青空と雫
初めましての方は初めまして、
今回の話は愛の大きさを主題に考えて、
作ってみました、短い話ですがこれをきっかけに、
今そばにいる人を大切にして欲しいと思います
「お母さん!!目を覚まして!!ねぇお母さん!!
お願い…目を覚ましてよ…」
僕はこの日、たった一人の母を亡くした
帰りの電車はいつもより席が空いていて
そこに座ると母と電車に乗った記憶が溢れ出てきた。
涙を堪えつつ窓を見ていると、
外には白い雪が降っていた。
プルルルルっと僕のスマホが鳴った
裕二「もしもし」
おじいちゃん「裕二、大丈夫か?」
裕二「僕は大丈夫だよ、美希はどう?」
おじいちゃん「すっかり眠ってしまってるよ」
僕は片親で父はいなかった、
10歳年下の妹もおり
母が苦しんでいるのを妹に見せたくなかったので、
母の実家の方で妹を預かってもらっていた。
裕二「良かった、」
おじいちゃん「これからどうするんだ?」
裕二「俺はもう働いてるし、美希を養うよ」
おじいちゃん「そうか、あんまり無理するなよ、」
僕はおじいちゃんの一言で、
涙を堪えるのを忘れてしまっていた、
ただ悲しいていうより寂しいと僕は思った。
裕二「お母さん…元気かな…」
おじいちゃん「いつでも元気だったから大丈夫、」
車内の人の声なんて聞こえないぐらい
僕は何かを折られた気がした。
電車から降り、駅のホームを出ると、
ある男の人が声をかけてきた。
???「裕二!!」
裕二「…?」
???「ごめんな……ごめんな…」
男の人が何度も何度も、
涙を見せないように引きつった顔で僕に謝っていた。
今思えば、お父さんだった。
すっかり髭も伸びきっていて分からなかった、
もう離れたのも10年前だ、
美希が産まれた時お母さんと喧嘩して、
出ていったきりだった。
久しぶりにあったのに
僕は色んなことが起きすぎていて混乱して、
無視してしまった。
すっかり空は星が見え始め、
僕は母と妹と3人で住んでいたアパートに、
帰ることにした。
まだ母の化粧品や服が残ってる部屋で
包まるように眠った
ピピピッっとアラームが鳴る
裕二「もう8時か…仕事に行かなきゃな」
僕はふと、机の上にあった手紙を手に取った
裕二「あれ?こんなのあったっけ…」
僕はその手紙を読むことにした。
裕二へ、美希は大丈夫かしら?
私が急にいなくなるから多分
寂しい思いをすると思うの、
だからお兄ちゃんのあなたが
その穴を埋めてあげて。
実はね、お母さんもっとそばにいたかったよ、
三人で食べた、夜食のラーメン覚てる?
あれなぜか分からないけど美味しかったよね、
こうやって手紙を書いてると涙で字が歪んじゃうな
ずっと、ずっと愛してるよ、2人ともずっと。
お母さんが天国か地獄か分からないけど行っても、
元気にするんだよ、負けるな!裕二!!
もうこれ以上書いたら、多分紙破けちゃうから
終わるね、愛してるよ。
母の涙だろうか、水でボヤけたインクで、
力強くそして綺麗に文字が書かれていた。
僕はその時初めて、人の死の重さについてわかった
元々分かっていたのだが、より一層
生きることの大切を学んだ気がした。
裕二「負けないよ、負けるわけないじゃん、
だって俺お母さんの息子だもん。」
俺はびしょびしょになったスーツを着て
会社に向かうことにした
会社に着くと皆、僕のことを心配してくれていたのか
「大丈夫?」っと声をかけてくれた。
僕は決まり言葉のように「大丈夫です。」と
一言だけ言って仕事を始めた。
僕の中は止まっていく一方で
時というものは止まってはくれないらしく、
あれから数年が経ち、美希は高校一年生となった。
お母さんは見ているんだろうか、
見せてやりたかったよ。
いつも通り人の混む電車の中で揺られながら、
毎日同じような生活を送っていた。
僕は何をしているのだろうか、
何のために生きているのだろうか、
そう考える日もやはり生きていればあるのだろう仕事
美希「お兄ちゃん、最近元気ないね。」
裕二「お兄ちゃんはもうおっさんだし、」
美希「なにそれ!」
美希の笑顔だけが唯一の幸せだった、
今日もいつも通り仕事をしていると、
いつも静かな同期の日菜さんが、
珍しく話しかけてきた。
日菜「あの〜、ここどうすれば…?」
裕二「あー、それ無視でいいよ!」
日菜「えぇ?!無視ですか?!」
裕二「うんうん、あんまり気にしなくていい」
日菜「案外、裕二さんって度胸あるんですね。」
裕二「度胸ってなんだよ!」と笑った
日菜「いやいやなんでもないです!」
裕二「そうか?てか久しぶりに飲みいくか!」
日菜「あー、ありですね!」
裕二「よーし、みんな誘うか…」
日菜「あー、いや!二人きりで!」
裕二「ん?どうしてだ?」
日菜「ちょっと相談したくて、」
僕は日菜さんと居酒屋で飲むこととなった、
日菜さんはおしとやかで親切な人だ。
相談に乗っているとなぜか分からないが、
久しぶりに楽しかった。
裕二「ただいまぁ〜」
美希「おかえり〜って酒臭!」
裕二「ちょっと飲みいってたんだよー」
美希「えー?!誰と!」
裕二「ふふん、内緒」
美希「なんかキモい」っと呟いた
裕二「なんか言ったか?」
美希「う…ううん!てかわかった!女の人でしょ?」
裕二「ち、違うわ!」
なんか一気に酔いが覚めた
美希「お兄ちゃん嘘つく時、だいたい
眉間が狭くなるんだよねー!」
裕二「え?うそ?今俺狭い?」
美希「さーねー?、ご飯できてるよ」
裕二「わかったー」
夕食を食べお風呂をすまし就寝に入る前に、
ふと母を思い出すあの時は部活帰りだったっけ、
練習試合で勝った時はいつも好きなカツ丼を
作ってくれたんだ作るタイミング違うけどね、
でもそれも含めて楽しかったし嬉しかった。
朝起きて支度をしていつも通り出社すると
日菜さんが話しかけに来た、どうやら
悩みの問題は解決したらしい。
日菜「相談乗ってくれてありがとうね、裕二」
裕二「いやいや!いいんだよ!」
日菜「裕二ってさ?彼女とかいるの?」
裕二「いると思うかー?」
日菜「いるわけないよね!」
裕二「おぉ、実際言われると結構刺さるな、」
日菜「まあ、とりあえずこの仕事終わったら
あの日と同じお店で飲みましょ!」
裕二「ああ!いいぞ!」
仕事を終え、日菜と一緒にいつもの居酒屋に寄った。
裕二「店長!生おかわり!」
店長「はいよー!お兄さんいっぱい飲むね〜、」
裕二「若い子には負けてられねぇんすわ!」
日菜「何バカ言ってんの!」と笑った
店長「横の子は彼女かい?」
裕二「違います!」
なぜだろう、また一瞬で酔いが覚めた。
日菜「そんなに嫌なんですか?私が彼女って」
裕二「違う違う、ただまぁ日菜さんが嫌だろう。」
日菜「私は嬉しいですけどね。」
裕二「…え?は?今なんて!」
日菜「私、いつの間にか裕二が好きになっちゃったんだよね、ごめんね急にこんな話!ほら飲み直そ!」
裕二「…ごめん」
その時、日菜は少し落ち込んでいるように見えた
日菜「何謝っているんですか、大丈夫ですよ、
だってこんな私好きになるなんてありえませんから」
裕二「違うんだよ!本当は俺から…」
日菜「俺から…?」
裕二「俺から…言おうと思ってた…」
日菜「…なんだ!良かった!」
その時の日菜の顔を鮮明に覚えている、
母に似た笑顔で素直に喜んでいる顔だ。
裕二「ただいまぁー!!」
美希「また飲んできたの?!もーう、」
裕二「大好きな妹ちゃーん、ほらこれ」
僕は有名チョコの紙袋を渡したちゃんと中身も
美希「えぇ?!どうしたの、お兄ちゃんなんかいい事でもあった?!ま、まさか彼女とか…?!」
裕二「なんでずっと分かるんだよ!」
美希「まぁこれが妹の力??、おめでとう!」
裕二「あぁ、この歳になってやっとの彼女だよ…」
美希「おそいね」
裕二「うるせぇっ!」
ずっとこんな日々が続いてほしいと、
僕は心の底から願った。
それから数年、僕は日菜と結婚することになり
結婚式には美希、おじいちゃんおばあちゃん、
そして、お父さんを呼んだ。
お父さん「裕二、あの日はごめんな」
裕二「もういい大丈夫だよ、」
お父さん「お父さん、取り乱しちゃったみたいだ」
裕二「いいんだよ、でもありがとう。」
お父さん「え?」
裕二「結局離れ離れになっちゃったけど、お母さん
ずっとお父さんの話をしてて楽しそうだった。」
お父さん「…そうか…また会いたいな」
裕二「うん、」
僕はこの日から今日まで、子供も産まれ
幸せに暮らしていった。
でも僕も寿命には勝てないようで、
もう長くはないと医者から告げられた。
美希もすっかりおばあちゃ…いやお姉さんになって
日菜はずっとそばにいてくれて
息子も今は26歳だ。
9月16日 僕はこの世を去った。
僕のお葬式では、日菜と美希の泣き声と、
息子が僕の手を握り最後のお別れをした。
お母さんに会えるそう思っていたから、
死は怖くなかったでもまだそばにいてあげたかった
お母さんもこういう気持ちだったのだろうかと、
僕は初めて愛される強さを感じた。
強くなくても弱くても愛は同じ強さを持つって、
お母さんが言いたかったのはそういう事
だったのだろう。
どうでしたか?、一人の人生っていうものは
あっけないものですが、誰かにとっては、
大切なパズルのピースみたいなものなんです。
きっとこの話を読んでいるあなたも。