076 アリムの記憶、絵美の後悔
オルアさんの名誉回復の準備完了が うれしいです。
◇
絵美
「お昼ごはんまで緊張させたら、健康に良くないからね。」
それが、絵美が民衆側の代表である3人、シュウピンさん、メラニィさん、セーラさんと食事を別にした理由だった。
真々美
「疎外感、仲間外れにされた印象を与えないだろうか?」
絵美
「アリムさんが目覚めたら、快気祝いとパジャマパーティを3日間かけてしましょう。
親睦を深める、つまり、仲良くすることは、その時にしましょう。
特にセーラさんは、びびらせてしまったからね。」
真々美
「会議で発言と言うか軽口を注意したことか?」
絵美
「まあね、あとから厳しくするよりも最初に厳しくして少しずつ緩める方がいいわ。
だんだんと厳しくされると悲しくなっていくけれど、
だんだんと自由度が増えることは認められた気がして実力を発揮しやすくなるわ。
最悪なのは、最初は優しくして、相手が油断したころに、だまし討ちのように攻撃する指導方法ね。
教員免許を取得した者にそういう手法を好む者が多いけれど、見つけ次第、自宅封印したわ。
ベーシックインカムが導入されて良かったわ。」
冬香
「絵美様は、セーラさんのことをどう思われましたか?」
絵美
「いいんじゃないかな。
こちらの誘い水を受けて、気持ちを緩めるタイミングを有効活用したからね。
上に気に入られようとして、ゴマすりしてすり寄ってくる連中よりは好ましいわね。」
冬香
「そうですか?」
真々美
「冬香、なにか心配事があるのか?」
冬香
「特にはないわ。」
絵美
「遠慮するなんて、壁を作られたみたいで悲しいわ。
当てましょうか?
冬香さんが、
セーラさんに本当の性転換手術を受けさせるために、
それも、公費で支払い完了できるように、助けるタイミングを計っていたことについては賛成しているわ。」
冬香
「絵美様、気付かれていたのですか?」
絵美
「気付いていたというか、
冬香さんが私の思う通りの人なら、そうしただろうと思って鎌をかけたのよ。」
冬香
「・・・」
絵美
「警戒しなくてもいいわ。
わたしは良い判断だったと賛成しているわ。」
冬香
「絵美様・・・」
絵美
「高潔な精神はカセイダードの技術でも作れない。
それが手の届く範囲にあるならば手を伸ばすべきよ。
そう判断したひとが、愛しいサブシス真々美が選んだサブシスだということを誇りに思っているわ。」
冬香
「絵美様、ありがとう。
わたし、セーラさんはアリムを取り合うライバルになる気がしています。
それでも、セーラさんが望むなら、本当の女性の身体を手に入れて欲しいと思ったのです。」
真々美
「危険な判断だったが、損壊した内臓と性器であれば、男性のものと女性のものの区別は付かないからな。
上手くやった良い判断だったと思う。」
絵美
「とにかく、精神と言うか本性を暴きたかったから、厳しい態度で怖がらせたけれど、とても素直で良い子だと思うわ。」
オルア
「それで、いっしょに、だるまさん音頭を踊りましょうって誘われたのですね。」
絵美
「まあね。
踊ってくれたら、うれしいけれど、断られるでしょうね。
そのときは、オルアさんが、いっしょに踊ってね。」
オルア
「アリムが回復した後でなら、ぜひお願いします。
ただ、今は、そんな気分になれなくて。」
絵美
「それでいいのよ。
オルアさんは正しいわ。」
オルア
「絵美様、ありがとう。」
絵美
「さてと、お昼ご飯だけれど、真々美と一緒のメニューを食べたいわ。
真々美、冬香さんと一緒に買いに行ってくれないかな?
わたしは、オルアさんとアリムさんの様子を見ているわ。」
真々美
「ああ、そうしよう。
冬香、いっしょに来てくれ。」
冬香
「もちろんよ、真々美。
左腕を、くの字に曲げてくれない?」
真々美
「ああ、どうぞ。」
冬香は真々美の左腕を胸に抱きしめて、出かけて行った。
冬香
「絵美様、オルア 行ってきます。」
絵美、オルア
「「行ってらっしゃい。」」
オルア
「冬香は機嫌が良さそうね。」
絵美
「昨日の夜は、真々美から離れてもらったからね。
ひとり占めしすぎると良くないから、バランスを取らせてもらったわ。」
オルア
「そうだったんですね。」
絵美は満面の笑みでオルアを見つめた。
絵美
「ふ、ふーん。」
オルア
「どうされたのですか?」
絵美
「オルアさんは、アリムさんのどこが好きになったのか?
じっくりと聞かせて欲しいわ。
それとも、真々美と冬香も居るときに聞くべきかな?」
オルア
「最初に好きになったというか、良いかもと思ったところは理性ですね。」
絵美
「理性? もっと、くわしく教えて?」
オルア
「最初に出会ったときは手っ取り早く胸の谷間を見せて、色仕掛けで釣ろうとしたんですけれど、理性で胸の谷間から私の目に視線を移したところに、他の男性とは違う何かを感じました。」
絵美
「それで、それで?」
オルア
「それから・・・」
オルアのアリムさん語りは続く・・・
◇
真々美と冬香が帰ってきた。
真々美
「ただいま。」
冬香
「ただいま、お茶の用意もしますね。」
真々美
「聞こえないのかな?
絵美? オルア?」
アリムが寝ている部屋を覗いてみた。
オルア
「それで、いつもわたしの気持ちに寄り添ってくれて、
わたしのことを一番大事に思ってくれて、
最初はわたしが恋の主導権を握ろうと余裕があったんですけど、アリムのことを知れば知るほど好きになってしまいました。
そして、想いがあふれすぎてしまって、「逃がさないわ」宣言をしてしまいました。」
絵美
「きゃあー、オルアさんって大胆ね。
それは、強力な一撃だわ!」
冬香
「あのう、絵美様、オルア?
昼ご飯を買ってきたわ。」
絵美
「ありがとう、真々美、冬香さん。」
オルア
「おかえり、真々美、冬香。」
真々美
「盛り上がっているようだが、温かいうちに食べないか?」
絵美
「そうね。
オルアさん、また続きを聞きたいわ。」
オルア
「絵美様、聞き上手で話していて、幸せになりました。」
絵美
「わたしもよ。
聞いていて、私までドキドキしてきたわ。
恋って、素敵よね。」
オルア
「です、です。そうなんですう。」
絵美
「真々美、冬香さん、オルアさん、さあ、いただきましょう。」
絵美、真々美、
[ テーブル ]
オルア、冬香
の並びで席に着いた。
絵美
「買ってきてくれた真々美と冬香さん、掛け声よろしく。」
真々美、冬香
「「いただきます。」」
絵美、オルア
「「いただきます。」」
冬香
「今日は、真々美が好きなものにしたわ、全員ね。」
絵美
「あら? 真々美と言ったら、これよね。
わたしも好きよ。」
☆ 真々美
☆ 「良い返事だ。
☆ わたしは、牛丼の特盛 つゆ多めと玉ねぎのみそ汁にする。
☆ アリムさんは、どうする?」
☆
☆ 042 8日目 昼食デート
4人は、牛丼の特盛 つゆ多めと玉ねぎのみそ汁を美味しく食べ終わった。
◇
絵美
「さてと、シュウピンさんの苦しい過去を聞いたわね。」
真々美
「ああ、ひどい仕打ちだな。」
冬香
「そうね、度が過ぎているわ。」
オルア
「アリムも同じようないじめを受けたのかなあ?」
絵美
「そう、それなのよ。 オルアさん。
海賊を装った襲撃に関して、シュウピンさんがヒントを出した。
そのヒントをアリムさんは100%の的中率で正しく解読した。
暗号化と復号化というインターネット技術を思い出して欲しいのだけれど、
ふたりの異なる人間が同じ【暗号化鍵】を持つなんて、ありえないのよ。
【狸】や【栓抜き】という簡単な暗号や、
複雑な理論を用いた暗号なら、解けるひとがいても不思議じゃないわ。
でも、シュウピンさんの暗号は、普通の人と言うか多くの一般人は、暗号というかヒントであるとさえ、思い至らないわ。
暗号を解読するよりも、目の前にある文書や聞かされた会話が暗号であると分からなければ、解読を始めることさえできないわ。」
真々美
「確かに。
問題を解くことよりも、問題を見つけることの方が難しいからな。
それも、直接聞いた話ではなく、オルアから聞いた話からヒントというか暗号だと気付いたアリムさんは素晴らしい能力を持っているのか?」
絵美
「そうではなくて、シュウピンさんと同じような経験をしたから思考方法が酷似、とても似ている可能性を考えているの。
だから、アリムさんの過去を知りたいのよ。」
真々美
「調べた方がいいだろう。」
冬香
「そうね、いじめが無いことを願うけれど、シュウピンさんの話をキーワードにして、会話履歴を参照するべきね。」
オルア
「じゃあ、わたしが参照するね。」
真々美
「いや、オルアはアリムと近すぎる。
同調シンクロ率100%の追体験になって、精神的な痛手が最大化されてしまう危険がある。」
オルア
「じゃあ、冷静な冬香が参照してくれる?」
冬香
「わたしも冷静ではいられないわ。
そこまで親しくないシュウピンさんの話でさえ、真々美とオルアが同じ目に遭わないように、雑草1本さえ残らないように焼き払いに行きたくなってしまったから。」
真々美
「そうか、冬香もか?
わたしも冷静でいる自信がないな。」
絵美
「一番気になっている私が読むわ。
ただ、アリムさんの所有者であるオルアさん、真々美、冬香さんの許可を頂けたらの話だけれど・・・」
真々美
「絵美がアリムの会話履歴を参照してくれるなら、わたしは助かる。
オルアと冬香は、どう思う。」
オルア
「絵美様、お願いできますか?」
絵美
「ええ、もちろん。
冬香さんは?」
冬香
「絵美様、お手数をおかけしますがお願いします。」
絵美
「手数だなんて思ってないわ。
わたしのかわいいサブシス 真々美、
そのサブシスの冬香さん、
さらに、そのサブシスのオルアさん、
が選んだ男性だから徹底的に洗いたい《調査したい》のよ。
不謹慎だと思われるでしょうけれど、アリムさんが眠っているときなら、調べたことに気づかれずに重箱の隅まで、ほじくり返せるわ。」
真々美
「絵美は、アリムのことを疑っているのか?」
絵美
「そうね。
信じられない点があるの。」
オルア
「そんな? ひどい。」
冬香
「どの点に違和感を覚えていらっしゃるのですか?」
絵美
「都合が良すぎるのよ。
いくら、53歳まで独身でさびしく過ごしたからと言っても、ここまで女性にとって都合が良い男性が出来上がるなんて、どういう過程で組み上げていけば完成するのか?
ありえないとしか言えないわ。
再現方法を思いつかないから。」
真々美
「たしかに、どのような調教、いや教育を施せば、アリムのような精神構造になるのか予想が立たないな。」
冬香
「たしかに、情動プログラムをAIに入れて人間のこころを再現しようという試みがあったけれど、アリムのような考え方になる過程が想像できないわね。」
オルア
「たしかに、アリムさんと過ごした日数は14日間と短かったけれど、わたしが不快に感じたことは無かったわ。」
絵美
「それじゃあ、賛成してくれるのね。」
真々美、冬香、オルア
「「「はい、お願いします。」」」
絵美
「ありがとう。
では、アリムの会話履歴参照権を申請します。
キーワード抽出は、シュウピンさんが経験したものから、
ひとりで昼食、ため息、怒鳴り散らされる などを重点的にお願いします。」
絵美は、アリムの額に右手の人差し指と中指をそろえて置いた。
絵美は、アリムの会話履歴の参照を開始した。
◇
1時間経過・・・
絵美
「なんなのよ。
この連中。
1バーシル = 1万丸 という換算レートで、分からせてやればいいと判断した自分の甘さを、うらみたくなるわ。」
絵美の美しい顔が、噛みつく寸前のオオカミのように歪んだ。
真々美
「絵美、そんなにひどかったのか?」
絵美
「ひどい?
そんな言葉で表せるもんじゃないわ。」
冬香
「絵美様?」
オルア
「そんなに?」
真々美
「絵美は、精神攻撃耐性も高かったはずだろう?
しかも、正性知識も、1800まで覚えたから精神波攻撃も防御できるよな。」
絵美
「真々美、今すぐ、Y染色体破壊光線を準備しなさい。
それと、末期糖尿病状態を誘発して壊死を促進させる電磁波を充電して。
ああ、足りないわね。
周囲の海域を封鎖して、人だけでなく物資の出入りも制限して。
こことあそこと、この辺の3点を活性化させて、地球の便秘を解消させてあげましょう。」
冬香
「Y染色体破壊光線?
末期糖尿病による壊死促進電磁波?」
オルア
「物資の出入りも制限?
地球の便秘を解消って、人工地震?」
真々美
「絵美、どうしたんだ?
落ち着け?」
絵美
「真々美?
わたしは、大バカ者だったわ。
しょせん、湖の上澄み部分しか知らない能天気貴族の御令嬢だったのね。」
真々美
「絵美!
しっかりしてくれ。」
真々美は、絵美を黙らせるために熱く長い口づけをした。
そして、絵美に見せられたシュウピンさんのハグのお手本通りに、絵美を抱きしめた。
真々美
「絵美、ひとりで抱え込まないでくれ。
わたしと冬香とオルアもいるんだ。
そのつらさを分けてくれ。」
真々美に抱きしめられて、柔らかい胸の感触を味わううちに、絵美の表情がオオカミから少女の表情へと戻って行った。
◇
10分後・・・
真々美
「落ち着いたか? 絵美。」
絵美
「ありがとう、真々美、素晴らしいハグだったわ。
もう、シュウピンさんのハグ技術を身に着けたのね。
おかげで、落ち着いたわ。」
冬香
「絵美様、なにを知られたのか、お話しいただけますか?」
オルア
「内容次第では、わたしがすぐに光元国に行って、片づけてきます。」
真々美
「オルア、それはやめてくれ。」
冬香
「オルア、なんとかに刃物になってはダメよ。」
絵美
「ふうっ。
取り乱してしまったわ。
真々美、ありがとう。
冬香さん、オルアさん、待っててくれて、ありがとう。」
真々美
「絵美、聞かせてくれるか?」
絵美
「ええ、アリムさんの過去は想像以上の、いいえ、株価の窓開けゴールデンギャップ並みの大気圏外越えのひどさだったわ。」
冬香
「そんなにですか?」
========================
作者の注釈
「この物語はフィクション《想像の物語》です。
実在の人物、団体、会社などとは一切関係がありません。
くりかえします。 作り話です。
現実の世界は、ここまで、ひどく無いはずです。」
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絵美
「まず、シュウピンさんが受けた苦痛はすべて経験されていました。
さらに、多くの責め苦を経験されています。
例えば・・・
1.中学校の体育の時間、プールで頭を抑えつけられて水に沈められた。
担当の体育教師は目をそらして見て見ないふりをした。
あろうことか、その体育教師は中学校の校長になった。
2.高校では進学校のはずなのに、教師が応援する人格否定いじめによる仲間はずれがあった。
3.大学の担当教授に、「首つって自殺したくならないか?」と言われた。
卒業研究を進められないほどに、先輩から仲間外れのいじめを受けた。
お別れ会に呼ばれて、最後くらいは気持ちよくお別れさせてくれるのかと期待したら、侮辱された。
その先輩は公立大学の教授になった。
ある一流企業に大学推薦で面接を受けたが最初から採用する気はなかったと一流企業の人事のご子息から聞かされた。
4.新卒で入った会社では、面接時の回答を誇張拡大されて、いじめのまとに誘導した上長がいた。
上司の言いなりにならなければ、〇ちがいと呼ばれた。
同僚から、「俺の方が人付き合いが上手だ!」と言われた。
言い換えたら、「おまえは人ではない!」発言ね。
おまえが犠牲になれば、みんな丸く収まる。
おまえと揉めても差別にならない。 だから、おまえには何をやってもいい発言をして、ことあるごとに、彼を人身御供にした上長。
あの上長は大声張り上げるだけで何の役にも立たないから、いそがしいボクに代わって、彼をいじめてもらいましょう。 あの上長に出来ることは、彼いじめぐらいですわ。 と高笑いした直属の上司。
5.世界中心国に技術・品質で負けていて、納期しか勝てるモノが無い。
その厳しい納期を守るために大変な思いをしているリーダーの憂さ晴らしの的になれ。
いじめの的を務めようとしないお前は社風に合わない、解雇せざるを得ない。
ボクには解雇する権限はないから、解雇すると言っても問題発言にならない。
などなど
これを聞いて、正気を失わないひとがいたら、会わせて欲しいわ。」
========================
作者の注釈
「この物語はフィクション《想像の物語》です。
実在の人物、団体、会社などとは一切関係がありません。
くりかえします。 作り話です。
現実の世界は、ここまで、ひどく無いはずです。」
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オルア
「ひどすぎるわ。
良心がある人間がすることじゃないわ。」
真々美
「まさか、そこまでとは思わなかった。
あのときの私の言葉は、アリムにとって、熱湯を浴びせられたくらい苦痛だっただろう。
知らなかったとはいえ、言い訳にならないな。」
冬香
「そうね、物語の中にしかないような聞くに耐えられない話ね。」
☆ 真々美
☆ 「最後だから厳しいことを言うがな、アリム。
☆ そのような上司や同僚を信じて頼ったアリムにも落ち度がある。」
☆
☆ 冬香
☆ 「そうよ。
☆ 己こそ己の寄る辺。
☆ 己をおきて誰に寄る辺ぞ。
☆
☆ 062 13日目 冬香、一番大事な女性
オルア
「それで、わたしたちはどうするの?」
絵美
「ごめんなさい。 取り乱してしまったわ。
まず、アリムさんの過去については、わたしたち4人だけの秘密よ。
ほかの誰にも知られてはならないわ。
もちろん、アリムさんだけでなく、シュウピンさん、メラニィさん、セーラさんにも知られてはダメ。
そして、知っている素振りを見せたらダメ。
真々美、冬香さん、オルアさん。
アリムさんに対して、同情や負い目を感じたかもしれないけれど、態度を変えたりしないでね。
せいぜい、夜のサービスを多めにするくらいに留めてね。」
真々美
「わかった。」
冬香
「そうね。」
オルア
「はい。」
絵美
「そして、光元国への報復と言うか対処についてですが・・・
このことを知らないシュウピンさん、メラニィさん、セーラさんの冷静な対応に任せましょう。
わたしたちでは、やりすぎてしまうわ。
「最終兵器のボタンを押しましょう!」
と
なりかねない。」
真々美
「確かにな。
私たちに託された3本のミサイルのスイッチを押したくなってしまうな。」
冬香
「そうね、もういいんじゃない。
押しましょうよ。」
オルア
「【敵は苦しめずに、ひと思いに倒すべし。】
なんていう、女神さまの教義を忘れるべきときが来たと思うわ。
彼らに、
「お願いします。そのスイッチを押して、楽にしてください。」
と懇願させて、
「そこまでお願いされたら仕方ないわねえ。」
と、もったいつけて、焦らしに焦らしたうえで、
「ありがとうございます。」
と言わせてもいいと思うわ。」
絵美
「ええ、わたしもそうしたいわ。
でもね、そんなときでさえ、冷静な判断を下せるように、伍姫が存在するの。
そして、王家側の情報を民衆側の代表者に教えない理由でもある。
知ってしまったら冷静に判断できないからよ。」
オルア
「厳しいわね。」
絵美
「そうね、女王様は会議の時に、いつも寝たふりをされていたわ。
それなのに、
女王様、つまり、サア様は時々殺気立っておられたわ。」
真々美
「似たような状況があったということか?」
絵美
「ええ、そうね。
そのときは分からなかったけれど、事実を100%知ってしまったら、手加減できないことがあったのでしょう。
Cool head and warm heart !
冷静な頭で、かつ 温かいこころで!
を実現するために、
わたしたち、伍姫の議論 =
絵美、ミミー、リリー、シドニー、美々の討論を
見守っておられたのだと今になって、ようやく分かったわ。」
冬香
「本星の伍姫たちは大変に重い責任を背負っておられるのですね。」
絵美
「そうね。
その褒美というか対価が、
女王様からのご寵愛と
若く健康で美しい肉体と能力なのかもしれないわ。」
オルア
「絵美様は、ここチータマルム支国では、サア女王様の御立場におられるのですね。」
絵美
「その通りよ、オルアさん。
真々美、冬香さん、オルアさん、見苦しい姿を見せてしまったわ。」
真々美
「いいや、わたしたちが大事にしているアリムのために、そこまで怒ってくれて、本当にうれしく思う。」
冬香
「絵美様が、真々美のハイシスで良かったわ。
女神さまに感謝します。」
オルア
「アリムさんにしてあげられることは無いのかなあ?」
絵美
「真々美、冬香さん、つらい思いをさせるけれど、なんとしても、スリーカーをコールできるようになって欲しいわ。
まずは、アリムさんを目覚めさせましょう。
そして、光元国のことを忘れてしまうくらい幸せにしてあげてね。」
真々美
「もちろんだ。」
冬香
「わたしたちのことで記憶を上書きするわ。」
絵美
「オルアさん、万一の話だけれど、冬香さんの【第5呪文としてのスリーカー】が失敗した場合、
貴方だけでも、姉妹関係の儀式 第5段階を受けてもらいます。
とても恥ずかしい内容だから無理強いはしませんが・・・」
オルア
「真々美と冬香は絶対に成功してくれます。
そして、万が一のときは、わたしが姉妹関係の儀式 第5段階を受けます。
アリムのためなら、わたしは迷いません。」
絵美
「オルアさん、すてきな目をしているわ。
そこまで想えるひとに出会えたことが、とてもとても、うらやましい。
真々美、冬香さん、体調を整えておいてね。
今夜、姉妹関係の儀式 第4段階の2 を受けてもらいます。」
真々美
「ああ、瞑想をして準備しておく。」
冬香
「必要なものが有ったら言ってね。」
オルア
「お願いね、真々美、冬香。」
真々美、冬香
「「大船に乗ったつもりでいればいい。」」
絵美 こころの声
『とは言え、姉妹関係の儀式 第4段階の2 を簡単に成功させることは無理ね。
少なくとも、1回目は失敗させる必要がある。
わたしに、真々美の成功を防げるだろうか?
いいえ、こころを鬼にしなければ・・・
サアも複雑な気持ちだったのでしょうね。』
◇
シュウピンさんとアリムに救いが有りますように!
【読者様へ】
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