084 17日目 冬香のスリーカーは50%
いよいよ、アリムさんが目覚める日が来ましたか?
◇
17日目 AM 7:20 朝
《2日に一度の会議: 偶数日の予定、本日は無し。
一番権利者: 真々美。
ただし、アリムが意識を取り戻す《20日目予定または今日》までは、お預け状態。》
◇
オルア
「アリム、おはよう。
今日は快晴だよ。」
アリム
「・・・」
アリムは意識不明のままだった。
オルア
「今日の朝に、冬香のスリーカーで目覚めるのよね。
待ち遠しいわ。」
オルアは、アリムをはさんで反対側に寝ている冬香を見た。
オルア
「冬香は昨日の疲れが残っているのよね。
ギリギリまで寝かせてあげよう。」
オルアは起きて、着替えを済ませて、朝食の準備を済ませた。
オルア
「洗い物が減っていて、料理が楽だったわ。
真々美は元気が無いから、絵美様が片づけてくださったのね。
雲の上の御方なのに、身近に感じてしまうわ。
女神様、絵美様の素晴らしい人格を感謝します。」
絵美様と真々美が一緒にリビングに入ってきた。
あとから、冬香もリビングに入ってきた。
「おはよう!」のあいさつを済ませた後で・・・
オルア
「絵美様、昨日はお皿洗いをして頂き、ありがとうございました。
おかげで、朝食の準備が楽でした。」
絵美
「どういたしまして、オルアさん。
流石ね、ちゃんと気付いて、御礼まで言ってくれるなんて。」
オルア
「ありがとうって、感謝の言葉は声に出すことが大事だと思っていますから。」
絵美
「そうね、真々美に伝えたことがオルアさんにも、ちゃんと伝わっているのね、嬉しいわ。」
真々美
「冬香、体の調子はどうだ 」
冬香
「絶好調よ、任せて!」
オルア
「いよいよ、アリムが目を覚ます日が来たのね。」
絵美
「本当に楽しみね、真々美。」
真々美
「ああ、本当にな。」
オルア
「今日の一番権利者は、真々美だものね。」
真々美
「そうなんだ。 待ち遠しかった。」
絵美
「顔が赤いわよ、真々美。」
真々美は、さらに顔を赤くした。
冬香
「今日は会議がないから、朝ごはん食べたら、アリムをすぐ起こしましょう。」
オルア
「そして、目覚めたアリムは、私達に見守られながら恥ずかしそうにご飯を食べるのね。」
真々美
「その様子が目に浮かぶようだ。」
絵美
「じゃあ、オルアさん、掛け声をお願いするわ。」
オルア
「いただきます。」
絵美、真々美、冬香
「「「いただきます。」」」
◇
絵美、真々美、冬香、オルアはアリムが寝ている部屋に集まった。
冬香
「アリム、もうすぐだからね。」
冬香は、左手の人差し指と中指を伸ばして、アリムの額に当てた。
冬香
「アリムへ、スリーカー。」
まぶしい光が、アリムの額をつつんだ。
そして、女性の声が聞こえてきた。
冬香の頭の中だけに。
スリーカー
「おや、初めましての方ですね。
性魔力 コモンルーンの1つ、スリーカーです。
第5呪文として、登録された方は、あなたが初めてですよ。」
冬香
「初めまして、お会いできて、光栄です。
スリーカーさん、わたしは白石冬香と申します。
職業は医者です。」
絵美、真々美、オルアは、冬香経由のテレパシーでスリーカーの声を聞こうとした。
絵美
「スリーカーさん、みんなに聞こえるように、スピーカーモードでお願いできませんか?」
スリーカー
「おや、先日の治療に必要な性魔力を払いきれなかった方ですね。
いいですよ。 スピーカーモードで話します。
先日の男性は、どうされていますか?」
絵美
「そこで寝ています。」
スリーカー
「ふむ、今回もこの方の治療で呼ばれたのでしょうか?
どれ、特別サービスで無料で診断してあげましょう。
感謝してくださいね。
素晴らしい医師に依頼されたのですね。
腹部の傷の経過は順調ですね。
頭脳の様子は、エネルギーの補充がうまく進んでいませんね。
わたしの見立てよりも、さらに3日から7日かかりそうですね。」
オルア
「そんな、もうすぐアリムに会えると思ったのに。」
オルアは、倒れそうになった。
真々美
「オルア、しっかりするんだ。」
真々美は、オルアを支えた。
オルアは、今までの看病疲れが出たようだ。
真々美はオルアを椅子に座らせた。
冬香
「やはり、スリーカーのチカラが必要と判断したことに間違いはなかったわ。」
スリーカー
「どういうことですか?
あなたが第5呪文として、私を選んだことに関係しますか?」
冬香
「第5呪文として登録した理由は、私が習得できるのは第5呪文までだからです。
レバーラとスリーカーのどちらか1つであれば、治療ができるスリーカーのちからが欲しいと切に願っているため、スリーカーを選びました。」
スリーカー
「そうでしたか。
第5呪文の場合 診断に5ポイント 治療に5×5=25ポイントで実行できます。 第6呪文として覚えるよりも、遥かにお得ですよ。」
冬香
「おっしゃる通りですね。」
スリーカー
「それが本音、本当の理由だったのですね。
医者の日々の研鑽と努力を積み重ねた日々を 買い叩こうとするような者は許せません。
治療費を値切ろうとする輩に対しては、私も治療を値切らせてもらいます。
今後、あなたからの呼び出しの場合、私は半分の力しか出しません。」
絵美
「そんな、誤解よ。 冬香さんは。」
真々美
「そうだぞ。 冬香は医学の習得に人生のほとんどを捧げたんだ。
そんな、冬香が治療費を値切ろうとするわけがないだろう。」
スリーカー
「皆さんで口裏を合わせて、私を悪者扱いするのですか。
あなたたちが何を言おうとも、私は半分の力しか尽くしません。
文句があるなら、このまま帰らせてもらいます。」
冬香
「そんな あんな恥ずかしい思いまでしたのに 私のスリーカーは半分の力しか 半人前の働きしかできないの。」
スリーカー
「自業自得ですね。 同情の余地はありません。」
絵美
「言い過ぎよ、スリーカーさん。 冬香さんは、あなたが思うようなひとじゃないわ。」
スリーカー
「うるさいですね。 じゃあもう帰りましょうか?」
冬香
「待ってください。 半分で構いません。 だから私にお力を貸してください。」
スリーカー
「おや、少しは反省したようですね。
かまいませんよ、半分の力だけお貸しします。」
真々美
「冬香、焦るんじゃない。
言われたことを認めたことになってしまうぞ。」
冬香
「いいのよ。 私たちにとって一番大事なことはアリムさんに一日でも早く目覚めてもらうことだから。
たとえ半分の力であっても、数日間は早く目覚めてもらえることができるわ。」
絵美
「冬香さん。
自分の名誉よりもアリムさんの回復を優先するなんて。」
真々美
「こんなのは、誘導尋問じゃないか?
冬香は、はめられたようなものだ。」
スリーカー
「聞こえてますよ。
冬香様の反省に免じて、一度だけは聞かなかったことにしてあげます。
冬香様、では、対象に左手を当てて、わたしの名を呼んでください。」
冬香はチカラなく立ち上がって、アリムの額に左手を当てた。
冬香
「アリムが1日でも早く目を覚ましますように。
スリーカー。」
スリーカーは通常時の半分だけ、治療の力を注いだ。
スリーカー
「ふむ、少しは精神エネルギーが補充されましたね。
あと5日くらいで目を覚ますかもしれませんね。」
冬香
「かもしれませんね、とはどういう意味ですか?」
スリーカー
「全力での治療をするまで断言できませんが、回復する量よりも流出する量の方が多い場合、当然 回復も遅れますね。」
冬香
「そんな。」
冬香は、その場で座り込んでしまった。
両目からは涙があふれ続けて、放心状態になっている。
真々美
「冬香、最悪の場合は、国庫からお金を出して回復材料を手に入れよう。
だから、そんなに落ち込まないでくれ。」
絵美
「真々美、それは、横領よ。
絶対にダメ。」
真々美
「絵美は、この期におよんで、そんなことを言うのか?」
オルアも、放心状態のままだ。
スリーカー
「患者に同情してはいけないというのが私の師匠の教えですので、では失礼します。」
絵美と真々美は無力感に耐えていた。
絵美 こころの声
『性魔力が、また空っぽになる覚悟で 私がスリーカーを使うべきか?』
真々美 こころの声
『絵美が泣いて拒否した第6段階の儀式を受けて、わたしがスリーカーを覚えるべきか?』
スリーカーは、その様子に後ろ髪が惹かれる思いをしながらも、立ち去る覚悟を決めようとしていた。
スリーカー こころの声
『迷ってしまいますね。
演技かもしれないのに。
それでも、黄花様の教えを無駄にしたくありません。
医療の価値に敬意と対価を払う姿勢は重要です。
この方たちには、それが無かった・・・』
☆ [B] スリーカー - Threeker
☆
☆ 医療用の呪文です。
☆ 診断のみの場合でも、5ポイントの性魔力を消費します。
☆ 治療まで実行する場合は、25ポイント相当の性魔力が必要となります。
☆ 彼女はとても気難しいですが、融通が利かない性格なので、いじわるをされることはありません。
☆ 医療の価値に敬意と対価を払う姿勢は重要ですから、大事にしてください。
☆
☆ 083 冬香 第4段階の儀式とスリーカー
アリム こころの声
『冬香さん、ありがとう。』
冬香
「えっ? アリムのテレパシーなの?」
◇
スリーカーさんは本当に気難しい。
☆ 融通が利かない性格なので、いじわるをされることはありません。
という言葉は、うそだったの?
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