046 8日目 シュウピンとメラニィの夜
メラニィは、シュウピンに言いたい文句が山ほどあるようだ。
◇
8日目 夕方
(2日に一度の会議がある日、
第1回襲撃予測日の前日)
8日目 PM 18:00
メラニィはシュウピンの個室に来ている。
メラニィ
「ピンポーン。」
シュウピン
「おかえりなさい。メラニィ。」
メラニィ
「ただいま、シュウピン。」
シュウピン
「お仕事お疲れさまでした。
わたしにする?
ウェンさんにする?
それとも、シュウピンさんにする?
好きなのを選んでね。」
メラニィ
「全部、シュウピンじゃないか?」
シュウピン
「そうとも言うわね。」
メラニィ
「いっしょにお風呂に入ってから、ごはんにしよう。
それから、ベッドの中でじっくりと尋問させてもらおうか?」
シュウピン
「もしかして、わたしの好きな体位とか好きな攻められ方を聞き出したいの?
純情で真面目そうに見えて、ドスケベね、メラニィは。」
メラニィ
「目の前にいる誰かさんに開発されたからな。」
シュウピン
「わたしの目の前にいるひとは、メラニィ、あなただけよ?
自分で開発したことを自慢する人は初めてのタイプね。」
メラニィ
「シュウピンの目の前ではなくて、わたしメラニィの目の前にいるシュウピンに、わたしが開発されたって言ってんだよ!」
シュウピン
「イライラしているのね。
あとで、出汁用の煮干しを出すからたっぷり食べて、カルシウムを補給してね。」
メラニィ
「はあ、誰のせいだと思ってんだ!
風呂に入るぞ。
ついてこい。」
シュウピン
「はあい。」
メラニィとシュウピンは風呂に入った。
シュウピンはメラニィの身体を洗って、ご奉仕した。
その後、ふたりは湯船に入り対面で話をしている。
メラニィ
「はあ、また喰われたか。」
シュウピン
「かわいい女の子の宿命と思って、あきらめてね。」
メラニィ
「たく、小シュウピン?
あなたのお母さんと話が通じなくて、困ってるんだ。
どうすれば良いか、教えてくれないか?」
シュウピン
「普通に上のくち同士で話せばいいわ。
今日は、本当にありがとう。 メラニィ。
あなたが気付いてくれて助かったわ。」
メラニィ
「まさかとは思うが、会議の時に盗聴されていたのか?」
シュウピン
「そうよ。
さすがのメラニィさんが気付いてくれて頼りになると思ったわ。」
メラニィ
「残念ながら気付いたのは、真々美様とアリム様だ。
わたしはなにかおかしいと思ったが、違和感の正体に気付けなかった。」
シュウピン
「真々美様はいつお気づきになられたの?」
メラニィ
「おやつのりんごを取りに行かれた時だ。
そのとき、アリムさんに相談されたらしい。」
シュウピン
「真々美様、素敵、お慕いしています。」
メラニィ
「で、盗聴について説明してくれないか?」
シュウピン
「いつからなのかは思い出せないけれど、わたしが聞いたことを、モンテハート大公爵が聞けるようになっていたわ。
そして、わたしもモンテハート大公爵が聞いたことを聞くことが出来る。
ただし、意識して聞こうとしたときに限定されるようね。」
メラニィ
「テレパシーの一種なのか?」
シュウピン
「わたしは送信しているつもりはないわ。
そして、向こうはわたしが受信できることを知らないようね。」
メラニィ
「いま、聞かれているかどうかは、どうやって知るんだ?」
シュウピン
「かすかに反響するのよ。
わたしが言ったこと、聞いたことが繰り返されて聞こえるときに盗聴されていると判断しているわ。」
メラニィ
「いままでの会議では盗聴されていなかったのか?」
シュウピン
「ええ、ここしばらくは盗聴されていなかったから忘れていたわ。」
メラニィ
「盗聴されているときに私に知らせるための合図のようなものを決めてくれないか?」
シュウピン
「『心配は要りません。』と言ったら、盗聴されていると思ってくれると助かるわ。
今日の会議みたいに。」
☆ シュウピン
☆ 「信頼できる者たちで、操作員と警備員を固めています。
☆ だから、心配は要りません。」
☆
☆ シュウピン
☆ 「確保できています。
☆ だから、心配は要りません。」
☆
☆ 040 8日目 真々美とアリム
メラニィ
「そう言えば、繰り返していたな。
シュウピンにしては気楽に考えていると違和感を感じた。」
シュウピン
「真々美様も気付いてくださったのかしら?」
メラニィ
「その可能性が高いな。
だから、アリムさんと相談して、アリムさんを話題提供者として会議の場に連れてきたようだ。
その意図が分からなかった私は、会議の場に顔を見せたアリム様の厚かましさにイライラしていたけどな。」
シュウピン
「あらあ、それは悪手ね。」
メラニィ
「仕方ないだろう。
本来であれば、オルア様が会議を聞くことでさえ、厚かましいのだからな。」
シュウピン
「そうではなくて、厚かましいのはあなたよ。 メラニィ。」
メラニィ
「どうしてだ?」
シュウピン
「アリム様の子種をもらおうという立場のあなたがアリム様に悪態をつくなんて、どう考えても悪手よね?
アリム様に嫌われたら、どうするつもりなの?」
メラニィ
「ふん、そのときは、ほかの男性に頼むだけさ。」
シュウピン
「それは、無理ね。」
メラニィ
「なぜ?」
シュウピン
「わたしが認めないし、邪魔をするわ。」
メラニィ
「そこまで、アリム様を評価する理由はなんだ?」
シュウピン
「今日の会議で分かったでしょう。
アリム様はすでに真々美様の信頼も勝ち得ているわ。
冬香様とオルア様以外で真々美様が相談しようとした相手はアリム様が初めてよ。
それに、アリム様は私の意図をすべて理解してきたわ。
とても稀有な存在ね。SSRだわ。
もし、オルア様がアリム様と別れることになったら、すぐに拾いに行って口説き落とすわ。」
メラニィ
「だからと言って、私を巻き込まなくても良いだろう。」
シュウピン
「じゃあ、わたしがアリム様より上だと思う男性を連れてきてよ。」
メラニィ
「めだかより小さくて、クジラより大きい魚を捕まえる方が簡単だな。」
シュウピン
「イルカはダメだからね!」
メラニィ
「ううっ、わたしにどうしろというんだ。」
シュウピン
「アリム様に好きになってもらう努力をしてね。
それが無理なら嫌われない努力をしてね。」
メラニィ
「そうは言われても、なんだかイライラするんだよな。」
シュウピン
「理由を教えてあげましょうか?」
メラニィ
「ほう、参考までに聞かせてもらおうか?」
シュウピン
「メラニィはねえ、アリム様が自分のものでないことが気に入らないのよ。」
メラニィ
「どういう意味だ?」
シュウピン
「一度は手放したおもちゃやペットを他人が気に入って大事にしていると、返して欲しくなるものよ。」
メラニィ
「アリム様が、それだと言うのか?」
シュウピン
「その通りでしょ!」
メラニィ
「かもしれないな、と言ったらどう思う。」
シュウピン
「人間なら誰もが持つ普通の感情よ。」
メラニィ
「そうなのか?」
シュウピン
「だからこそ、説明がつく感情の動きなのだから、理性でコントロールできるはずよ。
メラニィならできるわ。」
メラニィ
「そうかなあ?」
シュウピン
「そうよ、そろそろ本題に入っていいかしら?」
メラニィ
「ああ、どうぞ。」
シュウピン
「冬香様が見つけた元男性の女性は、どうなったの?」
メラニィ
「襲撃予定日の行動を見てから判断することになった。」
シュウピン
「そう、ねえ、メラニィ?
聞いておいて欲しいことがあるの。」
メラニィ
「なんだ。」
シュウピン
「そのひとは違うと思う。」
メラニィ
「なぜ、そう思う?」
シュウピン
「わたしがクラスター認定したからよ。」
メラニィ
「どういうことだ。」
シュウピン
「個人的に知っている子なのよ。
精神は安定しているし、能力にも問題は無かった。
元男性ということが唯一の欠点で認定しないことはもったいないと思えた。」
メラニィ
「でも、モンテハート大公爵の誘惑に乗ったんだろう?」
シュウピン
「乗ったというよりは、断ったら生きて帰れないから、受けた振りをしていると思う。」
メラニィ
「じゃあ、決まりじゃないか?」
シュウピン
「いいえ、おそらく、バリアを止める依頼をされたひとはもう一人以上いるはず。」
メラニィ
「なぜだ?」
シュウピン
「大事な役目をひとりだけに任せるはずがないからよ。」
メラニィ
「第1回と第2回の襲撃予定では、ちがう者がバリアを止めるというのか?」
シュウピン
「おそらく、そうね。
そして、第2回の襲撃予定日には、バリアの制御装置が壊されるはずだから、バリアは復活できない。」
メラニィ
「あのときエアコンの寒さで震えていたくせに、上着を羽織らなかったのは、それを示すためか?」
シュウピン
「ええ、メラニィ、あなたが分かって、上着を掛けてくれたときは、ホッとしたわ。」
メラニィ
「それは、アリム様が教えてくれたからだ。」
シュウピン
「そう、すごいわね。
アリム様は。」
メラニィ
「なにか、おかしいな。
アンバランスさを感じるな、アリム様には。」
シュウピン
「アンバランスさとは?」
メラニィ
「そこまで賢いのになぜ、不遇な目に合っているんだ?
いじめやハラスメントを仕掛けてくる相手を跳ね返せなかった理由が分からない。」
シュウピン
「考えられる理由は2つ。
1つ目は、50歳を過ぎてから完成した遅咲きだった場合。
2つ目は、どこかの神からの加護が働くことがある場合。」
メラニィ
「1つ目だとすると、ずいぶんレベルアップが遅いな。
2つ目だとすると、いじめやハラスメントを跳ね返すことには加護が働かないから納得だな。
神様の加護は、早く逃げろ!で済むことには使用されないからな。」
シュウピン
「家庭の事情かなにかで逃げることが出来ず、人生を浪費したのでしょうね。」
メラニィ
「きっとそれだろうな。」
シュウピン
「ねえ、メラニィ?
今なら、アリムさんの子種を受けたいと思うかな?」
メラニィ
「求められたら受けるかもな。
でも、私から求めるしかないのだろう?」
シュウピン
「そうね、待っていてもダメね。
まだ時間はあるから、アリム様とのことは後回しでいいわ。」
メラニィ
「ああ、時間をくれないか。
今回の襲撃を跳ね返したあとでも遅くないだろう。」
シュウピン
「そうね。
とりあえず、元男性の女性については様子を見て欲しい。
もし、冬香様の気が変わりそうなら、そう伝えて欲しい。」
メラニィ
「分かった。
でも、事前に防ぐ方法は無いのか?」
シュウピン
「事前に防ごうとしたら、この船の動力を破壊されて、カセイダード王国にたどり着けなくなって負けね。
漂流した挙句、餓死することになるわ。」
メラニィ
「後手後手だな。」
シュウピン
「そうね、でも・・・
メラニィがアリム様に力を貸してくれるなら、乗り越えられると信じているわ。」
メラニィ
「つまり、わたしがアリム様に嫌われたら、襲撃に負けるということか?」
シュウピン
「そうなるわね。」
メラニィ
「そうか、お口を慎むように努力するとしよう。」
シュウピン
「よろしくね。
じゃあ、そろそろ出て、食事にしましょうか?」
メラニィ
「そうしよう。」
◇
ふたりは食事と歯磨きを終わらせた。
シュウピン
「メラニィ、もう十分に理解したと思うけれど、これからの会議はすべてモンテハート大公爵に盗聴されると考えて欲しい。
つまり、わたしの発言は当てにできないことが多い。
しかも、わたしたち全員が盗聴される前提で実際とは反対のことを決定したと発言する必要があるわ。」
メラニィ
「今日のアリム様のようにか?」
シュウピン
「そうね。
アリム様がこういう芝居が得意で良かったわ。」
メラニィ
「趣味で推理小説でも書いているのかもしれないな。」
シュウピン
「そうね、そして、わたしが本当の情報を話せる時間は、モンテハート大公爵がお盛んな時刻、つまり、勤務時間外の夜から深夜しかないことになるわ。」
メラニィ
「そのために私を口説いたのか?」
シュウピン
「それだけじゃないわ。
言ったでしょう。
わたしは全部欲しいのよ。
最後になにか質問があるかしら?」
メラニィ
「第1回の襲撃は跳ね返せると思うか?」
シュウピン
「それは、できるでしょうね。
潜水服で上がってきた私兵どもを拘束して、吐かせて、処理すれば良いだけ。
その後はリサイクルして良い資金源になるでしょう。
戦争じゃないから捕虜交換も考えなくていいからね。
そして、裏切った乗組員は、襲撃で殺されたとか、行方不明になるでしょうね。」
メラニィ
「涼しい顔して、よく言えるな。」
シュウピン
「裏切者が二度と裏切らないとは思わないからね。
二重否定をやめて言えば、裏切者はふたたび裏切る、ね。」
メラニィ
「そうだな、信用は10年かかるが、裏切りは1秒で済むということだな。」
シュウピン
「もう質問はない?
それなら、本題に行きたいけれど。」
メラニィ
「ああ、とりあえず大丈夫だ。
そして、本題とはなんの話だ?」
シュウピン
「こちらに来てくれる?」
メラニィ
「ああ。」
◇
シュウピンは、メラニィの足を引っかけて、ベッドの上に自分を押し倒させる体勢にした。
シュウピン
「まあ、ベッドがある部屋に着くなり、私を押し倒すなんて情熱的ね。」
メラニィ
「それは、シュウピンが足を引っかけたからだろうが。」
シュウピン
「メラニィ、わたしの頭の中に、あの愚物が残ったままで眠るのは嫌よ。
全部、あなたで上書きして欲しい。
さあ、来て!
わたしの頭の中だけでなく、全身をあなたで染めて欲しい。」
メラニィ
「シュウピンの方が、ずっと情熱的だぞ。」
シュウピン
「真々美様とメラニィ限定モードよ。」
メラニィ
「真々美様の名前が出ると面白くないが、真々美様の名前が添えられていると真実味が増すな。」
シュウピン
「さあ、来てちょうだい。」
メラニィ
「すべて、わたし色に塗りつぶしてやるから覚悟しろ。」
◇
1時間経過・・・
シュウピン
「ふうっ。
素晴らしかったわ。」
メラニィ
「そうなのか、ずっと表情が変わらなかった気がするが、気を遣って言ってないか?」
シュウピン
「とても満足しているわ。」
メラニィ
「なら良いが、もう少し反応が欲しいところだな。」
シュウピン
「色っぽい声を出して欲しいの?
メラニィみたいに?」
メラニィ
「うっ、そうしてくれると張り合いが出るな。」
シュウピン
「いつかそうできる日が来ればいいと思うわ。
できることなら、メラニィの顔をこの胸に抱きしめて、動かなくなるまで続けたいと思うくらい愛しているわ。」
メラニィ
「そんなことされたら、窒息してしまうからやめてくれ。」
シュウピン
「気をつけるわ。
なあに? どうしたの?
わたしの胸をつかんで、熱い目で見ているわね。」
メラニィ
「シュウピンの胸は大きいな。
真々美様、冬香様、オルア様より大きいように思う。
バストは何cmなんだ?」
シュウピン
「さあ、測ってくれる?」
シュウピンはメラニィに巻き尺を手渡した。
メラニィ
「バスト 97cm、アンダーバスト 70cm、ウエスト 65cm、ヒップ 95cm
すばらしい肉体だな。」
シュウピン
「メラニィも測ってあげるわ。
バスト 93cm、アンダーバスト 70cm、ウエスト 65cm、ヒップ 95cm
あなたもすばらしい肉体をしているわ。」」
メラニィ
「あと2cm、バストサイズが欲しいな。」
シュウピン
「大きくなるマッサージをしてあげましょうね。」
メラニィ
「あっ、ちょ、ちょっと・・・」
シュウピン
「遠慮しないでね。
さあ、ちからを抜いて。
わたしとおなじ大きさになるまで、マッサージしましょうね。」
メラニィ
「やあぁ、だ、ダメぇ。」
シュウピンとメラニィは、いつ眠りに落ちたか、覚えていなかった。
9日目 朝
(2日に一度の会議が無い日、
第1回襲撃予測日)
に続く・・・
◇
愛し合うことは素晴らしいですね。
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