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017 5日目 アリムさんの訓練 「2 記憶」

 オルア=サーパースは、アリムさんの訓練を続けている。


 オルアはアリムさんを連れて、カラオケルームのような部屋に入った。

 防音が効いているから、栄語の聞き取りテストもできそうだ。


オルア=サーパース

「次は、記憶についてです。

 アリムさんは、多くの資格検定に合格されているから、記憶力が良い方でしょう。

 だから、記憶については、テストまで進められるでしょう。」


アリム

「でも、覚えられることと、覚えられないことがあります。

 他の人のように、一度聞いただけでは覚えられないのです。

 他の人の3~5倍くらい繰り返して、ようやく覚えられるという感じです。

 とくに、人の顔と名前を覚えるまで、10回くらい連続会うまで掛かります。」


オルア=サーパース

「そうですか?

 そこまで、謙遜しなくて良いですよ。

 では先ず記憶の仕組みから始めますね。」


アリム

「基礎からスタートして頂けると助かります。」


オルア=サーパース

「そこまで、おっしゃるなら、そうしますね。」

 オルアは違和感を感じた。

 なんで、ここまで自信なさそうなんだ?


オルア=サーパース

「では、はじめます。」


アリム

「よろしくお願いします。」


オルア=サーパース

「記憶するためには、メリット(有利な点、利益)が必要です。

 それが無いことに対しては、記憶できません。


0.

 危機感を覚えたとき、失敗したとき、危険な目にあったときに記憶することで、ゲームオーバーを回避することが出来て、人類は進化してきたという説が有りますが、惜しいというか間違いに近いです。

 身体に覚えさせてやる!と暴力を振るって、言うことを聞かせることを躾だとか教育だと考えるやから(荒くれ者や毒親)が存在しますが、心身を削るため、プラスマイナスゼロを下回って、はっきり言わなくてもマイナスです。

 鞭で叩いて言うことを聞かせて効果を出させる行為は、超短期的に見れば成果が上がりそうですが、10年以上の長期で考えると、成長の伸びしろを奪います。


1.

 大好きな映画やマンガの心躍る場面を記憶しやすい理由は、覚えることによってドーパミンという快感物質が出るからです。

 反対例として比較しますが、教科書の重要な箇所を色分けしても、何度も声に出しても、覚えられないことが有ります。 覚えることに利益がないからです。

 そして、当然ながら理解していないことは覚えられません。

 必要とする記憶容量が大きすぎて、頭に入らないのです。


2.

 大好きな異性の誕生日や趣味を覚えるひとは、目的地への行き方(たどり着く手段)になるからです。


3.

 舞台で演劇をする俳優さん、楽譜を暗譜して弾くピアニスト、法律の条文を覚える弁護士の場合は、覚えることが「武器」となるから覚えることができます。


オルア=サーパース

「1.快楽が得られるか?

 2.快楽を得る場所への地図か、

 3.他者より有利となる武器になるか?


 大きく分けて、この3つになります。


 それでも、

「覚えることにメリットがあるか?」

と、ひとことで言えます。


オルア=サーパース

「アリムさん、ご質問は?」


アリム

「実の子供に体罰を加えながら成績を上げる行為は、

  1.快楽が得られるか?

に分類されますか?」


オルア=サーパース

「無理やり入れると、そうなります。

 しかし、なにかが壊れます。


 奴隷の笑みを浮かべる子供や、

 暴力こそ正義、

他人は力で支配するべきなど

間違った考え方をするようになります。


 カセイダード王国では、このような教育をする親から子供を国の権力で没収して、縁を切らせる体制を確立させましたが、それでも、長く見積もっても20年前のことです。

 短く見積もれば、10年前から始まった、つい最近のことです。


 そのように精神をゆがませられた個体は隔離するように進めていますが、完全ではないです。


 もし出会ってしまったら、

  A.より強い力で抑えつけるか?

  B.一刻も早く逃げるか?

しかありません。


 カセイダード王国のようにベーシックインカムを導入して成功していない場合は、現在では間違いと分かった古い考え方を正しいと信じる者が多いです。


 躾や教育という言葉のもとに暴力や暴言が許されると考えるひとたちからは、逃げるしかありません。


 記憶の話から遠ざかったように感じるでしょうが、良好な記憶力を維持するためには、適切な環境のもとに安全が確保されていることが重要です。


アリム

「すごい、本が1冊出せそうですね。」


オルア=サーパース

「おほめ頂き、恐悦至極に存じます。

 と、言いたいところですが、

カセイダード大学 人文系 人文基本3学問 超心理学 の一部分です。


つまり、すでに書籍化されています。」


アリム

「すごいね。自分の知識として、使いこなしているんだね。」


オルア=サーパース

「えっへん。それほどでも、ほめてもなにも出ませんよ。」


オルアは、記憶力テストの問題用紙と答案用紙を出した。


アリムは、冷や汗を出した。


オルア=サーパース

「10分休憩後に、これでテストします。

 外を見て、頭をぼーっと休ませてくださいね。」


アリム

「はい。」

 とても不安そうな顔をした。



 記憶力テストが始まった。


第1問

 光元国の言語での聞き取りテスト。

と言っても、選択肢式ではない。

 聞いた文章を紙に書き出す再生作業のような内容だ。


第2問

 カセイダード王国の言語、カセイダード風の栄語について、同内容を聞く。

 それをカセイダード風の栄語で書き出す。


第3問

 テキスト出力されたタイプ文字の文章を20分かけて読む。

 その後、20分かけて書き出す。

 (光元国の言語)


第4問

 テキスト出力されたタイプ文字の文章を20分かけて読む。

 その後、20分かけて書き出す。

 (カセイダード風の栄語)


第5問

 座席表の記憶

 自分を中心とした座席の周囲に座る9名の名前を9分で覚えて書き出す。


第6問

 10分の会話を聞いて、できる限り正確に書き出す。

 (光元国の言語)


第7問

 10分の会話を聞いて、できる限り正確に書き出す。

 (カセイダード風の栄語)


第8問

 顔写真と名前を覚えるテスト

 一気に、20名紹介された場面を想定している。



 テスト結果は、ほぼゼロ点だった。


 アリムさんは、申し訳なさそうに下を向いている。

 自分でも出来なかったと分かっているのだろう。


 オルア=サーパースは、思った。

『低すぎる!

 あまりにも低すぎる!

 ふざけてんのか?』


 しかし、アリムさんの様子からは、真剣にやったように見える。


 なにか? なにか? 変だ!


 YourTV の動画にせよ、

 ブログ記事にせよ、

素晴らしい出来栄えだ。


 資格試験にせよ、カンニングして合格できるような試験ではない。


 アリムさんの作品を確認しながら考えた。


 これだけの作品を作り、数多くの資格試験に合格した者の頭脳とは思えない。


 考えれば、考えるほど、分からない。


 そう言えば、

【出来は良いが、作品数が少ない】

気がする。


オルア=サーパース

「アリムさん?

 資格検定ですが、2級が多いですね。

 1級は受験しなかったのですか?」


アリム

「3回受験しましたが、覚えることが多くて、不合格の連続でした。」


オルア=サーパース

「??? 

 YourTV の動画も、ブログ記事も非常に良い出来栄えです。

 この3~5倍くらいの量を作っても良かったのではないですか?」


アリム

「1つの動画にしても、1つの記事にしても、ものすごい時間をかけて作りました。

 ブログ記事だと3~7日間かけて1つの記事を作ったことがあります。

 また、1分の動画を作るために、30分かけたことも多いです。」


オルア=サーパース

「それは、ずいぶん遅いですね。」


アリム

「そうですね。

 遅い、遅い、遅い とか

 こんなことも出来ないの?

と上司に怒鳴られたことが多いですね。」


 青菜に塩ということわざにあるように、アリムさんがずいぶんと、しおれていた。

 「もうすぐ、ボクは捨てられるんだね。」

と覚悟した子犬のようだ。


オルア=サーパース

「アリムさん、ちょっと良いですか?」


アリム

「はい。」


 オルアは自分のおでこを、アリムのおでこにくっつけた。


 10分くらいしてから、オルアはアリムを強く抱きしめた。

 アリムからは見えなかったが、オルアは泣いていた。


オルア=サーパース

「アリムさん、ものすごく頑張ったんだね。」


アリム

「はい。」

 声を出さずに泣いていた。




 昼食は、野菜たっぷりラーメンになった。


 オルアの提案だ。

 これなら、スープの熱さで、涙や鼻水などが出たことにできるわ。


 そして、気分転換にアリムさんと歩いた。

 オルアはアリムの腕を抱いて歩いて、アリムさんの反応を見た。


 今は気づいてないけど、あとでアリムさんの思い出になりますように。



 オルアは、アリムさんをとなりのほぼアリムさん専用となった待合室に待機させた。


 そして、司会(中路真々美)と医師(白石冬香)が待つ部屋に入った。


司会(中路真々美)

「オルア、どうだった?」


オルア=サーパース

「うん、あのね? 真々美の遺伝子を、アリムさんにコピーしてあげてくれないかな?

 それと、冬香の遺伝子も、アリムさんにコピーしてあげてほしいの? 無理かな?」


医師(白石冬香)

「どうしても必要な項目があるようね。 くわしく話してくれる。」


 オルアが追い詰められたような表情をしている・・・


 それにしても、真々美からはいつもの切れを感じない。

 なにか嚙み合わないし、なにかが変だ。


オルア=サーパース

「まずは、分かっていたことから、

 わたしの遺伝子からは、色覚、聴覚情報処理と関連一式をコピーしたい。


 真々美の遺伝子からは、気、体力、腕力、カリスマ、指揮力、判断力などが欲しい。

 私のものより格上だから・・・


 冬香からは、記憶力関連の遺伝子が欲しい。

 つまり、瞬間記憶、記憶圧縮、録音再生、空間認識、観測力、受信力などが欲しい。


 これが欲張りすぎだというのなら、


 真々美からは、「気」関連だけでも、お願い。


 冬香からは、「記憶力」、特に聴覚入力記憶だけでも、アリムさんにあげて欲しい。」


司会(中路真々美)

「わたしの分はコピペして構わない。」


医師(白石冬香)

「全体のバランスと書き換えの負荷を確認してから、できる範囲でという条件なら、いいわ。

 それにしても、記憶力の優先度が高いのね。

 アリムさん自身の記憶力でも十分そうだけど? なにか問題が?」


オルア=サーパース

「アリムさんの記憶力と記憶容量ね、ものすごく低いの!


 例えて言えば、真々美と冬香はお風呂のお湯を張るとき、どうしてる?」


司会(中路真々美)

「自動お湯張りのボタンを押すだけだな。」


医師(白石冬香)

「必要に応じて、蛇口をひねって、お湯や水を足したりね。」


オルア=サーパース

「そうよね。 普通、そうよね。 水道の蛇口をひねるだけよね。」


 目に涙を浮かべている。


司会(中路真々美)

「どうした?」


医師(白石冬香)

「そのたとえ話で行くと、アリムさんの場合は、バケツで川からくんで来る感じですか?」


オルア=サーパース

「小さなコップで、遠くの川から水を汲む感じですね。

 つまり、他の人が想像できないくらい大変な作業よ。

 小さなコップじゃ何百回も掛かるわ。」


司会(中路真々美)

「ずいぶん大げさだな。」


医師(白石冬香)

「かなり深刻な状態ね。」


オルア=サーパース

「そうなの。

 それに、多くの人の記憶容量が、25mx6コースのプールだとしたら、アリムさんのはお風呂の浴槽程度しかないの。

 1つの資格試験に合格するたびに、水を全部抜いて、新しい資格試験の知識を小さなコップで貯めるの。

 そんなアリムさんの苦労も知らないで、アリムさんの周囲の人たちはアリムさんをねたんで・・・

 自分たちは努力しなかったことを棚に上げて、よくもよくもアリムさんを


 あっ?

 熱くなりすぎたわ。

 引、引かないでね。


 おまけに聴覚情報の処理がすぐにフリーズして固まるから、かなり不利な状況なの?

 小石拾いと雑草抜きに行こうかしら?」


司会(中路真々美)

「庭園の整備員の仕事を取るのは、良くないな?」


医師(白石冬香)

『なんか、真々美、にぶくなっているような?

 それとも、とぼけて行かせない手かな?』

「わかったわ、わたしの遺伝子から記憶力をコピペするから、安心して。」


オルア=サーパース

「ありがとう、真々美、冬香。

 午後の研修だけど、アリムさんは記憶力テストが出来なくて悩んでいるから、気分転換させたいの。

 卓球とか、テニスとか、お互いの顔を見ながらできるスポーツで身体を動かして、悩む暇が無いようにしてあげたい。

 研修の予定が遅れるけれど、今は、頭が働かないだろうし。

 そうしていいかな?」


司会(中路真々美)

「オルアが良いと思うようにすればいい。」


医師(白石冬香)

「良い手ね。

 悩み事があるときに頭を働かせようとしても無意味だから、賛成よ。」


オルア=サーパース

「ありがとう、真々美、冬香。

 16時に戻ってくるね。」



司会(中路真々美)

「冬香、遺伝子のアリムさんのバックアップを見せてくれ。

 わたしの遺伝子で上書きする前に、もともとの遺伝子を確認したい。」


医師(白石冬香)

「そうね。 もしかしたら、少しの修正で済む話かもしれないから。」


 司会(中路真々美)と医師(白石冬香)は、アリムさんの遺伝子を確認した。

 光元国の技術レベルでは、ジャンク(ガラクタ、ごみ)と呼ばれる部分だ。


 しかし、カセイダード王国の技術力では、さらに上のことが分かっている。

 ジャンク(ガラクタ、ごみ)と呼ばれる部分はもちろんのこと、精子や卵子にあるミトコンドリア(エネルギータンク)のDNAが遺伝子情報の補助書庫として書き換えられていることまで確認できている。


 この説については、笑い話で否定されてきたが、お互いが理解し尊敬しあっているカップルから生まれる子供は、この説が本当ではないかというくらい優秀な子供が生まれた。


 どうやら、お互いを理解しようとして、さらに、お互いを尊重している場合は、通常よりも多くの情報を伝達できるという推論だった。検証の結果、解読キーの利用可否に影響するというパソコンの暗号化圧縮ファイルのようだった。


 むずかしい話を省略すると、この話が理解されてからは、男性側から女性側にアプローチすることは非効率で、得られる成果も少ないことが分かった。


 結果、カセイダード王国では、男性が女性に許されるアプローチは遠くから視線を送ることだけとなった。 視線を感じた女性が、その中から気に入った男性を選ぶ形式に変わった。


 昔のようなナンパをしたり、女性の腕をつかんで連れて行こうとすると、即、社会的に退場することになるので、女性にとっては過ごしやすい世の中になった。



司会(中路真々美)

「気に関する遺伝子情報は、ここだな。」


医師(白石冬香)

「真々美の遺伝子は、G4、Grade 4 ね。

 アリムさんの遺伝子は、粉々になっているわね。

 コピペするしかないのかな?」


司会(中路真々美)

「冬香、今は時間的に余裕があるから、上書きする前に、粉々の遺伝子を組み立ててみよう。

 普段なら面倒くさくてやらないが、たまには、ジグソーパズルを楽しむ感覚で良いだろう。」


医師(白石冬香)

「不謹慎な、まじめにやってよね。

 こなごなの遺伝子まで見てたら、日が暮れるわ。

 ジグソーパズルにだって、完成図を見ながら絵柄を合わせるんだからね。」


司会(中路真々美)

「じゃあ、わたしの遺伝子を完成予想図として、組み立ててくれ。

 ん? 冬香この辺が気にならないか? G5 の文字の一部な気がする。」


医師(白石冬香)

「もし、そうなら、あなたより上の遺伝子ね。

 確率的には低いと思うけれど、

 気になるなら、確認しましょう。

 それが済んだら話したいことがあるから、時間をもらうわよ。」


司会(中路真々美)

「じゃあ、1個だけでも試してからにしてくれ。」


医療用AI

「中路真々美様の遺伝子を仮想の完成予定図として、アリム様の遺伝子の再組立て補修を実行します。 (Y/N)」


医師(白石冬香)

「YESで実行、と。

 10分くらい掛かるわね。

 なにか飲む? 真々美。」


司会(中路真々美)

「ああ、よろしく頼む。

 ひさしぶりに落ち着いたお茶休憩ができそうだ。」


医師(白石冬香)

「なにか、あせってするべきことを忘れていたなんてことは?」


司会(中路真々美)

「ないと思うが、忘れていたら、明日、わたしが誰かに文句を言われるだけのことさ。」


医師(白石冬香)

「・・・」

 なんか物足りない。

 気のせいかもしれないけれど、いつも感じているなにかが足りないような。

 今の真々美を見ていると、男装の麗人を見ているような気分だ。

 つまり、ときめきを感じないような気がする。


医療用AI

「復元できました。

 いやあ大変でした。

 私を讃える歌を唄ってください。」


医師(白石冬香)

「また、今度ね。」


医療用AI

「サービスわるいな。

 ツケにしておきます。」


アリムさんの遺伝子を復元しました。


『意識飛ばし』 Grade 5、

『怒気当て』  Grade 5、

『圧殺』    Grade 5


 これは、医療用AIである私の性能が高いから復元できたのであって、他の医療用AIでは無理だったでしょう。

 もちろん、中路真々美の遺伝子を仮想の完成見本として提供いただいたことが大きいですが、それでも、わたしほどの優秀なAIだからこそ、成しえたことで・・・(中略)」


医師(白石冬香)

「ありがとう。 素晴らしいわ。

 流石ね。 これからもよろしくね。」


医療用AI

「守護神のように、崇め給え! はっはっはっ」

 ごきげんな様子だ。


司会(中路真々美)

「Grade 5 だと、わたしの遺伝子より1グレード上だ。

 ほかの遺伝子は、どうだ?

 今度は、冬香の遺伝子で上書きする予定の部分を試してくれ!」


医師(白石冬香)

「そうね。非常に気になるわね。

 アリムさんの記憶に関する遺伝子は、この辺ね。

 Gという文字だけね。 数字は見当たらないわ。


 それでは、わたしの遺伝子を完成予想図として、」


医療用AI

「白石冬香様の遺伝子を仮想の完成予定図として、アリム様の遺伝子の再組立て補修を実行します。 (Y/N)」


医師(白石冬香)

「YESで実行、と。

 また10分くらい掛かるわね。

 どきどきするわね? 真々美。」


司会(中路真々美)

「ああ、わくわくする。」


医療用AI

「復元できました。 いやあ大変でした。

 私を讃える踊りを披露してください。」


医師(白石冬香)

「また、今度じゃ、ダメえ?」

 色っぽい声でごまかそうとした。


医療用AI

「3倍換算でツケにしておきます。」


 アリムさんの遺伝子を復元しました。


 『瞬間記憶』 Grade 5、

 『記憶圧縮』 Grade 5、

 『録音再生』 Grade 5


 これは、医療用AIである私の性能が高いから復元できたのであって、他の医療用AIでは無理だったでしょう。


 これも白石冬香様が私を調整してくださったおかげでありまして、そのご恩返しができて光栄でございます。」


医師(白石冬香)

「ありがとう。 素晴らしいわ。 しかも謙虚。 とっても素敵だわ。」


医療用AI

「わたしは貴方様のお役に立つために生まれてきました。」


司会(中路真々美) こころの声

『医療用AIが、急に謙虚になった理由はなんだろう。

 冬香が何かしたのだろうか?

 しかし、それを確認する度胸はない。』


司会(中路真々美)

「素晴らしすぎる。

 アリムさんを確認したとき、ナイトバインドしたいと感じた理由は、これだったんだな。」


医師(白石冬香)

「わたしもナイトバインドしたい気持ちをおさえることに苦労した理由が分かって、疑問が一つ晴れたわ。」


 くわしくは、 第一章 004 運営側の話し合い、クラスターとは


司会(中路真々美)

「そう言えば、絵美から伝言を預かっていたのを思い出した。」


医師(白石冬香)

「白沢絵美様は、なんて? 」


司会(中路真々美)

「受伝台のお告げをテキストにしたものを、冬香、オルア、そして、アリムさんにも見せて欲しい。

という内容だった。」


医師(白石冬香)

「ふうん、いつの話?」


司会(中路真々美)

「昨日の深夜、絵美からプライベートメールが来たんだ。」


医師(白石冬香)

「もう昼過ぎよ。」


 受伝台参照権で得た助言のテキスト印刷物を、冬香に見せた。


 しばらくすると、冬香は青ざめた。


医師(白石冬香)

「なんで、朝一番に見せなかったの?」


司会(中路真々美)

「えっ? えっ? どうしたんだ?」


医師(白石冬香)

「絵美様、ほかには何か言ってなかった?」


司会(中路真々美)

「わたしのことを、いじわるだとか、魔力が落ちたとか。」


医師(白石冬香)

「それよ!」


 17話にして、やっと・・・

 ライトノベルの主人公要素を書けました。


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