042 8日目 昼食デート
モンテハート大侯爵
「アリムとか言う小僧は、幼稚園児並みの頭脳しかないのか?
なーにが、お結びころりんスッテンテンだ。
目障りだから、消えてもらおう。」
執事
「それよりも、オルアさんに言うことを聞かせるための人質にする方が良い使い道ではないですか?」
モンテハート大侯爵
「なんという悪知恵が働くのか?
恐ろしい奴だな。」
執事
「大公爵様の入れ知恵でございます。」
大笑いするモンテハート大侯爵にあわせて、大笑いする執事であった。
◇
8日目 PM 00:00
真々美の居室。
真々美
「アリムさん、アリムさん、起きてくれ!」
アリム
「あっ。 真々美さん、おはようございます。」
真々美
「良く眠っていたぞ。
お疲れさまでした。
ごはんよりも私を食べるか?」
アリム
「す、すみません。
いっしょに、ごはんを食べに行きたいです。」
真々美
「そうか、では身支度をしてくれ。」
8日目 PM 00:10
真々美
「アリムさん、さあ行こうか?」
真々美はアリムさんに向かって、左ひじを突き出した。
アリム
「あの? こ、これは?」
真々美
「腕を組んで歩こうと誘っているのだが、分からないか?」
アリム
「でも、男女が逆ではないですか?」
真々美
「男女がどちら側って決まっているのか?」
アリム
「あ、あの? それって?」
真々美
「遠慮しなくていいのだぞ。
男の子は、こういう腕の組み方に、あこがれるものだろう。」
アリムさんは、嬉しそうに真々美の腕を抱いて、頭を真々美の肩にもたれた。
アリム
「幸せですう!」
真々美
「喜んでくれて、なによりだ。」
◇
真々美とアリムさんは、食堂に着いた。
真々美
「さあ、ここでお昼ご飯を食べよう。」
アリム
「ここ、昨日、オルアさんと来ました。」
真々美
「そうか、冬香もオルアも、この食堂の味が好きだからな。
明日も来ることになるぞ。
冬香には、昨日も来たとか言わないでくれよ。
気を遣って、他の店にしようとするからな。
冬香の食べっぷりを見ると、いつもは見せない一面が見れて、より好きになれるぞ。」
アリム
「はあい、気を付けます。」
真々美
「良い返事だ。
わたしは、牛丼の特盛 つゆ多めと玉ねぎのみそ汁にする。
アリムさんは、どうする?」
アリム
「真々美さんと同じものを食べたいです。」
真々美
「かわいいな。では、そうしよう。
食券を買ってくる。
ささやかだが、おごらせてもらおう。」
アリム
「ありがとうございます。」
真々美
「アリムさん?
他人行儀な言い方はやめて欲しいな。
ありがとう。
と言って欲しいな?
言い直してくれないか?」
アリム
「真々美さん、ありがとう。」
真々美
「どういたしまして。」
真々美は、うれしそうな笑顔を見せた。
真々美 こころの声
『一歩ずつ、一歩ずつ、距離を詰めていこうな。
アリムさん。』
アリム
「真々美さん。」
真々美
「どうした?
アリムさん?」
アリム
「あ、あのね。
真々美さんのそばにいるとドキドキして、食事ができないかもしれない。」
真々美
「かわいいな、アリムさんは。」
アリム
「へ、変と思いますか?」
真々美
「いいや、嬉しく思うぞ。
3大欲求の、食う、寝る、やる の姿を見せることを恥ずかしく思うことは、相手を異性として意識している証拠だから、うれしくてたまらない。
しかし、今夜は、すべての姿を見せてもらうぞ。」
アリム
「そ、そんなあ、恥ずかしい。」
真々美
「くっ、くっ、くっ。
あきらめるんだな。
まずは、ひとりのときと同じように食事をしてもらおうか?
あれ?
オルアと一緒の時は、どうしているんだ?」
アリム
「オルアさんとは、おはようからおやすみまで一緒ですから、いっしょに食事することが当たり前に感じるようになりました。
ドキドキはしましたが、お互いの顔を見ながら食事する方が、気持ちが落ち着くようになりました。」
真々美
「ごちそうさまでした。」
アリム
「まだ、食べてませんよ。」
真々美
「あ、ああ、これは、熱々のアツアツカップルの話を聞いたときに言う決まり文句だ。」
アリム
「恋愛マンガに、よく出てくる表現ですね。
まさか、自分自身が言われることがあるとは思いませんでした。」
真々美
「ふうん?」
アリム
「どうしましたか?」
真々美
「いや、これからが楽しみになっただけだ。」
店員
「お待たせしました。
どうぞ、みそ汁は熱めなので、お気を付けください。」
アリム
「ありがとう。」
真々美
「ありがとう。」
店員 こころの声
『昨日、オルア様といっしょだった男性よね。
今日は、真々美様と一緒なの?
もしかしたら、明日は冬香様と一緒なんてことはないわよね?』
アリム
「いただきます。」
真々美
「いただきます。」
お上品に食べるアリムさんと、男前に食べる真々美でした。
当然、真々美の方が早く食べ終わった。
アリム
「ご、ごめんなさい。
急ぎますね。」
真々美
「いや、ゆっくりと食べなかった私が、配慮が足りなかったな。
ゆっくりと食べてくれ。
かわいく食べるアリムさんを見ることも一興だからな。」
アリム
「ありがとう。」
真々美
「ああ、これからも、そういう話し方をして欲しい。」
アリムさんは、真々美にやさしく見守られながら、ゆっくりと食べることができた。
アリムさんは、せかされないで食事できることに、幸せを感じていた。
◇
アリム
「ごちそうさまでした。」
真々美
「ああ、この味を気に入ってくれると、うれしいな。」
アリム
「お肉が柔らかくて、食べやすかったです。
高級な牛肉を使っているのでしょうか?」
真々美
「いいや、安い肉のスジ肉を3日間くらいかけて煮込んだ成果だな。」
アリム
「真々美さんは、ぜいたくはされないのですか?」
真々美
「わたしにとってのぜいたくは、健康で美しい肉体を持てて、冬香とオルアとともに過ごすことだな。
これからは、アリムさんも加わることになる。
よろしく頼むぞ。」
アリム
「はい、うれしいです。
そう言えば、オルアさんも、真々美さんも、冬香さんも、高価なアクセサリーや香水などはお付けにならないのですね。」
真々美
「わたしたちは、自分の顔と容姿を気に入っているからな。
余計なもので着飾る必要がないと考えている。
高価な時計や高い宝石などは、自分自身に魅力と自信を感じられない努力をしなかった怠け者が身に着けるものと思っているからな。」
アリム
「なんか格好いいです。」
真々美
「そうか、アリムさんもカッコいいぞ。」
アリム
「オルアさんも、真々美さんも、冬香さんも、ウェンさん、オネスティさんも、お顔がきれいです。
お化粧をされているのですよね?」
真々美
「いや?
せいぜい、口紅をつける程度だな。
万が一、不意打ちでキスされたら嫌な相手がいる社交の場に行くときにだけな。」
アリム
「すっぴんで奇麗なのですね。」
真々美
「化粧をすると、肌が老化するから、損だぞ。」
アリム
「あ、それ、納得です。」
真々美
「アリムさんは化粧をするのか?」
アリム
「顔や手にクリームを塗って、くちびるにリップクリームを塗るくらいですね。」
真々美
「それが最良だな。」
アリム
「でも、できれば・・・」
真々美
「できれば、どうしたいんだ?」
アリム
「ピンクのリップクリームを塗りたいです。」
真々美
「それは、止めたほうがいいな。」
アリム
「そうですよね。」
アリムさんは、さびしそうな表情を見せた。
真々美
「わたしたちの前に、ピンクのリップクリームを塗って現れたら、3秒以内に押し倒してしまうだろう。
そうなっても良ければ、ピンクのリップクリームを塗ってきてくれ。」
アリム
「男性がそうしても良いと思いますか?」
真々美
「性別ではなく、似合うかに合わないかだな。
厳しい言い方をすれば、美しければ男女を問わない。
それなりのひとは、似合わないから止めた方が良いと思う。」
アリム
「厳しいですね。」
真々美
「現実は残酷だぞ。
だからこそ、ウェストサイズには気をつけた方がいいな。
お腹が出ている状態は、
わたしは賞味期限切れです。
と、人生をギブアップしているような状態だからな。」
アリム
「夜遅くまで残業したり、睡眠不足で健康が維持できないと、すぐにお腹が出て太りますね。
それと、人間関係で悲しい目にあわされたりすると、お腹がでます。」
真々美
「アリムさんのウエストは、何センチだ?」
アリム
「今は、73cmです。
でも、つらい仕事をしていたときは、88cmでした。」
真々美
「それは、ひどいな。
でも、カセイダード王国に来て、わたしたちと過ごせば、その体型を維持できると思う。
維持できなかった場合は、わたしたち3人の落ち度だな。」
アリム
「少なくとも、オルアさんが一緒にいてくれてからは幸せです。
これからは、真々美さんと冬香さんも一緒に過ごしてくれるのですよね。」
真々美
「ああ、そうなる予定だ。」
アリム
「どうか、末永く一緒に居てくださいますように、お願い申し上げます。」
真々美
「わたしの目標は、アリムさんに他人行儀な言い方をさせないことだな。
時間は掛かるだろうが、
一緒にいたい!
と、あっさりとした言葉を言ってもらえる日を楽しみにしているよ。」
アリム
「はい。」
真々美
「うむ。では行こうか?」
真々美さんは左手を真横に伸ばした。
アリム
「ええと、わたしは、どうすれば?」
真々美
「わたしの腕の中に入っておいで。」
真々美は、アリムさんの肩を抱き寄せた。
アリム
「あ、どきどきする。
うれしいです。」
真々美
「ああ、わたしもうれしい。
歩きにくいかもしれないが、わたしにもたれかかってくれたらいい。」
アリム
「あ、あの?」
真々美
「どうした?」
アリム
「そ、その胸が・・・」
真々美
「ああ、当て方が足りないかな?」
アリム
「い、いえ、とてもうれしいです。
でも、真々美さんは良いのですか?」
真々美
「わたしの胸と腕にはさまれて、顔を赤くしているアリムさんを見ると幸せを感じるぞ。
それとも、アリムさんが私の肩を抱く方が好みかな?」
アリム
「できれば、このまま寄り添っていたいです。」
真々美
「正直な感想、ありがとう。
では、しばらく歩こうか?」
アリム
「はい、真々美様。」
アリムさんは、とろんとした表情をしている。
真々美
「真々美さんと呼んでくれ。」
アリム
「はい、真々美さん。」
真々美
「アリムさん、あの方向に歩き出そうか?」
アリム
「はい、ぜひ。」
真々美とアリムは仲良さそうに歩いて行った。
◇
真々美
「アリムさん、見てごらん。
夕日がきれいだぞ。」
アリム
「本当ですね。
こんな美しい夕日は初めてです。」
真々美
「わたしもだ。
夕食の買い出しをしようか?
わたしは料理をすることは得意だぞ。
ただ、後片付けの皿洗いは苦手だがな。」
アリム
「真々美さんの手料理を食べたいです。
お礼にお皿を洗いますね。」
真々美
「ああ、助かる。」
アリム
「真々美さん、あ、あのね。
そ、そのう。」
アリムさんは、真々美さんの目をじっと見つめて、真々美の顔を見上げて目を閉じた。
真々美
「ああ、分かった。」
真々美は夕日を背景にして、アリムさんに優しいキスをした。
アリム
「うれしいです。」
真々美
「わたしもだ。
さあ、買い物をして帰ろうか?」
アリム
「はい、あ、あの帰りは、また腕を組んで歩きたいです。
も、もちろん、人通りが多くなったら離れますから安心してください。」
真々美
「さあ、どうぞ。
そして、家に帰るまで離れなくて大丈夫だ。
料理するときは包丁を使うから離れていて欲しいがな。」
アリム
「ほ、本当にいいのですか?」
真々美
「ああ、もちろんだ。
おねだりしてくれて、うれしいぞ。
アリムさん。」
アリム
「真々美さん。
ありがとう。」
真々美とアリムは買い物中も腕を組んで歩いた。
◇
幸せそうなアリムさんと、最高のエスコートができたことに満足している真々美さんでした。
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