能力もないんだから」


アレンの意見には同意だ。

だが、だどしたら誰が何の目的で?


「ん?……アレンさん!誰か来ます」


警戒心を帯びたアリシアの声が響く。


一同が身構えた瞬間、木々をかき分けるようにして、数人の姿が現れた。

その胸に刻まれている紋章を見て、アリシアがはっと小さく声を漏らす。


「……あれは誰なのでしょうか?」


アレンが顔をしかめ、軽くため息を吐いた。


「はぁ……やれやれ、あの紋章は黒影ファントムだよ」


黒影ファントムと呼ばれたたちは無言のまま、エレクトリオスの残骸を取り囲むように立つと、一人の男が前に出る。


長身で痩せぎすな体躯。

表情はフードで隠れて見えず、漆黒のマントを羽織っている。

彼は落ち着いた声で告げた。


「アレン第四部隊第四席。"魔物の討伐"、ご苦労だった。……この件、後は我々が引き継ぐため、任務は完了とし、直ちに帰還せよ」


態度は横柄そのものであり、良い印象はない。

だが、男の口ぶりから第四席よりも立場が上であることが伺えた。


「……おい、いきなり――」


アレンは蒼空を制止し、右手で拳を作り、胸に当てて言う。


「了解しました。……ただ一つだけお伺いしても?」


アレンはちらりと男を見やる。

しかし、男は何も言わない。

沈黙を是と捉えたアレンは男を見据えて口を開く。


「……この魔物の正体に何か見当がついてるのですか?」


「……不明だ。分かったならば、さっさと行け」


アレンは暫く男を見つめ、ふうと息を吐く。


「……ほら、みんな行くよ」


蒼空はアレンの表情を見て、何も言わずに立ち去ることにした。


「……魔災特務隊!……一つ言い忘れていた。この一件は箝口令かんこうれいを敷く。決して他言することのないように厳命するものである」


男はそれだけ告げると、何も言わず部下たちに指示を出し始めた。

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