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1話

「俺に力を、誰にも負けない無敵の力をぉぉーー」


「おぬし何をやっておるんじゃ? 頭がおかしくなってしまったのかのぉ」


「俺のアピールがわからねぇのかよ。今の流れで俺にチート能力をくれる奴だろうが!!」


 今のこの状況は俺にもよく理解できていないが、俺の正面にいるこの爺さんは自称神様、そして俺はどうやら死んだらしい。まったく理解できないが、死んだという証拠を突きつけられた今、俺は信じるほかなかった。


「おぬしには能力なんぞやれんといったであろうが、大体わしは別に異世界にチート能力を持たせて転生させておるわけじゃないぞ。わしの仕事は不幸な出来事で死んだ若者たちを異世界へ旅立たせることなのじゃ。断じてチート能力を授けるなんてものではないぞ」


「そんなこと言わずによぉ。異世界に言って何の能力も持たない一般人なんてつまらねぇじゃねぇかよ。俺だって異世界で大暴れしたいんだって」


「誰が大暴れするために能力なんぞ授けるか。おぬしはもっと慎みというものを覚えるんじゃ。ほかの者でごねたものなぞ、一人もおらんかったぞ。どうなっておるんじゃおぬしは」


「今までの奴らが何も知らない無知な奴らだっただけだ。俺はそのあたりにも詳しいからな、この状況で何をすれば今後のためになるかを瞬時に理解してこうして交渉しているわけだ。どうだ? 俺が凄い奴に見えてこないか? 能力を授けたくならないか?」


「まったくならんわ!! 自分に自信があるのじゃったら、それこそ自分の力で異世界を生き抜いて行けばいいではないか。それでこそ、異世界というものを存分に楽しめるというものじゃろう」


 その考えには一理あるが、俺がこのまま転生したところで大したことなんてできないのはわかっている。そんな人生は面白くない。折角この非現実的な状況に陥ってるんだ。これを利用しない手はないよな? 

 にしてもこの爺さんは頑固だな。もうそろそろ折れて、俺にチート能力を授けてくれてもいいじゃないか。俺もそんなに暇じゃないんだぞ。ここから始まる異世界生活に胸を高鳴らせているんだ。


「おぬしが懸念しておることはまったくもって心配いらんことじゃぞ。おぬしの修練次第ではなんにでもなれるんじゃからな。もちろん、転生してしまえば、魔法だって使えるようになるんじゃ。魔法を使ってみたくはないのじゃな? こんなところで駄々をこねている暇があったら、魔法の修練の一つでも積んだほうがいいのではないじゃろうか?」


「実際にどれくらい練習すれば使えるようになるんだ? 俺の才能も考慮して1回くらいか? 見るだけでも使えるようになってもおかしくないか? どうなんだよ」


「そんなことわしは知らんわ。おぬしが自分で修練して確かめることじゃろう?」


 自分の才能には自信を持っていたが、それもあくまでこっちの世界での話だ。

 異世界に行って、まったく使ったこともない魔法に対して才能を持っているかと問われれば、そんなの分からないと答えるしかない。他にも色々あるんだろうが、それでもわからないものはわからないんだ。ここで、確実に強くなっておけば、今後も俺は無双できるし、異世界に転生しても最強の存在として君臨することができる。


「何とか頼むよ。俺だって不安なんだよ。折角の異世界で何もできずに死んじゃうんじゃないかってな」


「それこそ、おぬしの努力次第じゃろう。わしは不幸な若者たちに等しくチャンスを与えているだけに過ぎん。それ以上のことを望むなど、高望みが過ぎるわい。おぬしの他にも既に何百人という若者たちが異世界へと旅立っておるのじゃぞ? それをおぬしだけ優遇することなんぞできん!!」


「いや、俺は優遇してくれなんて言ってねぇだろう? ただ、能力をくれって言ってるだけだ。どうして、それが優遇することにつながるんだ? ほかのやつらは別に何も望まなかっただけだろ。それを俺がただ欲しいって言ってるだけだ。ほら、何も優遇なんてしてないだろ?」


「何じゃその意味の分からん出鱈目な理論は。まったくもって話にならんわ。どんなにごねようが、おぬしに能力を授けることはない。断言しようじゃないか」


 この頑固じじいが……。

 あんまり調子に乗るんじゃねぇぞ。俺にだって我慢の限界ってもんがあるんだよ。


 ここで下手にいらだっても逆効果だ。冷静に説得しないとな。そのためにも今は俺が頭を働かせなければ。


「こういうのはどうだろうか? 俺がじいさんの足をマッサージする。そして、じいさんは俺にチート能力を授ける。ウィンウィンの素晴らしい関係じゃないか。これなら、今度こそ俺を優遇したことにならないだろ? しっかり俺は対価を払ってるんだ。施しを受けたわけじゃない」


「おぬしはそのチート能力とかいうものと、わしの足をマッサージすることが同じ価値だとでも言うのか? そうじゃな、ひとまず聞いておくが、そのチート能力とやらは何を望むつもりなんじゃ?」


「異世界で誰にも負けない力だ。俺が異世界で最強と呼ばれるための力をくれ」


「却下じゃ。まったく同価値じゃないわい。精々、視力が0,1上がるくらいの能力が妥当じゃろう。そうじゃ、この能力をおぬしに授けよう。おぬしの視力は1,0じゃったな。それを、1,1にしてやろうじゃないか。よしっ、決まりじゃな」


「ちょっと待て。そんなゴミみたいな能力誰が欲しがるんだよ。俺は認めないぞ!!」


「知らんわい。もう決めたんじゃ。おぬしは視力が0.1上がる能力を持って転生する。これは決定したことじゃ。覆すことはできんの。それでは、行ってくるのじゃ!!」


「待ってくれぇぇぇぇーーー!!!」

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