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104 前世のわたしへの手紙と製作依頼

 20日目(8月20日(日)) AM 10:30 朝


(2日に一度の会議: 偶数日の予定、本日は休日。

 一番権利者: 真々美。)




 アリムは自分の部屋で手紙を書こうとしていた。

 それも、自分自身への手紙だった。


アリム

「3つ前の前世のボクに生まれ変わりだと信じてもらうには・・・


 はっきりと言って、(りゅう)(ゴット)のときのボクは頑固(がんこ)な子供だからなあ。


 手紙を書いても1行目で読むことをやめてしまうかもしれない。」


 アリムは、本当に悩んでいた。


アリム

「よし、自業自得(じごうじとく)だと、あきらめて書こう。」


===== てがみ はじまり =====


(りゅう)(ゴット)


1.

 きみは白沢絵美(しろさわみ)様のことが好きだろう?

 それなのに、どうすれば良いか分からなくて、素っ気ない態度(たいど)を取っている。


 このままでは、絵美様に嫌われて、振られてしまうぞ。

 そうならないために、どうすればいいのか?を、書くから最後まで読んで欲しい。


 おまえは誰だ? えらそうに? でも、万が一、役に立つ情報をもらえるのなら、と(なや)んでいる様子が目に浮かぶ。


 なぜ分かるかって?


 それは、ボクは、3回生まれ変わって転生したキミ自身だからだ。

 絵美と仲良くできなかったことは、3度転生した今でも深く深く後悔しているんだ。


 キミのためでもあるけれど、ボクのためにも、絵美との恋を実らせて欲しい。


2.

 少しは冷静になって落ち着いただろうか?

 まず、ボクがキミの転生体である証明をしたい。

 ただし、科学技術力の面ではないことを大目(おおめ)に見て欲しい。


 ボクの記憶には出来事(できごと)は残っているが、詳しい内容は覚えていないんだ。


 科学技術館に展示しているカセイダードを救ったと言われる3体のグレーターロボのことを覚えているかい?

  ブルースター、

  レッドチェスト、

  グリーンマント

のことだ。


 それを毎日のように見上げていた。

 いつか、それを自分自身の手で作り上げるためだ。


 内部構造を知りたいからスキャンしたかったことは、今でも覚えている。

 しかし、止められてできなかった。

 キミも気付いているように、タダの張りぼてだということを、サークから聞かされた。

 カセイダード大学 人文系のみが知っている秘密だそうだ。


3.

 絵美様に、シルバーソードの試作品を持たせてくれてありがとう。

 レッドコンバーターを内蔵することで、戦闘持続力を向上させた工夫は完成品でも採用して欲しい。


 シルバーソードの(つい)となるゴールドソードの開発に必要なデータが、シルバーソードの戦闘ログに残っているはずだ。


 【妖刀斬(ようとうざん) 紅丸(べにまる)】という300年前からあるという妖刀に3回だけ触れてもらった。

 「触れただけで、この威力はありえない」

と思うかもしれないが、本当だ。


 キミなら役立てることができるだろう。


 そして、霊体(れいたい)や電磁波、魔力、風などの目に見えないものを切る剣を完成させて欲しい。


4.

 遅くなったが、絵美様と仲良くするために必要なことを書くね。


 最近では、良い男性に関する価値観が変わったんだ。


 むかしは、女性になびかない男性が硬派でカッコ良かったのだが、今では悪い例となっている。

 (おどろ)きだよね。


 いまでは、意中の女性のために、最優先で時間を割り振ることができる男性の価値が上がっている。


 具体的に言うと、白沢絵美様と食事を楽しむ時間を最優先で割り当てて欲しい。

 来てくれることを待つだけでなくて、自分から誘いに行くことが大事だ。


 なあに、キミが研究に使っている時間を少し回すだけでいいんだ。

 絵美といっしょにいると胸がドキドキして心拍数があがるだろう?

 その結果、脳に巡る血液量が増えるし、普通の運動の3倍以上の脳の活性化効果があるんだ。


 だから、絵美に頼んで欲しい。


「絵美といっしょにいる時間を増やしたいんだ。

 まずは、いっしょに食事をしたい。

 そして、手をつないで歩きたい。」


 その意思表示さえすれば、絵美が夢に描いているラブストーリーへと招待してもらえるんだ。

 簡単なことだろう?


 キミが、ちいさな一歩を踏み出せば、万事解決するんだ。


 <<< 絵美は、キミに嫌われているかもしれないと身を引く寸前だよ。 >>>


 絵美と、「さよなら」したくないよね?

 だから、急いで欲しい。


 そして、キミが知らないシクペリアの常識を書いておくね。


「白沢絵美様だけには、かなわない。

 あの方は、わたしが唯一尊敬する御方よ。」


 これは、キミの3つ先の来世で出会う師匠の言葉だ。

 シクペリアで一番に望まれている愛情深くて、美しくて賢い女性の言葉でもある。


 だから、この手紙を読み終わったら、絵美に言って欲しい。


「おかえりなさい、絵美。

 君に会えなくて、さみしかったよう。

 もう、どこにも行かないで!」


と抱きしめるくらいで、ちょうどいい。


 ボクの後悔を、キミが果たしてくれることを願っています。


3つ前の前世のボク 竜豪へ

3つ先の来世のキミ アリムより



追伸


 この手紙は、絵美には見られないように、蜜蝋(みつろう)で封印しておいた。


 キミにお願いしたいことがあるんだ。

 カセイダード王国チータマルム星支国は、周辺諸国から攻め込まれたとき、軍事的に勝てそうにないんだ。

 だから、キミの技術力で、対抗手段を用意して欲しい。


 絵美と仲良くできて、しあわせを感じることが出来たら、作って欲しい。


【希望仕様】


 空戦兵器: レッドイーグル 使用者は真々美(ままみ)

  赤い(わし)型の鳥のようなカタチをして【大空(おおぞら)】を制するグレーターロボだ。

  「()え! レッドイーグル」

 と叫べば、敵戦闘機を無力化しただけでなく、敵パイロットを無傷で捕まえてくれる。


 陸戦兵器: イエロータイガー 使用者は冬香(ふゆか)

  黄色い(トラ)型の(けもの)カタチをして【大地(だいち)】を制するグレーターロボだ。

  「()けろ! イエロータイガー」

 と叫べば、敵戦車などを無力化しただけでなく、敵パイロットを無傷で捕まえてくれる。


 海戦兵器: ブルーシャーくん 使用者はオルア。

  青い(サメ)に両腕があるようなカタチをして【大海原(おおうなばら)】を制するグレーターロボだ。

  「(およ)げ、ブルーシャーくん」

 と叫べば、戦艦や空母だけでなく潜水艦までもを無力化し、敵パイロットを無傷で捕まえてくれる。


 ヒト型兵器: ホワイトナイト 使用者はアリム。

  上記の3つの兵器を使用する者たちが承認することで起動できる。


 ”火”防スーツ: 使用者は真々美。

  カセイダードスーツの”火”着と防着の2つの機能を持つ戦闘服。

  「力愛同身(りきあいどうしん)」と叫んで、装着する。


 ”水”防スーツ: 使用者は冬香。

  カセイダードスーツの”水”着と防着の2つの機能を持つ戦闘服。

  「智愛同身(ともあいどうしん)」と叫んで、装着する。


 ”音”防スーツ: 使用者はオルア。

  カセイダードスーツの”音”着と防着の2つの機能を持つ戦闘服。

  「金愛同身(かねあいどうしん)」と叫んで、装着する。


  ”電”防スーツ: 使用者は絵美。

  カセイダードスーツの”電”着と防着の2つの機能を持つ戦闘服。

  「カセイダードスーツ」と叫んで、装着する。


 これらの夢のような性能を実現するちからが、キミにはあることを信じているではなくて、知っています。


 よろしくお願いします。


===== てがみ おわり =====




 ボクは、絵美たちが待つリビングに戻ってきた。


アリム

「みんな、おまたせ。

 絵美、この手紙を読んでくれないか?

 みんなにも聞こえるように読み上げて欲しい。


 ただし、前世のボク、(りゅう)くんには、

  「内容を見せてもらえなかった。」

と、ウソをついてほしい。


 そうしないと、素直に手紙の通りに実行しないからね。」


絵美

「わかったわ。」



 絵美が、アリムが書いた手紙を読み上げた後で、感想を言い合っている・・・


絵美

「ありがとう。 アリムさん。

 真々美たちは、複雑な表情をしているわね。」


真々美

「軍備や戦闘服をもらえると助かるのだが、掛け声が恥ずかしすぎる。」


冬香

「たしかに、これはねえ。

 わたしも、カセイダードスーツ って、叫ぶ方がいいわ。」


オルア

「アリム?

 なにか、意味があるんだよね。」


アリム

「こういう設定の方が、前世のボクは喜んで作るからね。

 もしも、真面目でお堅い軍事兵器を依頼したら、昼寝して作ろうとしないはずだよ。」


絵美

「前世の本人が言っているのだから、その通りでしょうね。」


アリム

「ありがとう、絵美。


 それで、どうだろう?


 どうしても書き直して欲しい部分はありますか?」


絵美

「ヘタに書き直してもらって、わたしが(うら)で糸を引いているとバレたら、ややこしくなるわよね。」


アリム

「違和感を感じたら、(うたが)い続けると思う。」


絵美

「じゃあ、これで、行ってくれる?

 真々美、冬香さん、オルアさんも、あきらめてくれるよね。」


真々美

「絵美が幸せになれるなら、それでいい。」


冬香

「絵美様の幸せのためなら、恥ずかしい掛け声くらいします。」


オルア

()れたら、かっこいいと思えるわよ。 きっと。」


アリム

「ありがとう、みんな。」


 ボクは、みんなが見ている前で、手紙を折りたたんで封筒(ふうとう)に入れて、蜜蝋(みつろう)をした。

 封筒の上に、ろうそくを垂らして、指輪の刻印(こくいん)をする機会は二度とないだろうと思った。


 絵美は笑顔で手紙を受けとって、大事にしまってくれた。


 20日目(8月20日(日)) AM 11:50 昼前


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