166 8月28日(月)アリムは無理し続けてる
この話は、アルファポリスとほぼ同時公開しました。
2023年8月28日(月) 17:10
宝物庫の準備室にて
メラニィは、部屋を出る準備をしていた。
モンテハート大公爵の発言を記録したノート、
モンテハート大公爵の発言を繰り返して、自身の声で録音したデバイス、
そして、モンテマニー侯爵と理香の思い出の写真が収められた分厚い本。
これらを、リュックに入れて背負って、部屋を出た。
◇
宝物庫の準備室前の空いたスペースには、折りたたみ机と多くの書類が集められていた。
メラニィ
「絵美様、真々美様、冬香様、シュウピン、セーラ。
もしかして、私を待つために、ここで業務をされていたのですか?」
絵美
「そうよ。 メラニィさんの悲鳴が聞こえたりしたら、みんなで飛び込めるように控えていたのよ。」
真々美
「お疲れ様でした。メラニィさん。」
冬香
「帰りを待っていたわ。 なにか飲む?」
シュウピン
「あの愚物に情報を吐かせることは大変だったようね。」
メラニィ
「いえ、そんなことはありません。」
メラニィ自身は気付いてはいなかったが、かなり不機嫌な顔をしていたようだ。
セーラ
「メラニィ? どうかしましたか?
なにか必要なものがあれば言ってくださいね。
すぐに、持ってきますから。」
メラニィ
「ああ、ありがとう。
うん? オルア様とアリム様の姿が見えないな。」
真々美
「ああ、それはな。
アリムが疲れた様子だったから、向こうで休んでもらっている。
オルアは、予想が付くと思うがアリムの付き添いをしている。」
メラニィは、真々美が指さした方向を見た。
次の瞬間、メラニィの表情が険しくなった。
メラニィ(理香の転生体)
「黄庵様、帰りを待っていたわ。って、こういうことですか?
いつからですか?
わたしを待つ必要は無かったはずです。」
冬香(黄庵の転生体)
「いつからって、モンテハート大公爵を降霊した後だから、4時間くらい前からね。」
メラニィ(理香の転生体)
「4時間もですか?」
メラニィは、さらに険しい顔をした。
冬香(黄庵の転生体)
「疲れている様子だったから、眠った方が良いと判断したのよ。
医師資格を持ったオルアが付いているから安心していいわ。」
メラニィ(理香の転生体)
「なにが安心ですか?
それでも、医者ですか?
この間抜けども!
来てください。 黄庵様。」
メラニィは、目に見えるくらい近くにいるにも関わらず、冬香の手をつかんで、アリムの元に走り出した。
オルア
「メラニィさん、お疲れ様でした。
なんで、そんなに怖い顔をしているの?
あ、わかった。 モンテハート大公爵に無礼な対応をされたのね。」
メラニィ
「お二人とも、アリム様とナイトバインドした責任を果たしてください。
医者ではないとは言え、真々美様も、どうかしています。」
オルア
「なんで、そんな風に言われなきゃならないの?」
メラニィ
「アリム様をよく見てください。
本気で眠っているだけと思っているのですか?」
オルア
「どこか変ですか?
体温も脈拍も顔色も正常です。」
冬香(黄庵の転生体)
「そうよ。 アリムは過労で眠っているだけよ。
いつも冷静なメラニィさんは、どこにいったの?」
メラニィ(理香の転生体)
「黄庵様、いいえ、黄花様。
わたしを試すのもいいですが、時と場合を考えてくれませんか?
【聴診丸】の使用許可を、わたしにください。」
冬香(黄庵=黄花の転生体)
「え、ええ。 どうぞ。」
冬香は、メラニィに神器の 【聴診丸】を手渡した。
メラニィ(理香の転生体)
「【聴診丸】、ちからを貸してください。」
メラニィは、【聴診丸】の片方をアリムの額に当てた。
アリムの声が、【聴診丸】のもう片方から聞こえてきた。
アリム 【聴診丸】
「まずい。 本当にまずい。
いい格好を見せようとして、自分の限界を見誤っていた。
でも、眠らせてもらえて良かった。
もう少しでまた意識不明の重体に落ちるところだった。」
冬香(黄庵=黄花の転生体)
「え? どうして、メラニィさんが【聴診丸】を使いこなしているの?」
つづく
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