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040【挿絵】 8日目 真々美とアリム(ナイトバインド)

 オルアと朝食を食べたあとで、アリムさんはオルアに連れられて、真々美の個室にやってきた。


 真々美の部屋の中で・・・


真々美

「おはよう、アリムさん。

 今日はわたしとのナイトバインドの日だな。」


アリム

「おはようございます。 真々美さん。

 よろしくお願いします。」


真々美

「ああ、だが、

  おはようございます。

なんて、他人行儀は止めて、

  おはよう!

と言って欲しいものだな。


 やりなおそうか?


 おはよう、アリムさん。」


アリム

「おはよう、真々美さん。」


真々美

「よし、いい感じだ。


 今日の昼は、外に食べに行こう。

 だから、昼食の準備は不要だ。


 わたしの個室を眺めていてくれ。

 手に取ってみたいものがあったら、遠慮なく見てくれ。


 できるかぎり、もとの場所に戻してくれると助かる。


 それと・・・


 それとだな。


 たまっている洗い物を片づけてくれたら、うれしい。


 量が多いから、わたしの個室を見る時間の半分ほどの時間を割いてくれたら助かるのだが、無理はしないでくれ。」


アリム

「はあい、じゃあ、嫌にならない程度にしますね。」


真々美

「じゃあ、行ってくる。

 12時くらいに戻るから、そのつもりでいてくれ。」


アリム

「はあい、行ってらっしゃい。」


真々美

「行ってきます。」


8日目 AM 08:50





8日目 AM 09:00


 真々美の司令室にて


真々美

「オルア、昨日は満足したみたいだな。」


 オルアはとても機嫌が良さそうだ。

 目もキラキラ輝いて、肌のつやも最高で、立ち居振る舞いから余裕が見える。


オルア

「ええ、もう最高よ。

 次の3日後が待ち遠しいわ。」


冬香

「しあわせそうなオルアを見れて、わたしたちも嬉しいわ。」


オルア

「だけどね・・・」


オルアは少し悲しそうな顔をした。


冬香

「オルア、なにがあったの?」


冬香は戦闘開始前のような顔をしている。


真々美 こころの声

『えっ? さっきまでのオルアのうれしそうな顔はなんだったんだ。』


オルア

「アリムさんは、とっても純情だった。

 私の方が、ドスケベ変態だった。


 アリムさんの性癖をうたがった自分が恥ずかしいわ。」


冬香は、聖母のような笑顔を取り戻し、優しい声で言った。


冬香

「そう、良かったじゃない。

 好きな異性を前にしたら、男女問わず、ドスケベになることが正しいわ。」


オルア

「冬香ー、ありがとう。」


真々美 こころの声

『びっくりさせないでくれ!』


冬香 こころの声

『アリムさんのことを疑うなんて、一瞬前の自分に文句を言いたくなるわ。

 それにしても、オルアも、まぎらわしい態度を取らないで欲しいわね。


 オルアは、アリムさんがからむと、ただの恋する女の子ね。』


真々美

「アリムさんは、どうだった?」


オルア

「うん、運命の赤い糸の話をしてくれたわ。

 真々美と冬香にも同じ話をすると言っていたから、楽しみにしていてね。」


真々美

「そうか、アリムさんはオルアをはげしく求めてくれたか?」


オルア

「えへへ。」


冬香

「どうだったの?」


オルア

「攻守交代するの、わすれちゃった!

 気付いたら、アリムさんは気を失っていたわ。

 仕方ないから、アリムさんを抱きしめて、そのまま寝たわ。」


冬香

「そ、そうだったの。」


真々美

「ごちそうさま。」


真々美 こころの声

『とすると、アリムさんは経験不足のままだな。

 実質的な初体験の相手はわたしになりそうだな。


 男性に生まれて良かったと思わせてあげたいものだな。』





真々美の台所にて


アリム

「すごい量の食器が台所に残っている。

 流し場が空いていることが不思議なくらいだ。


 やはり、気を遣って、洗いやすいように片づけてくれたのだろうか?」


アリムは、洗濯場に移動した。


アリム

「洗濯物は、たまっていないようだ。」


アリムは、真々美の個室に移動した。


きれいに片付いている。


そして、姉妹関係を成立した記念日の写真が飾られてある。

挿絵(By みてみん)


アリム

「ということは、皿洗いさえできたら、真々美さんの部屋を探検できるな。


 食器を下洗いして、食器洗い乾燥機にセットしたら、その待ち時間で真々美さんの個室を探検しよう。」


アリム こころの声

『うーん、残念ながら、下着は干してないし、見当たらない。

 オルアさんの下着が1組干してあったのは、ボクへのサービスだったみたいだ。

 ありがとう。 オルアさん。』





8日目 AM 10:00


真々美の司令室には、丸いテーブルの前に5人が集まっていた。

5人とは、もちろん、真々美、冬香、オルア、メラニィ、シュウピンのことだ。


それぞれ、10時、8時、6時、4時、2時の席にいる。


シュウピンは、こっそりと盗聴器を回収した。

その様子に、真々美と冬香は気付いたが気付かないふりをした。

メラニィは、ほっとした。

オルアは、昨日の夜に満足していたので、細かいことを気にしなかった。


真々美

「今日の議題は、

  1.バーシルの換算レートをあげた後で、光元国の通貨丸の使い道をどうするか?

  2.海賊を装った敵が来るという前提での防衛体制をどうするか?

 について、

 話し合いたいと思っている。


 それと、アリムさんとオルアのナイトバインドが完了した。

 今日は、アリムさんとわたしがナイトバインドする予定だ。

 明日は、アリムさんと冬香がナイトバインドする予定だ。」


メラニィ

「オルア様、おめでとうございます。」


オルア

「メラニィさん、ありがとう。

 うふふっ、今日は本当に良い天気ね。」


真々美、冬香、シュウピン、メラニィ こころの声

『『『『

 大雨が降っている。

 午後からやめば良い天気かもしれないけれど・・・

』』』』


真々美

「メラニィさん、先日、考えていると言っていた

 【光元国の通貨丸の使い道】

について、話してくれるか?」


メラニィ

「株式というか投資信託を買います。

 個別は難しいので、経済指標と連動する投資信託を毎日少しずつ2年計画で買います。

 すべての日に買えば、値動きや為替の動きを気にしなくて済みます。

 また、どうせ丸の使い道がないことから、長期で運用できます。」


冬香

「2年は長いわね。」


メラニィ

「そうですね。

 株価の動きを読むことはできませんし、すべての株価に張る小額投資の長期間継続が一番無難です。

 これから価格が伸びると思わせて下落したり、まだまだ下がると思わせて上昇することが常です。


 安値で買って、高値で売り抜けようとしないことをお薦めします。」


真々美

「では、それで行こう。

 面倒だろうが、毎日少額ずつ注文を出すようにしてくれ。」


メラニィ

「かしこまりました。」


真々美

「つぎに、海賊を装った敵を返り討ちにする方法についてだが、バリア設備の警備はどうなっている?」


シュウピン

「信頼できる者たちで、操作員と警備員を固めています。

 だから、心配は要りません。」


メラニィ こころの声

『おや? それを教えないのか?

 どうするつもりだ。 シュウピン?』


真々美

「なにかあった場合の保証元は確保できているのか?」


シュウピン

「確保できています。

 だから、心配は要りません。」


メラニィ こころの声

『本当か? シュウピン?』


真々美

「そうか、疑って悪かったな。

 空気がピリピリしてきたから、デザートを用意しよう。

 少し、待っていてくれ。」


冬香 こころの声

『真々美、どうするの?


 シュウピンさんも、

  「心配は要りません。」

を繰り返している。


 なにか変ね。』


真々美 こころの声

『アリムさんを呼んで来る。


 オルアとのナイトバインドは完了したから、最悪の事態は避けられるだろう。』


冬香 こころの声

『念のために、真々美とのナイトバインドを終わらせてからにして!


 それなら、2対1で勝てるから。』


真々美 こころの声

『わかった。』


筆者の注釈 ナレーション

「真々美さんと冬香さんって、テレパシーで会話している気がする。」





 司令室と真々美の個室の間にあるドアから、アリムさんがいる真々美の個室に、真々美が入って行った。


真々美

「アリムさん!」


アリムさんは呼ばれたことに気付いていないようだ。


アリム

「真々美さんの本棚にはむずかしそうな本が多いなあ。

 手に取ろうという気にもなれないな。


 衣服はスーツばっかりみたい。

 カッターシャツは白が多いなあ。


 着飾らないひとなんだなあ。」


真々美

「アリムさん?」


アリム

「真々美さんの声が聞こえる気がする。

 でも、いまは朝の会議のはずだから、幻聴かな。


 真々美さんとのデートを楽しみにしているから、名前を呼ばれた気がするのかな?」


真々美

「幻聴ではなくて、さっきから呼んでいるのだけどな。」


アリム

「えっ?」


 アリムさんは振り向いた。

 かなり、びっくりしたようだ。


真々美

「驚かせたか?

 でも、2回も名前を呼んだんだぞ。」


アリム

「会議中だと思ってました。」


真々美

「そうなのだが、難航(なんこう)していてな。

 アリムさんのちからを借りに来た。」


アリム

「わたしは、どうすれば良いですか?」


真々美

「デートのあとでする約束をしたばかりで、悪いが先にナイトバインドをさせて欲しい。」


アリム

「なにか状況が変わりましたか?」


真々美

「会議に参加しているシュウピンさんとメラニィさんの前に出てもらいたい。

 そこで、たわいのない話をして、くちをすべらす口実(こうじつ)を作って欲しい。」


アリム

「具体的には、どうすれば良いですか?」


真々美

「海賊が来るとした場合の襲撃予定日と人数が知りたい。

 これが最低ラインだ。」


アリム

「予定日は、前回の会議の翌日を1日目として、3日後、6日後、7日後だと思います。」


真々美

「なにを根拠にそう思う?」


アリム

「オルアさんが話されていた、

  ナイトバインドに3日、

  遺伝子書き換えに3日、

  交配届けに1日が

襲撃予定日と考えます。」


真々美

「内通者の見分け方は?」


アリム

「冬香さんとオルアさんの姉妹関係を成立したことについて、シュウピンさんが2回お祝いを述べられたことから、姉妹関係の成立の儀式と同レベルのことを調べる必要があると予想します。」


真々美

「くわしく言ってくれないか?」


アリム

「身体じゅうを隅々まで調べること、どちらかと言うと、外側よりも内側を。」


真々美

「内側とは?」


アリム

「膣液とか、子宮や卵巣の有無とか。

 尿管の位置とか。」


真々美

「それはさすがに調べにくいな。

 なぜ、それを求める?」


アリム

「不完全な性転換手術で女性に近づけた男性が、この船にいる本物の女性の身体を報酬に協力している可能性があるからです。」


真々美

「シュウピンさんは、身元が確かと言っていたから、大丈夫と思うが?」


アリム

「会議が盗聴されている可能性があるから、聞かれても問題ないように、とぼけているのかもしれませんね。」


真々美

「部屋には、盗聴器はないはずだ。」


アリム

「シュウピンさん自身が盗聴器かもしれませんね。

 宇宙人の技術があれば色々できるそうです。」


真々美

「しかしなあ?」


アリム

「今日のシュウピンさんの様子は、どうですか?

 おなじ言葉を繰り返していませんか?」


真々美

「同じ言葉とは?」


アリム

「うーん?

  ご安心ください。

とか

  心配要りません。

とかかな。」


真々美

「なるほど。 心当たりがある。


 それなら、別の部屋で会議をすれば良いか?

 例えば、冬香の診察室とか?」


アリム

「会議の時間は決まっているのですよね。」


真々美

「2日に一度と決めている。」


アリム

「それなら、どの部屋で話し合おうと聞かれますね。

 それに、会議の時間帯以外で話せば目立つでしょうね。」


真々美

「それは問題だな。

 アリムさんなら、どうやって聞き出す。」


アリム

「そうですね。

 例えば、真々美さんの秘密を聞き出したいときで、真々美さんが私に教える気があるとした場合の話をしますね。」


真々美

「ふむ。 わたしが答えて良いとした場合だな。」


アリム

「そうです。」


真々美

「やってみてくれ。」


アリム

「では、例を示しますが、ボクのことを嫌いにならないと誓ってくれますか?」


真々美

「誓う。 これでいいか?」


アリム

「はい、では行きますね。」


アリムは、真々美の目を見て話すのを止めて、胸をなめるように見つめだした。


真々美

「アリムさん? どうした。」


真々美 こころの声

『どうしたんだ。 いつもなら、私の目をまっすぐに見て話をするのに?』


アリム

「真々美さんのテストの最高点数は、100点満点でどれくらいですか?

 100点ですか?」


真々美

「いいや、95点だな。」


真々美は意図を理解した。

アリムさんは、ふたたび真々美の目を見て話した。


アリム

「真々美さんのバストサイズは、95cmですか?

 オルアさんと同じくらいかな?」


真々美

「そうか、ある数字の話をしながら、指している数字は別物なのだな。」


アリム

「その通りです。」


真々美

「ところで、」


アリム

「はい、なんでしょうか?」


真々美

「いつ、どうやって、オルアのバストサイズを知ったんだ?」


アリム

「オルアさんの部屋にサービスで1組だけ下着が干してあったのを見ました。

 約束ですから、嫌いにならないでくださいね。」


真々美

「ああ、大丈夫だ。

 こんな風に聞けば、シュウピンさんが答えてくれる可能性があると思うか?」


アリム

「あると思います。」


真々美

「そうか、試してみたい。

 わたしが試すよりもアリムさんの方が自然に聞けそうだな。」


アリム

「それは分かりません。

 男性のうそを、女性は一瞬で見抜くそうですからね。」


真々美

「アリムさんが上手くやる方に賭けてみたい。


 アリムさん、安全のため、先にナイトバインドをさせてくれないか?

 オルアとのナイトバインドは完了しているな。」


アリム

「はい、昨日、ナイトバインドを受けました。」


真々美

「では、わたしのナイトバインドも受けてくれないか?」


アリム

「デートの後でなら、受けます。」


真々美

「いますぐは絶対ダメか?」


アリム

「ちゃんと口説いてくだされば、受けます。」


真々美

「アリムさんの人柄と頭脳を手に入れたい。

 アリムさんとのご縁を取られたくない。」


アリム

「真々美さんがそこまで私を求めてくれるなら・・・」


アリムさんは目を閉じて、少し上を向いた。


真々美は左手でアリムの肩を押さえて、右手でアリムさんのあごを上に上げた。

そして、キスをした。


真々美

「ナイトバインド!

 アリムさん、わたしとの守護関係と夜関係を受けてくれますか?」


アリム

「はい、受けます。」


真々美とアリムのナイトバインドが成立した。


真々美

「ありがとう、アリムさん。

 それでは、りんごとお茶を持って、会議に戻りたい。

 わたしが、りんごの皮をむくからアリムさんは、お茶を入れてくれ。


 ティーバッグをアリムさんの分を入れて、6人分コップとともに用意してくれるか。」


アリム

「はい、かしこまりました。

 お嬢様。」


真々美

「アリムさんは、執事喫茶へのあこがれもありそうだな。」


アリム

「わかってくれて、うれしいです。」


真々美は、あっという間に、3個のリンゴをむいて、6皿に盛り分けた。


6人分のお茶の用意をして、真々美とアリムは会議室に向かった。





真々美

「お待たせした。

 待っててくれて、ありがとう。


 ここにいるひとは、アリムさんだ。

 りんごとお茶を運ぶことを手伝ってもらった。


 来てもらったついでに、気分転換になる話を提供してもらう予定だ。

 その後で、会議を聞く栄誉をあたえることに、同意してもらいたい。」


シュウピン

「真々美様が身元保証できるひとなら、構いません。」


メラニィ

「会議の邪魔にならないように静かにしているなら、構いません。」


真々美

「ありがとう。

 シュウピンさん、メラニィさん。


 オルア、冬香とオルアの間に、アリムさんの椅子を置いてやってくれ。


 シュウピンさんとメラニィさんは、すこしずつずれて場所を譲ってくれないか?」


シュウピン、メラニィ

「「はい、少し待ってくださいね。」」


シュウピンさんとメラニィさんは、椅子の位置をずらした。


真々美

「ありがとう。

 シュウピンさん、メラニィさん。」


 シュウピンさんとメラニィさんは、アリムさんを初めて見た。


作者のナレーション

「シュウピンさんとメラニィさんは、アリムさんの顔写真を見ただけでした。」


☆ インターネットのWEBフォームに必要事項を入力しました。

☆ 

☆ 002 [読み飛ばしOK] 所在地、言語、為替レートについて 参照



シュウピン こころの声

『彼が、オルア様のお気に入りのアリムさんね。

 いや、ナイトバインドを済ませたのなら、アリム様と御呼びするべきね。

 逆玉の輿に乗るなんて、超幸運なひとね』


メラニィ こころの声

『彼が、オルア様のお気に入りのアリムさんか。

 いや、ナイトバインドを済ませたのなら、アリム様と御呼びするべきか。

 そして、【遺伝子獲得権】の相手として、シュウピンが指名した男性。』


シュウピン こころの声

『ふむ、良いわね。

 ナイトバインド枠が1つ空いているようね。

 冬香様の分みたいね。』


メラニィ こころの声

『ふむ、上等だな。

 ナイトバインド枠が1つ空いているな。

 冬香様の分でなければ、かすめ盗りたい。』


シュウピン

「アリム様、お初にお目にかかります。

 面接責任者の ウェン シュウピン (温 秀平 Shuupin WEN)と申します。

 よろしくお願いします。」


アリム

「ウェンさん、よろしくお願いします。」


メラニィ

「アリム様、お初にお目にかかります。

 面接準備者の メラニィ オネスティ (Melanie HONESTY)と申します。

 よろしくお願いします。」


アリム

「オネスティさん、よろしくお願いします。」


メラニィ

「アリム様は、わたしたちの苗字と名前の区別がつくのですか?」


アリム

「苗字を御呼びしたつもりですが、間違っていますか?」


メラニィ

「いえ、合っています。

 正解です。

 ただ、意外だったので・・・」


アリム

「むかし、知り合った人と同じ名前だったので、偶然ですね。」


メラニィ

「そうですか、それなら納得です。」


オルア

「アリムさん、その女性たちは、どこの誰かなあ?」


アリム

「仕事の出張先で出会った仕事仲間です。」


オルア

「アリムさんのご記憶に残っているということは、さぞや素敵な女性だったのでしょうね。」


アリム

「うーん、かなり昔の話だから少しは美化されていると思うけれど、おふたりのお名前を聞くまでは、わすれていたなあ。」


オルア

「そう? ならいいかな。」


シュウピン こころの声

『やきもちね。 なんて分かりやすい。』


メラニィ こころの声

『やきもちか。

 気付かないアリムさんは鈍感か?

 女性経験がとぼしいのか?』


冬香

「さあ、みんな、早く食べましょうか?」


冬香の呼びかけで、皆は食べ始めた。


真々美

「アリムさん、おやつに関する話題はあるか?」


アリム

「そうですね。

 子供のころは、スナック菓子よりも果物を食べた方が良いと、母が用意してくれました。


 こどもの頃のお小遣いは駄菓子屋で、くじ引きのピストルを集めていました。

 もう捨ててしまったけれど、当時は夢中でした。」


真々美

「食べるものは買わなかったのか?」


アリム

「弟は食べ物を買っていました。

 その方が賢かったと今なら思います。


 お小遣いも月1000(まる)と少なかったので、多くの物は買えませんでした。

 でも、1日10丸のおこづかいしかもらえないひとよりは、幸せだったかもしれませんね。」


冬香

「シュウピンさんは、お小遣いはどうだった?」


シュウピン

「そうですね。

 週ごとに500バーシルもらっていました。

 だから、3日目に100バーシル。

 6日目に100バーシル。

 最後の7日目に300バーシル

という風に使っていました。」


メラニィ

「それなら、毎日60バーシル使って、最後の7日目に140バーシルを使う方が良いと思うが?」


シュウピン

「60バーシルでは買えるものが限られているわ。

 1回の買い物で買う金額を減らせないなら、買い物に行く回数を減らすしかないわ。

 それと、どうせ使うなら、ドンと使いたかったのよ。」


アリム

「いろいろな使い方があるけれど、どれが正解なんて決まらないと思います。

 それぞれがベストの使い方をすれば良いと思います。」


 アリムさんは、シュウピンさんの目を見つめながら言った。


オルア こころの声

『アリムさんをナイトバインドしたあとで良かった。

 そうでなければ、アリムさんの目をわたしの手のひらで隠しているわ。』


シュウピン こころの声

『さすがね。 私の意図に気付くなんて。

 あとは、バリアについて伝えられれば良いけれど・・・

 メラニィ、頼むわよ。』


メラニィ

「アリム様は、シュウピンを気に入ったのですか?

 シュウピンの目をじっと見ていますが?」


アリム

「うーん、わたしは相手の目を見つめながら話す主義というだけです。

 わたしが、そうでない状態で話しかけられても、誰に向かって話されているか分からないからです。」


冬香

「あら? メラニィさん、やきもちを焼いているの?

 シュウピンさんには近づけないぞ!ってことかしら?」


 冬香は、ニンマリと微笑んだ。


メラニィ

「いや、なんとなく聞いただけです。」


冬香

「大丈夫よ。

 明日は私がナイトバインドする予定だから、アリムさんの眼には、オルア、真々美、わたしの3人しか(うつ)らなくなるわ。

 ねっ? アリムさん?」


アリム

「恋愛対象としてという意味なら、その通りです。

 ただし、わたしはひとと話すときは、目を見ながら話す主義なので、多くの人がわたしの目に映りますよ。」


冬香

「そう、良かったわ。

 後半は、いつも通りにしてね。

 気を遣ってくれて、ありがとう。」


真々美

「おやつの時間の優雅な雰囲気は、こころが安らぐな。

 海賊が来るかもしれないなんて、考える気が無くなるな。」


アリム

「この船には、バリアがあるから大丈夫とお聞きしましたが、ちがうのですか?」


真々美

「もし、バリアが破られたら、どうするか?

 という話を会議でしていてな。


 心配ないと言われると、逆に不安にもなってしまう。」


冬香

「この船を囲むバリアは、球状、つまり、スポーツで使う大きなボールのような形のバリアなので心配要らないはずなんだけどね。


 万が一を考えると、どうしても気になるわね。」


アリム

「バリアはいくつかに分かれているのですか?」


冬香

「そうね。 分かれているわ。

 その方がメンテナンスしやすいし、一度に全方位のバリアが消えるよりはマシだからね。」


アリム

「ということは、ある部分のバリアが消える前提で、話をするべきなのですね。」


冬香

「そうなのよね。」


シュウピン

「すみません、少し暑くなってきたので、楽な格好をさせてください。」


真々美

「あ、ああ。構わない。」


シュウピン

「それでは、失礼します。」


シュウピンは、スラックスのすそを巻いて、素足を見せた。


シュウピン

「ああ、涼しくなった。」


メラニィ

「シュ、シュウピン、そんなに暑いのか。」


シュウピン

「あら? アリムさんは気になりますか?」


アリム

「す、すこし気になりますね。」


 アリムさんはオルアの方を向いた。


オルア

「アリムさん、わたしも暑くなってきたわ。」


オルアも同じように、スラックスのすそを巻いて、素足を見せた。


アリムさんは、シュウピンさんからの強い視線を感じた。

そして、シュウピンさんの意図を感じ取った。


アリム

「うん、どうでしょう?

 1回目の海賊襲来の時には、上のバリアが消えるという方に、賭けてみるということで。」


シュウピンは、アリムさんに小さくうなずいた。

アリムさんも、小さくうなづき返した。


そして、真々美さんと冬香さんを見た。


真々美 こころの声

『なにか、分かったようだな。』


冬香 こころの声

『真々美とアリムさんの作戦なのね。

 オルアが焼かなければ良いけれど。』


オルア

「アリムさん?

 わたしともアイコンタクトしましょうよ。

 ね?」


オルアは、アリムの両方のほほを両手でつまんだ。


冬香 こころの声

『分かってないわね。 仕方ないわ。』


シュウピン

「少しマシになってきたから、戻しますね。」


シュウピンは、スラックスの巻いていたすそを元に戻した。

オルアも、スラックスの巻いていたすそを元に戻した。


真々美

「襲撃は何回あるか分からないから、とりあえず3回と仮定しようか?

 2回目のバリアは、どこが消えるか?

 賭けをしようか?

 どうせ分からないからな。」


シュウピン

「また、すこし暑くなってきたわね。」


シュウピンは、カッターシャツのボタンを少し外して、横からの風を入れるように、手で仰いだ。

そして、アリムさんの気を引くように、視線を送っている。


オルアも対抗して、胸の谷間をアリムさんにチラ見せしている。


アリム

「賭けには僕も参加して良いのですか?」


真々美

「ああ、だが、100バーシルまでだぞ。

 いわゆるジュースいっぱい分だな。」


アリム

「分かりました。

 では、ボクは船の前方と後方のバリアが消える方に賭けます。」


 シュウピンは、アリムさんに小さくうなずいた。

 アリムさんも、小さくうなづき返した。


 そして、真々美さんと冬香さんを見た。


真々美

「みんなは、どうする?」


メラニィ

「真々美様、まじめにやってください。

 賭け事の対象にするべきではありません。」


シュウピン

「メラニィ、落ち着いて?

 ああ、そうか、暑いからいらだっているのね。

 上着を脱ぎましょうか?」


 シュウピンは、メラニィの上着を脱がせて、ハンガーに掛けた。

 そして、またしても、アリムさんをチラ見した。

 アリムさんは、それに応じて、うなづいた。


オルア こころの声

『気に入らないわ。

 シュウピンさんは、さっきからアリムさんに色目を送っている。

 それに、アリムさんはさっきから小さくうなずいている。


 昨日の今日で、さっそく浮気相手を探そうとするなんて、ゆるせないわね。

 今日は、真々美とナイトバインドする予定なのに、なにを考えているの?』


メラニィ

「シュウピンは暑いかもしれないが、わたしは上着を来ていて、ちょうどいいんだ。

 暑いなら、シュウピンが上着を脱げば良いだろう?」


 メラニィは、上着を再び着た。


シュウピン

「そうね。

 そうするわ。」


 シュウピンは自分の上着をハンガーに掛けた。

 寒そうにしているのに、上着を着ようとしない。


メラニィ こころの声

『シュウピンは、いったいどうしたんだ。

 今日は、なんだかおかしいぞ。』


真々美

『バリアについての情報を聞き出したな。

 さすがだな。 アリムさん。』


冬香

『なるほど、そういうことね。

 わかっていないひとは、オルアとメラニィさんだけね。』


真々美

「オルア、メラニィさん、アリムさんと一緒に、おやつを片づけてくれないか?」


オルア

「ええ? あとで良いじゃない。」


メラニィ

「なんで、わたしが?」


冬香

「メラニィさん、悪いわね。

 片づけ終わったら、わたしの部屋の冷蔵庫から、和菓子セットを3人で運んできてくれないかしら?

 みんなで、水無月みなづきという和菓子を食べましょう。

 ういろうの上に乗ったあんこが、美味しいのよ。」


 冬香の笑顔のこめかみに怒りの青筋が、うっすらと見えた。

 それを見て、メラニィは態度を変えた。


メラニィ

「かしこまりました。」


アリム

「オルアさん、メラニィさん、水無月は、とっても美味しいんだよ。

 早く取りに行こうよ。」


オルア

「そう? 楽しみね。」


 オルアは、真々美と冬香の食器を手に持った。

 アリムは、オルアと自分の食器を手に持った。

 メラニィは、シュウピンと自分の食器を手に持った。


筆者の解説 ナレーション

「シュウピンさんとアリムさんのアイコンタクトの意味が分かったひとは、次回をお楽しみに!」


オルア こころの声

『ナイトバインドした翌日に、他の女性と見つめ合うなんて、アリムさんはなにを考えているのかしらね?

 教育が必要なのかしら?』


メラニィ こころの声

『シュウピンは変だし、なぜ、わたしがお茶出しの後片付けを手伝わなければならないんだ?』


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