029 オルアさんの感想と海賊の襲来について
会議が終わった後の昼休み
◇
オルア
「アリムさん、ただいま。」
アリム
「おかえり、オルアさん。
お昼ごはんを作っておいたから食べようよ。」
オルア
「まあ、うれしいわ。」
アリム
「会議と言っていたから長引くかもしれないと思ったんだ。」
オルア
「たしかに話し合うことを全部話そうものなら、夕方までかかるかもね。」
アリム
「ということは時間が来たら終わる会議スタイルなのですね。
うらやましいです。
流石に決めるべきことを決めるには時間が足りないでしょ?」
オルア
「うーん、そうでもありません。
わかることは、真々美と冬香が決定しますから、大丈夫です。」
アリム
「呼び方が元に戻ったね。お疲れ様でした。」
オルア
「そうなのよ。12時が過ぎたら、
3人とも喜びの声をあげたわ。
ただ、会議は授業を聞いているようで苦痛だったわ。
会議を聞く権利を得ただけで、意見を言ったらダメで、質問できるだけなの。」
アリム
「見学してろって言われるとつらいよね。
でも、その指示をくれたひとは、オルアさんを大事にしていると思うよ。」
オルア
「だまってろと言われることが優しいのですか?
意味不明です。」
アリム
「会議の参加者は苦労して、その会議に参加する立場を得たことが多いから、新入りに厳しいことが多いようなんだ。
会議の場に居るだけでも無礼なのに、意見を言うとはなにごとだ。
とか新入りの存在自体を不愉快に感じる人もいるし、
なにも言わないけれど、低評価をつけて足を引っ張って引きずり下ろそうとする人もいるからね。
オルアさんは恵まれていると思うよ。」
オルア
「そういう考え方もあるのね。」
オルア こころの声
『どれだけ多くの人たちがアリムさんを傷つけて、いじめてきたのだろう。
メラニィさんが言った方法で、絶対に後悔させてやるわ。
もっとも、なにが悪かったかさえ分からない連中かも知れないけどね。』
アリム
「今日、会議で会うと言っていた面接ふたり組とは、上手くやれそうですか?
嫌なひとで無ければ良いけれど。」
オルア
「まずは大丈夫かも。でも…」
アリム
「裏表が有りそうな人たちですか?」
オルア
「うーん、なんと言うか試されている気がします。」
アリム
「値踏みされている感じですか?
オルアさんが新入りだから?」
オルア
「なんと言うか、私だけというよりも、真々美と冬香が試されている気がします。」
アリム
「そうですか?
まずはご飯を食べてから落ち着いて聞いても良いですか?
それとも、食事よりも優先して聞く方が良いですか?」
オルア
「そうね、午後からはアリムさんも連れてくるように言われているから先に食べて、時間が許す限り、聞いてくれますか?」
アリム
「了解。 じゃあ、ご飯を並べるね。」
アリムさんは、ハヤシカレーを食卓に並べた。
残りはすべて鍋から中くらいの深皿に移し替えられた。
オルア
「なべのまま残さないのね。」
アリム
「盛りきって、チンするだけにした方が後が楽だからね。」
アリムさんは鍋に残ったハヤシカレーにご飯を混ぜて、さらにパンで拭き取っていた。
その様子を眺めていると、アリムさんが振り返って答えた。
アリム
「こうすると、洗うときに楽なんだ。
食後のパンも小皿に用意してあるから、お皿に残ったハヤシカレーをパンで拭って食べてくれると助かります。」
オルア
「はーい、そうします。」
オルア こころの声
『女子力で負けているかも?』
じーっとアリムさんを見つめながら食べていると、
アリム
「どうかな?
おくちに合わなかったかな?」
オルア
「お、美味しいわ。
ただ、ね。」
アリム
「ただ、なにかな?」
オルア
「女子力で負けているかも?と不安になっただけよ。」
アリム
「ほめ言葉と受け取って良いなら、うれしいな。」
オルア
「今度、時間が取れたら、私も料理するからね。」
アリム
「うん、楽しみにしています。」
◇
オルア
「シュウピンさんは真々美を、メラニィさんは冬香を好きみたいです。」
アリム
「へー、お二人は、男性? 女性?」
オルア
「ふたりとも女性よ!」
アリム
「そうなんだ。
ということは、オルアさんのライバルになりそうですか?」
オルア
「うーん?
メラニィさんは私のライバルで、
シュウピンさんは冬香のライバルになるかも?」
アリム
「人間関係が複雑になりそうだね。」
オルア
「でも、シュウピンさんとメラニィさんは今日私たちが見ている前でキスしたから、ライバルではないのかな?」
アリム
「そ、そう?
仲良きことは美しきかな、と微笑ましく見守りモードでいれば良いのかな?」
オルア
「わかんない。
でも、それよりも気になることがあるの。」
アリム
「どんなこと?」
オルア
「海賊が攻めてきたことにして、船を止めますか? とか?」
アリム
「そう言えば、この船が海賊に襲われないことを不思議に思っていたけれど、どうやって海賊たちを遠ざけているの?」
オルア
「周囲100メートルをバリアで囲みながら進んでいるから、近づけないわ。」
アリム
「とすると、バリアを止めないと船も止められないね。」
オルア
「バリアをON-OFFする部屋は信頼できる人たちが常駐しているから、いきなりバリアが消えることは無いわ。」
アリム
「じゃあ、警備兵を買収すれば、バリアのコントロール室を制圧できるね。」
オルア
「警備兵のひとたちは信頼できる人たちで固めているから、そんなことは起こらないわ。」
アリム
「信頼ねえ? なにを担保に信頼するの?」
オルア
「それは、厳しい審査を合格した人たちだから、問題無いわ。」
アリム
「それなら、冬香さんとオルアさんの姉妹関係を成立させる必要は無いよね。
姉妹関係なしでも、信頼しあえる関係でしょ?」
オルア
「たしかに、でも、必要だと言っていたから。」
アリム
「なんのために?」
オルア
「信頼を高め合うためにかな?」
アリム
「オルアさんたちは、すでにお互いを信頼しあえる関係だよね?」
オルア
「困らせないで。 アリムさんは何を言いたいの?」
アリム
「シュウピンさんは、ギリギリのヒントをくれたような気がする。
ヒントというよりは、ほぼ答えというヒントを。」
オルア
「どういうこと? 分かりやすく教えてください。」
アリム
「話の断片からの予想だから、外れているかもしれないけれど、
まず、なんのために船を止めたことにするの?」
オルア
「それは、日程が足りないから。」
アリム
「なんのための日程ですか?」
オルア
「それは私からは言えない。
後で真々美から、ううん、たぶん冬香から話す。」
アリム
「次の質問です。
冬香さんとオルアさんの姉妹関係の成立を、シュウピンさんは、よろこんでくれた?」
オルア
「ええ、よろこんでくれたわ。
大事なことだから繰り返します。と言って、2回以上、お祝いの言葉を述べてくれたわ。」
アリム
「海賊という単語を言った人は?」
オルア
「シュウピンさん。」
アリム
「カセイダード王国に着いてからの予定は?」
オルア
「そ、それは…」
アリム
「それは?」
オルア
「も、もちろん、アリムさんはわたしと一緒だから、衣食住の心配は要らないわ。」
アリム
「言いにくそうだね。
じゃあ、それは聞かないけれど、ライトノベルでよくある展開の話をすると、こうなるね。」
オルア
「ど、どうなるの?」
アリム
「シュウピンさんとメラニィさんは、中路さん、白石さん、オルアさんの共通の敵だけれど、表面上は味方で有益な存在だから、できる限り協力させたい。
そして、お二人は、なにか事情が変わってオルアさんの側に付きたいと考えた。
ただし、試験をクリアできたら?という条件付きでだけれどね。」
オルア こころの声
『たしかに様呼びできることを喜ぶ様子を分かりやすく見せてくれた。』
アリム
「そして、海賊が来る予定があること、バリアを切ろうとするスパイを見つける方法は姉妹関係の成立に関係すること、つまり、普通では出来ない身体検査をしたら判別できることを伝えようとしているね。」
オルア
「それは推理?
それとも、確証?」
アリム
「確証だよ
襲撃日についても、ヒントをくれなかった?」
オルア
「流石に無かったと思うけれど。」
アリム
「例えば、
移民審査船が光元国に初めて到着してから、今日で6日目だね!
と言ったら、襲撃日は6日後になるけれど?
そんな風な会話は無かったかな?」
オルア こころの声
『そう言えば、3日、3日、1日と言っていたから、3回の襲撃が予定されていることになる。』
オルア
「真々美と冬香にも確認するわ。
少し待ってくれる?」
アリム
「結果を教えてくれると、うれしいな。
でも、襲撃を未然に防いでも駄目という点が厳しいね。」
オルア
「どういうこと?」
アリム
「敵は各個撃破すべし!
わざわざ小出しで来てくれるのだから、すべて撃退して、捕虜にして尋問するくらいの余裕を見せる必要があるよね。」
オルア
「未然に防いだ方が得じゃ無いかな?」
アリム
「未然に防いだら、カセイダード王国に戦力を集中させて待ち構えられてしまうよね。
勝ち目が少なくなるね。」
オルア
「わざと泳がせろと言うの?」
アリム
「出来るならね。
すべての敵を捕えたうえで、人質のフリして震えている面接ふたり組を、中路さんと白石さんが、慕われている方を助けることで、感動的なシーンを演出する必要があるね。」
オルア
「もしかして、シュウピンさんとメラニィさんの名前をもう忘れたの?」
アリム
「ごめんなさい。
覚えられなくて。
紙に書いてくれませんか?」
オルア
「べつに覚えなくても良いわ。
わたしの名前を忘れない限り問題無いわ。」
アリム
「オルアさんの名前は毎日呼んでいるから大丈夫です。
ただ…」
オルア
「ただ… なに?」
アリム
「中路さんと白石さんの名前は忘れた。
真美さんと春香さんだったかな?」
オルア
「真々美と冬香ね。
アリムさんが名前で呼ぶ間柄になりそうなときは覚えてもらうわ。」
アリム
「ははは、そこまで親しくなる可能性は無いかな?
オルアさんと名前で呼びあうことが奇跡のようなものだからね。
奇跡は2度3度と起こるとは思えないよ。」
オルア こころの声
『そうでもないけれど、まだ言わなくて良いわよね。』
オルア
「そろそろ行く準備しましょうか?」
アリム
「そうだね。」
◇
真々美
「海賊の襲撃はあると思うか?」
冬香
「海賊が来ようとしても、バリアがあるから大丈夫でしょ!」
真々美
「そうだよな。」
冬香
「そうよね。」
2人は目を見つめあいながら話していた。
その後で、同じ箇所をにらんでいた。
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