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14/29

にのろく

評価をいただき、ありがとうございます!

なんかもう、なんかもう……。感無量です。


今回もどうぞよろしくお願いします。

メキナハがパパさんに諭されちゃう回です。


パパのヘッシガーキさんは実はメキナハファンクラブの特別名誉会員です、結成の話を聞きつけて自ら就任しちゃいました。

でも彼女を一方的に甘やかしたりせず、メキナハを思って厳しいことも言ったりしちゃいます。中盤くらいからですので、苦手な方は終盤まで読み飛ばしてくださいませ。一応スペース空けときました。パパさんは愛ある言葉のつもりですので、何卒何卒!



 メキナハは、自分が能天気な質であることを自覚している。だが、置かれた環境下、能天気であり続けることはできなかった。なにより、あの日の復讐の誓いがこれまでの彼女を駆り立てていた。

 身体を鍛えて身を守り、敵を退け、情報を集める。策を弄し、予想を立て、入念に準備をする。そうやって長い間、生きてきた。

 三国同盟によりジザの首脳陣は処刑された。だがまだあの国の問題は解決していない。メキナハの心の重しもそのままだ。ここで手を緩めるわけにはいかない。これまでの犠牲や苦労を無駄にしてはいけない。

 わかっている。それなのに、このところなんとなく気力が湧かない。身体が妙に重い。気分が沈みがちだ。


 ため息の多くなったメキナハを見て、テーダカッゼが優しく抱擁してくれた。


「キーナちゃん。ずいぶんと疲れているみたいね」


 小柄なメキナハは長身のテーダカッゼに抱きしめられて、黙って頷いた。


「あなたに必要なのは、療養ね。腕の怪我もだけど、心の怪我もね」

「心の怪我、ですか……?」

「そうよ、心も怪我するのよ。放っておけば、悪化することだってあるのよ」


 テーダカッゼの温もりを感じながら、メキナハは目を閉じた。


「どうすれば、治りますか……?」

「そうねぇ、人によるけど、誰かに話を聞いてもらうのも、一つの手よ」


 メキナハは身体をこわばらせた。

 無理だ。

 メキナハは固く目を閉じた。


 また俯いてしまったメキナハに、テーダカッゼはあえて厳しい声をかけた。

 

「……わたくしに言わせると、あなただいぶ重症よ。自己管理は基本なんでしょう?あなた自分でそう言ったのよ。それ以上重症化する前に、きちんと行動しなさい」


 メキナハが顔を上げると、テーダカッゼはじっとメキナハの目を見つめてきた。


「どうすればいいのか、わからないんです……」


 メキナハの声が震えていることに気付いて、テーダカッゼは絶句した。この子がここまで思い詰めているとは。何があったのか、どうしてやればいいのか。


「……年長者を頼るのよ。一人でなんとかしようとするから、いけないの。みんなで考えましょう。もうちょっと大人を信用してね」


 そう言って強く抱きしめると、メキナハは何度も頷いた。テーダカッゼはメキナハが落ち着くまで、彼女の髪を撫でてやった。



 夕食前、メキナハはこの館の執事から丁重な呼び出しを受けた。


「え?」

「ご当主様がお呼びなのです。メキナハお嬢様、どうかお急ぎください」


 養父の執事は、どれだけ頼んでもメキナハをお嬢様と呼ぶ。どうにもやりにくくて仕方がないが、今はそれどころではなかった。


「ちょ、ちょっと待ってください、私、このような部屋着ですし、人前に出るようななりでは……」

「緊急とのことです。服装は構わず、とにかくお急ぎください」


 さすがにメキナハも、何事か起こったと理解した。


「一体なにが?どなたか怪我かなにか?」

「皆様ご無事と思いますが、私にはなんとも。とにかく……」

「わかりました、今すぐ行きます」


 とっさに目についた上着を取って羽織ると、執事の後を追う。廊下でシィトゥーハと行き合った。


「トゥーハ兄様!一体何が……。まさか、リューバ兄様になにか!?」

「そんな話ではなさそうだよ。あの人たちが来てる」

「あの人たち?」

「騎士団長さんと副主任さん」


 そう言いながらもシィトゥーハは顔を歪めた。


「なんであの人たちはモッパートにまで出入りするんだ!兄さんもいないのに……」

「シィトゥーハさん、あの方たちは、私がお願いして遠くまで来ていただいているんです。そんな言い方してはいけませんよ」


 メキナハは、まるでノゼンタに言うようにシィトゥーハを諭した。その様子にシィトゥーハはカッとなった。


「なんでメキナハさんがあの人たちを呼ぶんだ!メキナハさんがすることじゃないよね!?」


 メキナハは驚いて目を見張ったが、すぐに伏せて俯いた。


「そうですね、申し訳ありませんでした」

「じゃあ、あの人たちを追い払って……」

「次は私から出向くようにします」

「そうじゃなくて!!」

「……お二方」


 前方から執事が声をかけた。


「まもなく応接室です。お静かにお願いいたします」 


 二人は首をすくめた。



 応接室にはすでに緊張感が漂っていた。


「お呼びですか」


 シィトゥーハが不機嫌を全面に押し出してぶすりと言った。


「お前は呼んでいない。部屋に戻れ」


 ヘッシガーキが珍しく厳しい声を出した。


「なっ……!じゃあ、メキナハさんだって……!」

「シィトゥーハさん」


 メキナハがいきり立つシィトゥーハに柔らかく声をかける。


「いつも心配していただいて、ありがとうございます。でも、そろそろ私、いつもの生活に戻りたいんです」


 メキナハの言葉にシィトゥーハはかなりショックを受けたようで、なにか言おうとしたがなにも言えず、そのままま口を閉じた。


「わたくしが送っていくわ。さあ、行きましょう、シィトゥーハ」


 テーダカッゼがシィトゥーハの腕をポンポンと叩くと、彼はのろのろと歩き始めた。


 そのまま無言でテーダカッゼと共に廊下を歩いていたシィトゥーハだったが、ぽつりとこぼした。


「……いつもの生活、かぁ……」


 テーダカッゼはシィトゥーハを振り返った。


「キーナにとって、ここは怪我を癒すための場所なんでしょうねぇ。保護してもらっても、治れば出ていくのは当たり前のことよ。言っておくけど、」


 何かを言いかけたシィトゥーハを遮って、テーダカッゼは続けた。


「この館のことを言ってるんじゃないわよ、わかるかしら」


 シィトゥーハは立ち止まってテーダカッゼを見つめたが、しばらくして首を横に振った。


「僕は、ただ、メキナハさんに、毎日楽しく暮らしてほしいだけなんだ。なのに、いつでもあんな小さな女の子には重すぎる何かに巻き込まれてて……。助けてあげたいんだ、それだけなのに、メキナハさんは自分から巻き込まれにいってる……」

  

 テーダカッゼは、こじれる前にこの二人をなんとかしないと、と思っていたことを思い出しておかしくなった。テーダカッゼがなんとかしなくても、メキナハは自ら大きな釘をシィトゥーハに刺してきたではないか。

 シィトゥーハにしても、メキナハは巻き込まれているのではなく、自ら渦中に飛び込んでいる、いや、どちらかというと嵐を呼び起こしているのだとわかっただけ上等というものだ。


「……ねぇ、シィトゥーハ。わたくし、ちょっと喉が渇いたんだけど、お茶に付き合ってくれないかしら」


 シィトゥーハはしばらく逡巡していたが、やがて頷いた。



「挨拶はなしでいい、まずは、座りなさい」


 応接室でヘッシガーキに言われ、メキナハは養父の隣に腰を下ろした。団長とクダツーの二人と向かい合う。


「お父様。まさか、リューバ兄様に何か?!」

「いや、あいつならもうすぐ戻ってくる。それとは違う件だ」


 ヘッシガーキはクダツーを見た。クダツーが頷く。


「キーナ、ゲンが殺された」


 メキナハはヘッシガーキの言葉を理解することができなかった。言葉も出ないメキナハにひとつ頷き、ヘッシガーキは淡々と続けた。


「暴漢が二人、治療院に押し入った。護衛の騎士が一人、重傷だ。ルバイヤ医師も軽傷を負ったが無事だ。

 暴漢のうち一人は女で、子供の仇だと言っていたそうだ。二人とも捕らえていたが牢内で自害してしまった」


 ……ゲンが。殺された。

 その犯人が、自害した。

 彼は、手負いの上、逃亡防止の拘束をかけられていたのだ。抵抗はできなかったはずで、女性でもゲンを手にかけることは可能だっただろう。

 彼が最後にニヤリと笑ったのを思い出した。あの男は、まだなにか知っていた。聞き出したいことは山ほどあったのに。

 そこまで考え、メキナハは気付いた。

 そうか、あいつ、口封じに殺されたのだ。メキナハは唇を噛んだ。


「子供の仇、というのに心当たりがあるかね?」

「……心当たりが多すぎます」


 悔しさで喉がつまったが、メキナハはなんとか声を絞り出した。


「……大丈夫かね?」


 ヘッシガーキがメキナハの背をさすった。メキナハは一度目を閉じ呼吸を整えると、できるだけ平静に言った。


「……はい。大丈夫です。

 ゲンは幼い頃から直接間接に多くの死に関わってきましたから、敵も多いと思います。それにしても……」


 メキナハは言葉を切り、少し考えた。


「仇と言うからには犯人はジザの人間でしょうか。その暴漢とやらは、どうやってゲンが脱走してカイレーにいることを知ったのでしょう?しかも、ゲンは放っておけばどうせハビに送還になったのに、わざわざカイレーまで来るなんて……」


 ヘッシガーキは、クダツーを見やった。クダツーは頷くと、説明し始めた。


「ゲンが殺害される前の日、ツダが釈放されている」

「え?」


 クダツーは眉間に皺を寄せて頷くと、さらに続けた。


「そして殺害の次の日、リュウという名のシュンの弟が、シュンに面会にきている。その弟との面会の後、ずっと黙秘を続けていたシュンが急に供述し始めてね、ゲンと酒場で知り合い、キーナに会いたいことを教えたら、特別に会わせてやると言われたとか、あのパーティへはゲンに連れてきてもらっただけで、自分は何も知らない、ただメキナハに会いたかっただけだとか言い出した」

「……!」


 やられた。ツダに。ツダはゲンに復讐したがっていた者たちを手引きしたのだろう。以前から用意していたのかもしれない。そうして復讐者に復讐を果たさせゲンの口を封じ、ゲンに全ての罪を押し付けた。


「今まではゲンが怖くて話せなかったが、もういないのなら安心して本当のことを話せる、だとさ。しかも、ゲンは普通に公用語を話せていた、だとさ」

「……本当かどうか、もう確かめようもないですね……」


 失望感にめまいがした。なるほど最初に椅子をすすめられるわけだ。

 

「どこまでツダが関わっていたのか証拠はない。が、ツダに都合よく事が運んでいることは確かだ」


 メキナハは無意識に両手で顔を覆った。

 そして、唐突に、ゲンは一体、ハビでどんな扱いをされてきたのだろうと思いついた。

 ゲンといえば、最悪の凶悪な害獣のような存在とメキナハは思っていた。粗暴で危険で、災厄と同意義の男。だがそんな男が、死を望むほどの目にあっていたのだ。彼が「辛い」と言っていたことをふと思い出した。そして望み通り、拘束されたまま復讐者に殺された。ほんのわずかながら憐憫の情が湧いたのを自覚して奥歯を噛み締めた。


「『里』には知らせましたか?」

「いや、わざわざ知らせる義理はない」

「ジザには?」

「ハビと三国同盟には知らせたが、ジザには特になにも」

 

 重くて暗い沈黙が落ちた。


「そのシュンに面会に来たと言う、弟のリュウという少年だが」


 ヘッシガーキが沈黙を破った。


「知っているかね?」


 メキナハはゆっくり顔を上げ、頷いた。


「最後に会ったのは私がハビにいた頃ですから、まだ小さかった記憶があります。お互い子供だったので、あまり印象はありません。今は多分、十五、六歳くらいだと思います」

「十七だ、その子が、私を通してお前に面会を求めてきた。会うかね?」

「私にですか?何故?」

「わからん。一人で会えとは言わない。私たちも会う」


 メキナハは三人の男たちを見回した。三人共、いかにも重鎮然とした佇まいの偉丈夫たちだ。こんなのがワサワサいては、十七歳の少年には荷が重いだろう。


「皆様がお揃いでは、リュウ君が萎縮してしまうでしょう。一人で大丈夫ですよ」

「正装して臨むよ、なんならセヌリューバも参加させようか」


 ヘッシガーキが戯ける。相変わらずお茶目な人だ。メキナハはようやく微笑んだ。ヘッシガーキなりに元気付けてくれていることがわかったのだ。


「会います。ただし、私一人で。日程の調整は、お願いしてもいいでしょうか」


 ヘッシガーキも立ち上がる。


「お前一人というわけにはいかんよ、少なくとも一人、必ず同席させなさい」


 メキナハは考えを巡らせた。


「どうしてもですか」

「そうだな、ここは譲ってやれない。私が同席しよう」


 ヘッシガーキは、もう一度腰をかけメキナハを見上げた。にこやかだが、なんとも断りにくい。


「いえ、それでは、もうすぐ帰ってらっしゃるなら、リューバ兄様に来てもらいます。先だって、勝手に副主任にお会いした件で、まだ機嫌を損ねていらっしいますから、お詫びを兼ねて」


 ヘッシガーキは引き下がらなかった。表情を引き締めると重々しく告げた。








「それだけの理由かね?セヌリューバの方が懐柔しやすいと思っているならあの子に対する相当な侮辱だぞ、そしてここまで巻き込んだ我々にも、ずいぶんと失礼なことだとは思わないか?」


 メキナハは驚愕した。


「そんなつもりでは……」

「では何故、リュウ君に一人で会おうとする?一人でどうにかできると思っているならそれは思い上がりだ」


 思い上がり。

 ヘッシガーキの強い言葉に息を呑みつつ、メキナハは自分の行動を振り返った。

 なんとかしなくてはならない、誰にも迷惑をかけず。なんとかできるのは自分だけだ、と、そう思っていたのではなかったか?

 メキナハは力無く、再びヘッシガーキの隣に座り込んだ。


「……モッパート様、どうかそれくらいで。メキナハ嬢はこれまで大きな敵を相手に一人で戦ってきたのです。すぐに周りを頼れなくても無理はありませんよ」


 それまで沈黙していた騎士団長が口を挟んだ。


「団長殿、この子への気遣いはありがたいが、どうか娘を甘やかさないでいただきたい。この子は、迷惑をかけたくないとか、被害が及ぶのを避けたいとか言っているが、周りに問題を打ち明けないのはそれだけが理由ではないはずだ」


 団長が首をすくめて引き下がると、ヘッシガーキは再びメキナハを見やった。


「キーナ、ゲンが殺されたのを聞いてどう思った?やっぱり人任せにするのではなかったと思ったのではないか?やっぱり一人でなんとかするべきと思ったのではないか?」


 メキナハは歯を食いしばった。

 わかっていた。自分がなかなか周りを信用できないこと、人を頼ることが恐ろしいことを。

 つい先ほど、テーダカッゼにも同じことを言われたのではなかったか。皆で考えようと。もっと大人を信用しろと。


「お前は一人で復讐したいのだろうが、ジザと『落ち人』の問題は、誰かが一人でどうにかできるような問題ではない。それこそ国の中枢の連中が何年も頭を悩ませてきたんだぞ」


 メキナハは力無く項垂れた。彼女としては、ジザで未だに暴力や陰謀を行っている者たちを何らかの形で倒せればそれでよかった。国際問題まですべて一人で解決できると思っていたわけではないのだが……。ヘッシガーキはメキナハの顔を見ても、追求の手を緩めなかった。


「お前は、誰の手も借りず誰にも影響を及ぼさずに復讐を遂げたいのだろうが、そんなことは不可能だ。証拠に、事態が大きくなりすぎて身動きが取れなくなっているじゃないか。

 それでも尚、捨て身で動けば、お前の復讐心は満足するかもしれんが、そんなことでは、ゲンを殺して自害した例の暴漢らと、やってることは変わらんよ。自分を犠牲にして復讐して、その結果どうなった?ツダの一人勝ちだ」


 悔しさと羞恥で赤面するメキナハに、ヘッシガーキは口調と表情を柔らかくした。









「キーナ。あのね。逆を考えてみよう。例えばだが、お前がゲンにやられてしまった被害者の側だと仮定してだな、私が報復に走ったとしよう。復讐のために私が命を落としたら、お前、よくやったと喜ぶかね?気持ちは晴れるか?ますます悔しいだけではないのか?」


 メキナハは目を見開いた。そんな風に考えたことはなかった。


「私がそんな捨て身の復讐をするより、もうこんなことが起こらないよう尽力したほうが嬉しくはないか?

 私は、現在の国際情勢も解決したいが、お前の現状もなんとかしたい。それには、お前の過去と現在の問題を解決しないとならないんだよ。

 キーナ。私はね、お前が思っている以上にお前のことが気に入っている。だからこそ、お前の将来を考えている。お前が周りを信用して、過去にケリをつけて、きっちり前を向かない限り、お前は今後、まともな恋愛もできん」


 ヘッシガーキは言って片目を閉じてみせた。


「お、お父様」


 メキナハは狼狽えた。ヘッシガーキはたちまち上気したメキナハに笑いかけた。


「今すぐ全てを打ち明けろとは言わん。だが少なくとも、今後どうするつもりなのかは、相談してもらいたい。

 私は明日にはシデスラへ戻るつもりだ。一緒に来るな?」


 それは質問ではなく確認だった。メキナハは黙って頷いた。




「ずいぶんと厳しいですな」


 メキナハの後ろ姿が扉の向こうへ消えるのを見送ると、騎士団長はヘッシガーキに言った。


「あのくらいでへこたれるなら私も苦労しないし、あの子のために尽力もしない。

 あの子は、ものすごく臆病な部分と、とんでもなく図太い部分が混在している子なんですよ。本人は能天気などと言っているようですがね。強く出たのは、なんとしても情報を吐き出してもらいたいからです。あの子自身のためにもね。

 さて、重圧と復讐心から自由になったら、あの子の心が誰に向かうか、保護者としては楽しみであり悔しくもあるのですよ」


 シィトゥーハには荷が重いだろうなとヘッシガーキは思う。シィトゥーハの、メキナハを重責から救ってやりたいと思う気持ちは、ヘッシガーキらと同じだ。ただ、やり方が完全に明後日の方向なのだ。彼については、今後の成長に期待するとしよう。


「モッパート様、私には息子がおりまして。是非メキナハ嬢にお引き合わせいただければと思いますが」


 団長がにこやかに申し出た。ヘッシガーキは一瞬で不機嫌となり、眉間に皺を寄せて団長を睨んだ。


「紹介はしましょう、その先のことは全てあの子の気持ち次第。私としては相手が誰であれ、せっかくできた娘をそう簡単に嫁に出す気はないので、そのおつもりで」


 団長は鼻白んだが、クダツーは吹き出した。


「なんだ?」

「……いや、失礼いたしました。彼女に相当厳しいことを言いながらも、結局娘さんに甘いなあ、と。セヌリューバ主任の身内への庇護欲の強さは、モッパート様譲りだったのだなと思いまして」


 ヘッシガーキはクダツーを横目で睨んだ。


「クダツー副主任も立候補するつもりか?」

「メキナハ嬢のお相手としてですか?いや、とんでもない、私には最愛の婚約者がおりますので」

「さっさと結婚したまえ、なんならお膳立てしよう」

「私にまで牽制しなくても、来年には式を挙げる予定です。

 さて、では私は先にシデスラに戻って、幹部連中に地ならしをしておくことにしますが、団長はどうなさいます?」


 クダツーが騎士団長を振り返ると、彼は満面の笑みを浮かべた。


「もう少しメキナハ嬢とお近付きになりたいのでね、一晩こちらにお世話になります」


 ヘッシガーキは横目で騎士団長を見た。


「急いで宿を手配しましょう」


 騎士団長は片方の口角を上げて笑った。


「泊めていただけないので?音に聞くモッパート本邸の客間を楽しみにしていたのですが」

「……あなた方のために準備していたのを後悔したくなりました」

「過保護がすぎませんかね」

「よく言われます」


 三人は声をあげて笑った。





ありがとうございます。いかがだったでしょうか。

心臓バクバク、オロオロです。吐きそう!?

明日もどうぞお付き合いくださいませ。

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