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日常編 第4話 クラスの階級制度

 お昼休みと同時に訪れるお昼ご飯の時間(ランチタイム)

 仲間と机を並べて騒がしくお弁当を食べるリア充にとって、ご飯のお時間は楽しいものなのだろう。しかし俺にとっては苦痛と言える時間だ。もう知っている人もいるだろうが、俺はいわゆるボッチ。お昼ごはんをさっさと食べ、食後は午後の授業が始まるまでライトノベルを読むような人間だ。周りの目なんて気にならない――みたいに装っているが、こんな俺でもクラスの視線は少なからず気になる。時々感じる『アイツ、また教室で堂々と女の子が表紙の本読んでるよ……キモッ』という無言の視線には未だに慣れない。

 なぜ一般文芸は許されるのに、ライトノベルはキモイと言われるのか?


「……べつのいいけど」


 さて、本題だ。俺は孤独。そして伏見さんはリア充。

 冷静に考え……いや、考えなくても住む世界が違う。

 隣の席になったからと言って、一緒にご飯が食べられる訳ではないのだ。

 それはそれ、これはこれということである。


 この後の展開も大体予想がつく。伏見さんの友達が彼女の元まで来て『お昼ご飯食べよう』みたいな言葉を言ってくるのだろう。そして伏見さんは『いいわ』と返して席を立つ。グループのところまで移動して仲良し組でお昼を食べると思われる。


「ねぇねぇ理美ちゃ~ん! みんなでおっひる一緒にたべよ~!!」

 

 甲高い声が耳に届く。

 噂をすればなんとやら。上流階級の女が近づいてきた。

 目的は俺の隣の席に座っている伏見理美さんだろうな。

 ちなみに『上流階級』と言っているが、決して家がお金持ちとか、社会的に有名な家の御曹司とかではない。あくまでもこの学園もといこのクラスでの立場のことだ。

 楽しそうに学園生活を謳歌しているヤツら。通称リア充。

 もちろん上流階級の中にはリアルお嬢様のリアルお金持ちもいるだろうがな。

 2年3組にいる貝国寺かいこくじさんとかお嬢様だった気がする。


「みんなも机くっつけて待ってるよ! はやく理美ちゃんも行こうよ!」


 ちなみのこの女はこのクラスの上流階級女子のリーダー格的な存在。 

 名前はたしか、道端みちばた順子じゅんこだったような気がする。

 制服を着崩し、上履きのかかとを踏んでいた。

 染められた茶色い髪、長いネイル、軽そうな雰囲気。

 典型的なギャルだな。

 二次元ギャルは好きだけど、三次元は苦手かもしれない。


「……」


 そんなことを考えながら、俺は静かに教室を見回した。

 あっちもこっちも、ある程度グループができていた。

 廊下側の席に集うは勉強もスポーツも万能タイプ。

 伏見さんがまさにその、なんでもできる万能超人。


 黒板前に集うは理系の男女のグループ。

 一部の生徒からはギークと言う別称で呼ばれているが、その卓越した知識は優秀そのもの。運動は苦手だが、勉学の成績は良い。クラスでは中流階級と呼ばれている。

 教室の後ろの方で集まりながらお昼を食べているのが、文系の男女のグループである。全員本が大好きで、毎日のように一般文芸や芸術の話をしている。このクラスにおける立ち位置は理系と同じく中流階級と呼ばれている。


 そしてそのどれにも属さない生徒が下流階級と呼ばれている。

 クラスの笑い者・邪魔者・ジョーカー・変わり者・不適合者。

 俺も残念ながら、クラスに数人いる一匹狼の一人である。 

 一人でいることが大好きな変わり者だ。

 だって仕方ないだろ。一人は気楽なのだから。


 さて、今日は一人で何を食べようかな?

 たまには学食とかで食べるのも悪くない。

 カレーパンとか焼きそばパンとか、何にしようかな~。


 お昼ご飯のことを考えながら、俺は楽しそうに会話をする伏見さんと道端順子をチラッと見た。伏見さんも道端順子も楽しそうにはしゃいでやがる。ま、楽しそうなのは当たり前か、この二人は友達なのだから。一匹狼の俺には分からない感覚だ。


 友達同士の会話を邪魔したら悪い。

 お邪魔虫はさっさと退散しよう。


 学食へと向かうべく立ち上がろうとしたとき――


「……ん?」


 何かに制服を掴まれたことに気付いた。

 視線を下げると、それが伏見さんの手であることに気付く。

 彼女は道端順子の方へと顔と体を向けたまま、隣の席に座る俺の制服の裾を掴んでいた。その行動の意図は分からないが、なんとなく『立ち上がらないで』と言われているような気がした。

 なぜ立ち上がってはいけないのか?

 理由は分からないが、今は従うことにしよう。気になったとしても今はタイミング的に尋ねるわけにはいかない。わざわざ伏見さんと道端順子の会話に割って入って聞くのはダメだ。


 学食は後回し、立ち上がることを諦めて再び席に着いた。

 すると伏見さんは俺の裾から手を離しす。

 やはり推測通り『立つな』と言うことだったのだろうか?


「ごめんなさい道端みちばたさん。今日は先客がいるの」


「先客??」


「ええ」


「マ? 先客って、先にお昼の約束をした人ってこと?」


「そう」


 女子同士の会話に聞き耳を立てる気はなかったが、後ろで会話をされたら勝手に耳に入ってきてしまう。今の話。伏見さんは友達からのお昼の誘いに『ごめんなさい』と言ったのか?? 友達のお誘いを断るなんて、伏見さんにしては珍しい。


「今日はその人(・・・)をお誘いして、二人でお昼を食べる予定なの」


「理美ちゃんのご指名!? しかも二人っきりで!?」


「そうなるわね」


「かなしーいー! 今日は理美ちゃんと皆とお昼ごはん食べたかったのに~」


 道端さんは拗ねたように口をとがらせた。

 そんな彼女に対して伏見さんはニッコリとほほ笑む。

 しばし目を合わせる二人。やがて道端さんも微笑む。


「まっ、先客がいるなら仕方ないね~~~!」


「助かるわ。また今度、一緒に食べましょう」


「ほいさー」


 会話が終了した。

 終了したはずなのに、道端順子はなかなか立ち去らない。

 ニコニコと笑みを浮かべながら、伏見さんを見つめていた。

 どういう表情なのか知らないが、早くこの場から退散してほしい。

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