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025 【挿絵】 6日目 AM10時 面接担当たちの反応

 今回、面接責任者と面接準備者のイラストを作成しました。

 文中の挿絵をご覧ください。


 AIイラスト作成ソフトウェアについて

 (今回の第一章 025 から)

  AUTOMATIC1111 様

  Stable diffusion WEB UI Version: v1.6.0

  https://github.com/AUTOMATIC1111/stable-diffusion-webui/releases


  _GhostInShell_様

  Model: ghostmix_v20Bakedvae 

  https://civitai.com/models/36520/ghostmix?modelVersionId=76907


 (今まで)

  AUTOMATIC1111 様

  Stable diffusion WEB UI Version: v1.2.1


  _GhostInShell_様

  Model: ghostmix_v12

 VAE: なし


AM 9:55


 司会(中路真々美 Mamami NAKAJI)の司令室


 真々美、医師(白石冬香 Fuyuka SHIROISHI)、オルア=サーパース(Allrounah SURPASS)の3人が集まっていた。


司会(中路真々美) こころの声

『うーん、まずいな。

 面接準備者(メラニィ オネスティ Melanie HONESTY)の機嫌の悪さが伝わってくる。』


司会(中路真々美)

「冬香、オルアさんに気を(まと)うように言ってくれ!」


医師(白石冬香)

「オルア、今すぐ、気を(まと)いなさい。

 『圧殺(あっさつ)』    Grade 5 が来ても耐えられるように。」


オルア=サーパース

「はい、冬香様。

 あれ? いつものように上手く(まと)えません。

 どうしよう、冬香様。」


 オルアは気をまとおうとしたが、違和感を感じた。

 これでは、『意識飛ばし』 Grade 1 に耐えることがギリギリだ。


司会(中路真々美)

「今日の昼を過ぎるまでは、無理か。

 冬香、オルアさんを守ってくれ。」


医師(白石冬香)

「もちろんよ。

 オルア、わたしのそばを離れないで。

 貼り付くくらいがいいわ。」


オルア=サーパース

「どうしてなの?

 もしかして、姉妹関係(Sister Relationship)の儀式の影響なのですか?」


医師(白石冬香)

「そうよ。

 あなたをわたしの愛の支配下に置くために一時的に弱くなっているの。

 今日の昼過ぎには元に戻るわ。

 そして、明日の夜は、あなたが元通りの気というか魅力を発揮できるか確かめるために、あなたに抱かれに行く予定を入れてもらったの。」


司会(中路真々美)

「オルアさん、すまない。

 それでも、オルアさんが冬香のサブシス(Sub-Sis)になったことは早めに周知するべきなんだ。

 あの二人の背後にいる連中に良からぬことを考えさせないためにな。」


オルア=サーパース

「それって?」


司会(中路真々美)

「あとで、話す。

 もうそこまで二人が来ている。

 冬香。」


医師(白石冬香)

「大丈夫。 まかせて。」





面接責任者(ウェン シュウピン 温 秀平 Shuupin WEN)

面接準備者(メラニィ オネスティ Melanie HONESTY)

は、

階段を登っていた。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「体調が悪いなら、エレベータを使えば良いのに。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「体調ではなく機嫌が悪いんだ。

 生理中は沸点が低くなりすぎる。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「それなら、生理休暇を申請したら?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「特別に3日間連続の休暇をもらった直後に、そんなこと言えるか?

 お役御免になってしまう。

 それに、3日ぶりに白石冬香様のお顔を見れるチャンスを無駄にしたくない。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「じゃあ、会議が終わった午後から半休を取ってね。

 くれぐれも中路様や白石様に八つ当たりしないように。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「分かってる。 そのくらいは、いくら機嫌が悪くても大丈夫だ。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「それに・・・」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「それになんだ?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「司令の部屋に3人の気配がある。

 もうひとりはおそらく・・・」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「中路様と白石様が庇護(ひご)している補助者か?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「きっとそうね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「移民招待者は、アリムさんと改名したのだったか。

 その進捗(しんちょく)報告のためか。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「それだけなら良いけれど・・・

 前々から、説明しているけれど、もし白石様が補助者をサブシス(Sub-Sis)に選んだとしたら、礼儀正しく敬意を持って「様付け」で呼んでね。

 そもそも身分の差が大きいことをわすれないでね。

 ゆるされる言葉については覚えているわね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「ああ、ある程度までの嫉妬の言葉は、祝いの言葉として大目に見てもらえる。

 そして、一度だけ白石様を【冬香様】と御名前で呼ぶことがゆるされる。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「生理中は、女性は精神修養度が極端に下がってしまうけれど、ゆるされないことがあるからね。

 多くの男性が言う、「酒が入っていたから大目に見てくれ!」などという寝言は、ゆるされないからね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「わかっている。 大丈夫だ。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「中路様の前で私に恥をかかせたら、あなたでも容赦しないからね。」


 シュウピンの目は本気だ。

 勇者を石化させる蛇の髪を持った怪物を連想させるような目だった。


 メラニィは真剣な表情で大きく、うなずいた。




 メラニィとシュウピンは、司令室の手前にある来客室の扉を見て、おどろいた。


 「Allrounah SURPASS」(読み方: オルア サーパース)という右上がりの青い文字が大きく書かれていた。


 ペンキではなく、オーラというか気で書かれているから、気を使えない者にはまったく見えないし、感じない。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「かなり気に入ったみたいね。

 まるで、ヒグマが木に爪痕(つめあと)を切り刻むかのような警告(けいこく)目印(マーキング)ね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「苦労して選んだ甲斐があったわ。

 わたしが選んだ移民招待者を気に入ってくれることは非常に(うれ)しいし、光栄(こうえい)だが、やりすぎだな。

 なんだか気恥(きは)ずかしい気持ちになってくる。」


挿絵(By みてみん)



面接責任者 (ウェン シュウピン)

「あの子の生殖(せいしょく)刑実行者が、脂ぎった中年男性や枯れ切った老年男性にならないように頑張った甲斐があって、うれしいでしょ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「そうだな。

 あの子には、男性に対するストライクゾーンは無いのかもしれないと思っていたが、針の(あな)くらいの面積はあったのだな。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「あの子を嫌っているかと思ったけれど、優しいところもあるのね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「補助者は、わたしより2歳も年下だからな。

 わたしは白石様と同い年だから、少しは余裕がある。

 ただ、中路様と白石様に庇護されているからといい気になって、いつまで白石様を待たせているところは、大嫌いだ。

 わたしなら、出会って1年以内に喜んで受けているぞ。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「なにか事情があるのでしょうね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「それでも、6年は待たせすぎだ。

 お預け期間が長すぎると、犬だって()みつくぞ。

 白石様の忍耐力というか気の長さは、理解できないレベルだな。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「そろそろ入りましょうか?

 よそ行きモードでお願いね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「ウェン様、よろしくてよ。」





 ふたりは、司令のドアの前に立った。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「ノック、ノックス」


司会(中路真々美)

「どうぞ。 お入りください。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「おはようございます。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「おはようございます。」


司会(中路真々美)

「おはようございます。

 ウェンさん、オネスティさん。


 おふたりの元気な様子を見れて、うれしく思う。


 しかし、オネスティさんは、少し体調が悪そうだな。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「いま、生理中で機嫌が良くないそうです。」


司会(中路真々美)

「そうか、大丈夫ですか?

 せっかく来てくれて気を悪くするかもしれないが、午後からは早退してくれ。

 もちろん、有給扱いにするから、届けを出しておいてくれ。

 というか、すぐに承認するから今から出してくれ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「ありがとうございます。

 すぐに出します。

 失礼します。」


 オネスティは、スマホのようなデバイスを出して、届けを出した。

 ウェンは、すぐに確認印データを付与した。

 中路は、すぐに承認印データを付与した。


 あっという間に、午後からの有給届けが受理された。


司会(中路真々美)

「いつから始まった?

 (とうげ)を越えて、折り返し地点だと良いのだが。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「昨日の深夜21時ころから、急に腹が立ってきたので、まだ始まったばかりですね。」


司会(中路真々美)

「そうか、無理をしないでくれ。

 ガマンできそうになかったら、冬香の医務室で休んでくれ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「ありがとうございます。」


医師(白石冬香) こころの声

『オルアとわたしの姉妹関係の儀式がはじまったころね。

 虫の知らせを感じたのね。』


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「ところで、そちらにいらっしゃる方を紹介して頂けますか?

 たしか、お二人の補助者の方ですよね。」


司会(中路真々美)

「もちろんだ。

 冬香、おふたりにオルアさんを紹介してくれ。」


医師(白石冬香)

「おふたりが間近で会うのは、これが初めてですね。

 名前だけは聞いたことが有るかもしれないけれど・・・


 こちらは、私のサブシス(Sub-Sis)に迎えた、わたしが一番大事にするべき女性、オルア=サーパースです。


 オルア、ご挨拶しなさい。」


オルア=サーパース

「直接間近でお会いすることは、初めましてになります。

 オルア=サーパースと申します。


 冬香様をハイシス(High-Sis)に(いただ)く栄誉と、

 冬香様のサブシス(Sub-Sis)に選ばれた幸運を

大事にして、冬香様をお(した)い続けます。


 よろしくお願いいたします。」


司会(中路真々美)

「という訳で、たった今からは正式に冬香の部下となる。

 ウェンさん、オネスティさん、よろしく頼む。


 オルアさんには、今回の会議から参加してもらう。


 オルアさん、注意事項がある。

 オルアさんは、会議を聞く権利が与えられただけで、意見を言うことはできない。

 過去の経過などを知らないオルアさんが意見を言うと、会議の邪魔をすることになってしまうからだ。

 その代わり、話題ごとに質問を受け付ける時間を設けるから、質問をメモしながら聞いてくれ。」


オルア=サーパース

「わかりました。

 みなさん、よろしくお願いします。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「サーパース様、よろしくお願いします。」


面接責任者 (ウェン シュウピン) こころの声

『今の注意事項は、あらかじめ説明済みのようね。

 普通なら、質問したり異議を申し立てたりするはずだから。


 それにしても、中路様は今日もまぶしいぐらいに輝いているわ。

 わたしたちのように3日間の休養期間があったわけでもないのに、3日前よりも素敵に感じるわ。

 さすがは、中路様。 真々美様と御呼び出来たら、どんなに幸せだろう。』


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「サーパース様、よろしくお願いします。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ) こころの声

『今の注意事項は、あらかじめ説明済みだな。

 能力があってプライドが高い自信家が素直に従うのだからな。

 姉妹関係の儀式のあとで、じっくりと言い聞かせたのだろうか?


 それにしても、白石様は今日もまぶしく輝いておられる。

 わたしたちのように3日間の休養期間があったわけでもないのに、3日前よりも凛々(りり)しく感じるな。

 さすがは、白石様。 冬香様と御呼びすることをゆるされたら、どんなに身体の芯が熱くなるだろう。』


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「サーパース様との姉妹関係の儀式は、いつ実施されたのでしょうか?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ) こころの声

『シュウピン、よく聞いてくれた。

 以心(いしん)伝心(でんしん)、よく分かってくれている。』


司会(中路真々美)

「昨日の深夜だ。

 姉妹関係の儀式完了の翌日の午後、つまり今日の午後になったら、わたしたちは、今まで通り、真々美、冬香、オルアと呼び捨てで呼びあう予定だ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ) こころの声

『だから、昨日の夜からイライラしたのだな。

 さっさと姉妹関係を成立させろという気持ちと、

 わたしが白石様のサブシス(Sub-Sis)に選ばれたいという気持ちが

半々だから、腹が立つのも当たり前か。』


医師(白石冬香)

「ようやく、オルアを口説き落とすことができたの。」


冬香はとてもうれしそうに満たされた笑顔をしている。


冬香の満たされた笑顔を見て、メラニィは、ひとこと言いたくなった。

嫉妬心が膨れ上がり、嫉妬心を抑え込もうとしていた重しが飛ばされてしまった。


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「オルア=サーパース様。

 冬香様をずいぶんと待たせていい気なものですね。

 なに様ですか? あなたは!」


オルア=サーパース こころの声

『 『怒気当て』がこんなに重いなんて、やはり私は弱っているわね。』


医師(白石冬香)

「オルアには、姉妹関係のことを教えて無かったの。

 文句があるなら、わたしに言ってくれる?

 それと、わたしのかわいいオルアに『怒気当て』をするなんて、わたしと敵対するつもりですか?」


 幼いこどもを守る母熊のような闘気を冬香は発している。


 オルアが重いと感じたメラニィの『怒気当て』は、冬香が大部分を防いだ後の余波程度に過ぎなかった。

 つまり、いまのオルアは姉妹関係の儀式の影響でかなり弱っている。

 今日の午後を無事に迎えられれば、元通りの強さに戻るのだが、それまでの2時間未満の時間は、オルアにとって、とても長い時間になりそうだ。


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「白石様と敵対する気はありません。

 しかし、白石様が私を敵に回すとおっしゃるのなら、可愛さ余って、憎さ100倍。

 冬香様のこころにわたしの名前を刻み込むくらいの強烈な傷跡を残して差し上げますわ。」



 冬香とメラニィのにらみ合いは続いた。



司会(中路真々美) こころの声

『やばい、こうなった冬香は、相手を屈服(くっぷく)させるまで止まらない。

 いま、このふたりを敵に回すわけにはいかない。

 オルアも、いまは(ふる)えるしかできない様子だ。


 ・・・


 仕方ない。

 面接担当の二人のことはあきらめるしかないか?

 非常に残念だが。』



 いままで静かに(だま)っていたシュウピンが割って入った。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「白石冬香様、メラニィ オネスティの(げん)は、(いわ)い言葉の一種として受け取って頂けませんか?


 メラニィ、そこまでよ。

 あなたが秘めてきた想いは冬香様も気付いておられるわ。

 でも、これ以上はダメよ。


 中路真々美様の前で、わたしに恥をかかせないでね。

という(てい)で引いてくれないかしら。


 オルア=サーパース様、白石冬香様はわたしたちと敵対してでも、あなたを守りたいと意思表示されました。

 あなたは、白石様にとても愛されていますわ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「わたしは、冬香様がオルア=サーパース様をあきらめる日を待ち続けていた。

 6年間も待ち続けていた。

 わたしが冬香様のサブシス(Sub-Sis)になりたかった。


 冬香様がオルア様に振られる日を待ち続けていた私の気持ちが、シュウピンに分かるものか!」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「ええ、わからないわ。

 あなたも、わたしがメラニィを待ち続けていた私の気持ちが、わからないでしょう。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「へっ? そうだったのか?

 シュウピンも、中路真々美様が白石冬香様に振られる日を待ち続けていたと思っていた。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「そんな日も確かにあったし、今も真々美様にあこがれる気持ちが熱く、この胸に燃えているわ。

 でも、いつのまにか、メラニィ、あなたに対する気持ちの方が優先されるようになったわ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「いいや、信じられるか、いや、信じられない。

 この場をまるく収めるための方便だろう。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「ポーカーフェイスで、あまり話さない私の個性が原因で、あなたに気付かれなかったのね。

 それは、わたしの責任ね。


 今夜、あなたの部屋に行くわ。

 あなたが納得できるまで、あなたに愛情をそそぐわ。

 それなら、納得できるかなあ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「この場を収めるための演技にしか思えない。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「しょうがないわねえ。

 中路様、白石様、サーパース様、少しお時間と場所を頂けますか?

 奥でメラニィと腹を割って話し合いたいと存じます。」


司会(中路真々美)

「それは、もちろん構わないが。

 冬香はどうだ?」


医師(白石冬香)

「ええ、まあ」


オルア=サーパース こころの声

『なにが、どうなっているのか。

 わからない。

 思考停止して、なにを言うべきか分からないわ。』


 シュウピンは、メラニィの手を引いて奥に行こうとした。

 かなり強い力でメラニィは引っ張られている。


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「わかった、わかったから。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「なにがわかったの?」


 シュウピンは、メラニィを抱きしめて強い口づけをした。

 真々美、冬香、オルアの目の前で、堂々と口づけを続けている。


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「わかった、わかったから。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「そうかしら?」


 シュウピンの手が、メラニィの服の隙間(すきま)に入っていた。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「わたしのあなたへの愛が届いているかなあ?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「届きました。

 届きましたからあ。


 つ、つづきは今夜、私の部屋でお願いしますううー。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「まあ、うれしいわ。

 夜が楽しみね。


 じゃあ、オルア=サーパース様に、ごめんなさい言えるかなあ?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「オルア=サーパース様、あなたが冬香様の愛を無駄にしたときは、私にサブシス(Sub-Sis)の地位をゆずってもらうからな。」


オルア=サーパース

「その心配はいらないわ。

 わたしは冬香様をお(した)い続けます。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「見苦しい嫉妬(しっと)を見せて、すみませんでした。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「白石冬香様には、なんて言うべきですか?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「冬香様への秘めてきた想いを隠し続けることが出来ず、感情的になってしまいました。

 これからも、おそばで仕えさせてください。」


医師(白石冬香)

「メラニィ オネスティさんの気持ちに気付かないふりをしてきた私にも責任がありますね。

 あなたの、いいえ、メラニィさんからの(いわ)い言葉の表現方法の1つとして受け止めることにします。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「ありがとうございます。 白石様。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「ありがとうございます。 白石冬香様。

 お騒がせしてすみません。 中路真々美様。」


司会(中路真々美)

「いや、場を(おさ)めてくれてありがとう。

 ウェン シュウピンさん。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「メラニィ、午後から半休よね。

 今夜、わたしが行くから、受け入れの準備よろしくね。

 私の分の晩御飯も用意しておいてね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「まじか? 本気なのか?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「あら、逃げるつもりなの?

 それなら、ここで始めようか?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「いえ、逃げません。

 準備しますので、夜までお待ちください。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「そう?

 じゃあ、約束手形をくれるかしら?

 さあ、目を閉じて!」


 目を閉じたメラニィの唇にシュウピンは熱いキスをした。

 真々美、冬香、オルアの目の前で。





オルア=サーパース

「あの? 質問しても良いですか?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「どうぞ。 サーパース様。」


オルア=サーパース

「呼び方がとても他人行儀なのは、どうしてですか?

 でも、感情が高ぶると名前呼びになりますよね。


 いちいち呼び方を変えるのは、大変ではないですか?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「距離感が原因ですね。


 中路様、白石様、サーパース様は、王家側の所属です。

 そして、メラニィとわたしは民衆側の所属です。


 光元国の会社組織で言うと、【創業家側の譜代(ふだい)役員】と【就職した側の外様(とざま)役員】のような関係性ですね。


 対等の立場ではなく、上下の関係であり、あくまで仕事上の関係ということを忘れていないという意思表示のために、呼び方は重要なのです。


 配慮の足りない光元国(ひかりもとこく)の男性は、

  「友達ではないのだぞ!」とか

言ったりしますね。


 友達という単語を用いると、

   友達=味方、

   友達でない=敵

という誤解が生じます。


 そうなると、敵味方に分かれる、

   上士じょうし郷士ごうし

のような上下関係の確認になり、協力関係が崩れます。


 そうならないように、呼び方には細心の注意を払っています。」


オルア=サーパース

「そうなのですね。

 想像できないくらいの深い事情があるのですね。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「深い事情と言えば、さきほどのメラニィの言動について、重ねてお詫び申し上げます。

 メラニィは嫉妬心が爆発して、見苦しいところをお見せしました。


 しかしながら、サーパース様が納得できる候補者を移民審査船に乗船させるために、2,000名を超える応募者の情報を確認しました。


<<< そして、あなたが移民招待者を気に入ったことをとても喜んでおりました。 >>>


 改名して、アリムさんと呼ばれている光元国(ひかりもとこく)の男性で男の子のクラスター(Class-Star)候補者は、メラニィが見つけて選んだのです。


 白石冬香様のことさえ無ければ、メラニィはあなたの敵ではなく、白石冬香様のようにあなたの幸せを考えております。

 どうか、メラニィを嫌いにならないでください。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「シュウピン、その話は伏せておいてくれても良いじゃないか?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「そうは行かないわ。

 先ほどのあなたの言動は、サーパース様と白石様だけでなく、中路様まで敵に回してしまう宣戦布告に相当するものでした。

 くさびを打たれてできたひびが広がる前に、手を打つ必要があるわ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「うう。 確かに。」


司会(中路真々美)

「審査対象者は、アリムさんを入れて200名ではなかったのか?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「応募は2,000名を超えています。

 そこから審査会場である移民審査船に乗せる200名を選別したひとがメラニィです。

 わたしは、メラニィの選別結果を承認しただけです。」


医師(白石冬香)

「差し引き1800名近くを落とした理由はなにですか?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「白石様、申し上げます。


 800名ほどは、ただ生活費をもらいたいだけの人たちでした。

 いわゆる取るだけのひと、Taker(テイカー)です。

 カセイダード王国に来てもらっても、こちらが得るものは無いでしょう。


 600名ほどは、今よりも楽をしたいだけの人たちでした。

 それなりの生活をおくれているので、現状維持で光元国にとどまる方が無難な人たちでした。


 400名ほどは、無気力で自己を高める気も無く、人生をあきらめていました。


 移民審査は、

「ところ変われば品代わる」という

「光元国では無価値でも、カセイダード王国に来れば価値がある者を探すこと」

が目的ですから、審査する意味が無いと判断しました。


 アリムさんを唯一の移民招待者とした理由は、クラスター特効(とっこう)でサーパース様のお相手になれる可能性を感じたからです。」


> (注)

>  多くのもてる女性がパートナーを選ぶ基準はパラメーター(能力、地位、金、容姿)である。

>  それに反してクラスターは、パラメーター以外の要素で優先的に選ぶことが多い。

> その要素をクラスター特効(クラスター特別効果の略)と呼ぶ。

>

>  美人以下の女性には理解できない価値基準である。

>  つまり、どこを評価しているのか理解不能、意味不明である。

>  クラスターにしか知られていない真実があるという説もあるが、だれも支持しなかった。


引用元:   004 運営側の話し合い、クラスターとは


司会(中路真々美)

「あの200名は、あれでも|上澄(うわず)み(湖の上の方の水がきれいな部分)だったのか。

 それなら、アリムさんを研修会に参加させずに、最初から別室で対応しても良かったのではないか。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「中路様が司会をされることが決定済みでしたから、中路様なら黒石の碁笥(ごけ)の中にまぎれた白石に気付くように、気付いてくださると考えていました。

 もし、中路様がお気づきにならない場合は、わたしの見込み違いで、サーパース様が気に入ることもないから、他の参加者と同じ会場で良いという結論を出しました。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「そして、わたしもそれで良いと承認しました。」


医師(白石冬香) こころの声

『それは、かなり厳しい賭けね。

 アリムさんが手を挙げたから、真々美が調べることになったけれど・・・

 アリムさんが手を上げなかったら、アリムさんは一次試験に落ちていたわ。


 そういう裏事情は事前に話しておいて欲しいけれど、さっき、オネスティさんと言い争ったばかりだから言いにくいわ。

 言わなくても良いことで、さらに嫌われたくないわ。


 結果だけ見れば、なにも問題は起きていないから。

 それにしても、本当にギリギリね。


 受伝台の予言も、この裏事情は見えなかったのでしょうね。

 冷や汗が出るわ。』


司会(中路真々美)

「アリムさんは、200名ではなく、2,000人を超える応募者の中の唯一の合格者なのか・・・」


オルア=サーパース こころの声

『すごい、すごいわ。

 アリムさんは、スーパーレアなひとだったのね。

 事前注意で、感想も口にしてはいけないと言われてなかったら、歓声をあげていたわ。』


司会(中路真々美) こころの声

Versil(バーシル)換算レートの話をする前に、ずいぶん重い話になってしまったな。

 少し、雰囲気を変えるために、オルアさんの質問タイムにしようか。』


司会(中路真々美)

「オルアさん、なにか質問はあるか?」


オルア=サーパース

「わたしたちがお互いを呼ぶ呼び方ですが、よそよそしく苗字ではなく名前で呼び合う選択肢はありますか?」


司会(中路真々美)

「うーん、不可能ではないが・・・

 わたしたちが、シュウピンさん、メラニィさんと呼んで、

 わたしたちを、真々美様、冬香様、オルア様と呼んでもらうことはできる。

 そうすれば、周囲の者もわたしたちが王家側で、ウェンさんとオネスティさんが民衆側だと判断できる。


 ただ、その場合、ウェンさんとオネスティさんが

  ・王家側に馴れ馴れしすぎるとか、

  ・民衆側の代表としてふさわしくないとか

色々と言われることになって、かえって迷惑を掛けるかもしれない。


 ウェンさんとオネスティさんは、どう思いますか?」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「真々美様と御呼びしたいです。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「冬香様と御呼びしたいです。」


 ふたりは顔を見合わせてから言い直した。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「真々美様、冬香様、オルア様と御呼びしたいです。」


司会(中路真々美)

「冬香はどうだ?」


医師(白石冬香)

「シュウピンさん、メラニィさんと御呼びすれば良いのね。

 賛成するわ。

 オルアは?」


オルア=サーパース

「かなり楽になるので、ぜひお願いします。」


司会(中路真々美)

「それでは、シュウピンさん、メラニィさんと呼ばせてもらう。

 差をつけて気を悪くしないで欲しいが、わたしたちのことは様付けで呼んで欲しい。」


ふたりは顔を見合わせてから、うれしそうに言った。

「真々美様、冬香様、オルア様、よろしくお願いします。」


面接責任者 (ウェン シュウピン) こころの声

『ああ、まさか、真々美様と御呼びできる日が来るなんて!

 素晴らしい提案をしてくれたオルア様に感謝だわ。

 これだけで、オルア様を大好きになれるわ。』


面接準備者 (メラニィ オネスティ) こころの声

『ああ、まさか、冬香様と御呼びできる日が来るなんて!

 素晴らしい提案をしてくれたオルア様に感謝だな。

 これだけで、オルア様を大好きになれるな。』





医師(白石冬香)

「ところで、話を変えるけれど、シュウピンさんは、


<<< そして、あなたが移民招待者を気に入ったことをとても喜んでおりました。 >>>


と言っていたけれど、オルアがアリムさんを気に入っていることをどうやって知ったの?


 ねえ、オルア?

 わたしと真々美以外は知らない話よね?」


 オルアの顔に汗があふれた。


司会(中路真々美)

「たしかに、3日間も業務から外れていたシュウピンさんとメラニィさんが知っていることが不思議だな。

 おふたりのアンテナが高いことは知っているが、いつ知った?」


面接準備者 (メラニィ オネスティ) こころの声

『これ、言ってもいいのかな?

 さきほどの失敗があるから、これ以上の失言(しつげん)は避けたい。

 シュウピンの方から言ってくれないかなあ?』


 メラニィのすがるような目を見て、シュウピンが言うことにした。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「司令室に入る数分前に知りました。」


司会(中路真々美)

「数分前?」


医師(白石冬香)

「階段とアリムさんのいる来客室しかないけれど・・・

 あ、もしかして、来客室に入ってアリムさんと話したの?」


 面接準備者 (メラニィ オネスティ)が最高速で、顔を横に振っている。

 少しおびえているようだ。


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「見てもらった方が早いですよ。」


 シュウピンは、司令室の外に通じる扉を開けた。





 アリムさんがいる来客室の前に来ている。


 真々美と冬香は、司令室の手前にある来客室の扉を見て、おどろいた。


 「Allrounah SURPASS」(読み方: オルア サーパース)という右上がりの青い文字が大きく書かれていた。


 ペンキではなく、オーラというか気で書かれているから、気を使えない者にはまったく見えないし、感じない。


司会(中路真々美)

「なるほどな。 たしかに良く分かるな。」


医師(白石冬香)

「オルア? いつ書いたの?」


オルア=サーパース

「今日の朝、司令室に入る前に書きました。」


医師(白石冬香)

「オルア? なぜ書いたの?」


オルア=サーパース

「だって、面接担当のおふたり、シュウピンさんとメラニィさんがアリムさんと会ってしまったら、アリムさんはおふたりを絶対に好きになってしまう。

 おふたりの容姿は面接の動画には映っていなかったけれど、面接を受けた男性たちは、じろじろと見つめて夢中になっていたわ。

 だから、とても魅力的なおふたりと予想できたから、アリムさんのいる来客室には入らないで欲しかったの。


 おふたりの容姿と雰囲気を見て、その判断は正しいと確信したわ。


 シュウピンさんの長く美しい黒髪と優しいひとみ、おっとりとした落ち着く雰囲気を知れば、そのきれいな額にキスしたくなってしまうわ。


 そして、メラニィさんの美しい紫のひとみと、小悪魔的にかわいいお顔と私と過ごせばトキメキあげるよという雰囲気に当てられたら、抱きしめたくなってしまうわ。


 とびらに大きくサインを書いたから、おふたりも来客室のとびらを開けなかったのだと思うから、正しい判断だったのよ。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「ま、まあ、まだアリムさんは気を使えないなら、大丈夫だと思うぞ。

 ただ、アリムさんに見られたら、足元を見られて尻に敷かれるかもな。」


オルア=サーパース

「それは、困るわ。

 恋の主導権はわたしが握っていたい。」


司会(中路真々美)

「まあ、そのうち、消えるだろうから良いだろう。

 ただ、オルアさん、もう書かない方が良いな。」


オルア=サーパース

「はい、もうしません。」


医師(白石冬香)

「シュウピンさんも、メラニィさんも、びっくりしたでしょう。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「いいえ、大丈夫です。

 メラニィは、苦労した甲斐があったと喜んでました。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「アリムさんを気に入ってくれたことが分かって、ほっとしました。」


司会(中路真々美)

「そう言ってくれると助かる。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「真々美様、わたしの額にキスしたくなりませんか?」


司会(中路真々美)

「うーん、魅力的なおでこだが、それにつけても、冬香のおでこだな。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「冬香様、わたしの瞳の奥をご覧ください。」


医師(白石冬香)

「とても魅力的だけれど、真々美とオルアに愛されているうちは、遠慮しておくわ。

 ふたりに冷たくされたときに見せてくれたら、うれしいな。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「真々美様、オルア様、冬香様に冷たくするときは教えてくださいね。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「いつ来るか分からないことよりも、今夜来る私のことを思い出してね。」


面接準備者 (メラニィ オネスティ)

「わたしに、美しいおでこを見せて言うべきことを言ってくれたらな。」


面接責任者 (ウェン シュウピン)

「メラニィ、わたしの額にキスしたくなりませんか?」


 メラニィは、返事する代わりに、シュウピンのおでこにキスをした。





 ふたたび、司令室にもどった5人。


司会(中路真々美)

Versil(バーシル)について、絵美、つまり、白沢絵美様の決定を伝える。」


会議は始まったばかりだ。


いや、ようやく始まろうとしていた。


AM10:35



司会(中路真々美)

「なんか、数年分、疲れた気がする。」


医師(白石冬香)

「オルア、大丈夫?」


オルア=サーパース

「うん、なんとか。」


面接責任者ウェン シュウピン

「真々美様、そして、メラニィ。

 大好きよ。」


面接準備者メラニィ オネスティ

「冬香様、そして、シュウピン。

 大好きだ。」


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― 新着の感想 ―
[良い点]  彼女がいなければ、せっかくのイラストが無駄になるところでしたね。 > いままで静かに黙っていたシュウピンが割って入った。 [気になる点] オルアさんの生殖刑って、もしかして・・・ …
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